最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

ストレージの導入に「ちょっと待った」

Jon Oltsik

2003/07/09 10:00  

 IT業界の現状について述べるとしたら、これまでにないほどゆっくり進化している、というのが最も的確な表現だろう。

 性能やパッケージの面では、改良が相変わらず進んでいる。しかし、いまだ自らの大げさな売り込みに囚われてしまっているグリッドコンピューティングを除けば、サーバのアーキテクチャは現状から変化する様子がない。ネットワークについても同様で、システムの大規模化や高速化、低価格化、高性能化はあるかもしれないが、革命的な進歩の兆しは見えない。

 現在のストレージの技術革新の進み具合も、表面的には鈍く見える。しかしながら、ストレージ業界は今後3年の間に、新技術によって確立された秩序が覆され、企業のITストレージ戦略が徹底的に練り直されることになりそうだ。

 この新たな技術革新の背景には一体何があるのだろう。

 まず、マイクロプロセッサや特定用途向け集積回路(ASIC)、ハードディスク、インターフェースカードなどのハードが格安になり、そのおかげで企業は、どこでも買えるビール程度の予算で高級シャンパン並みのストレージ機器を構築できるようになる。そしてこの手のストレージ機器には、かつては企業のCIOが大金を払わなければ実現できなかったフェイルオーバーや負荷分散、データ複製といった高度な機能が含まれるだろう。

 またストレージ技術とネットワーク技術の一体化が進んでいることも、思わぬ恩恵を生んでいる。ファイバチャネルは今後数年で廃れ、標準的なイーサネットやインターネットプロトコル(IP)が主なストレージ転送プロトコルとなるだろう。そうなれば、特殊で高価なファイバチャネルシステムは一般的なイーサネットコンポーネントに市場を奪われ、ストレージのコストがさらに下がることになる。

 さらに、もともとイーサネットに精通していたIT従業員たちが、既存の専門知識を生かしつつストレージシステムの信頼性向上に貢献できるという利点もある。

 IPは遠隔ストレージの概念も変えるだろう。ストレージデータが共通のIP経由で送られることにより、バックアップやリモートミラーリング、コンテンツ配信などストレージアプリケーションに新たな可能性が広がっていく。チャネル拡張といった馬鹿げたニッチはもう終わりだ。一般的なバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)の時代がやってくる。

 この新たなストレージ業界の変革は、ネットワーク革新のおかげである。従来ストレージソフトウェアは、サーバかストレージサブシステムの末端に存在していた。こうしたモデルには拡張性がなく、高価でプロプライエタリなソリューションのため、ユーザーは長年メーカーが支配する収容所に閉じ込められたような恰好だった。

 しかし安価なプロセッサや機器の登場で、ストレージ機能がネットワークと融合し、データの保存や保護、配信に新たなオプションが生まれてくる。さらに、こうした機能的なネットワークにより、標準開発環境でストレージアプリケーションを扱えるようになる。メーカー独自のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)はJ2EEや.NetベースのWebサービスに置き換わり、ハイエンドなストレージアーキテクチャが一般的となるだろう。

大手ストレージメーカーの衝突

 新技術への移行には衝突がつきものだ。移行による損失が最も大きいEMCなどの業界大手は、市場の凍結に全力を注いでいる。こうした大手ストレージメーカーは相互運用性の標準採用に消極的で、顧客に恐れや不安、疑念を吹き込みつつ、支配力維持の最後の望みをかけて独自仕様の機器を販売しているのだ。

 結局のところ、こういった作戦はどれも成功しないだろう。ストレージメーカーは、これまで技術が移行する際にIT業界が学んだ教訓を踏まえるのが一番だ。たとえばIBMは、長年メインフレーム業界の王座に君臨し、UnisysやAmdahl、Hitachi Data Systems(HDS)、さらにはDigitalといった企業との競争にうまく勝ち抜いていた。しかしそのIBMでさえも、業界全体のトレンドとなったクライアント/サーバコンピューティングに打ち勝つことはできなかったのだ。同様にストレージ業界大手も、安価なネットワークベースのストレージ機器が市場を席巻していく勢いを止めることはできないのだから、自分が潰れる前に潮流に乗る方法を探したほうがよいだろう。

 企業のCIOはこのトレンドに注意を払い、2003年および2004年の短期的な計画に基づいたストレージの購入を戦略的に捉えるべきだ。簡単に言うと、ストレージ機器の購入は最小限にして、メーカーを値切り倒し続けるとよい。また同時に、長期的なストレージのニーズを優先させ、新たな製品やメーカー、そして新たな選択肢について学んでおくべきだろう。そして2005年はじめまでに、ストレージシステムの移行を開始しよう。

 どのメーカーが勝者となり、どのメーカーが敗者となるのか、現時点では判断が難しい。しかし、2006年までにストレージ業界の状況が劇的に変化する可能性は非常に高い。今後3年間で、まだほとんど無名の新興ストレージ企業が業界大手となり、今の大手メーカーが廃れていくことは確実だろう。

筆者略歴
Jon Oltsik
調査およびコンサルティングを行うHyper-Free Consulting社の設立者兼社長

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