Sumir Meghani
2003/05/21 10:01
米国レコード工業会(RIAA)は最近、大学のネットワークを通じてファイル交換サービスを利用していた学生4人を訴えた。これは、RIAAが音楽ファイル交換を食い止めるようとする姿勢を強めた結果だろう。
だが米国の大学生らは今回の事件で、デジタルメディアのコピーを作るという合法な行為に対してレコード会社が文句を言い出すのではないかと心配している。
大学生という顧客層は、無視できないグループだ。
RIAAの統計によると、音楽CDなどの購入者の3分の1は24歳以下の若者なのだという。この年代は、家族全体の購買動向にも影響を与えがちだ。現在学生である私の個人的な意見だが、大学生のうち80%はPtoPサービスを使って何らかの音楽やビデオファイルをダウンロードした経験があるのではないか。
こういった学生ダウンロード族は、大まかに3つのタイプに分けることができる。
まずは、新しいアーティストや音楽についての情報を友人から手に入れ、試しにMP3ファイルをダウンロードして実際に音楽を聞き、その後実際に購入するかどうかを決めるというタイプだ。
また別のタイプの学生は、自分では絶対に購入しないだろうという音楽のみをダウンロードする。ラジオで耳にするあの曲は好きだが、ほかにも多くの曲が収録されているCDを20ドルも出して購入する気にはなれない、という人たちだ。
そして残りのタイプは、CDを買ってもいいが、無料でダウンロードできてしまうから買わない、という学生たちだ。
PtoPでのダウンロード数が音楽CDの売上傾向と比べた場合膨大な数であるという事実を考えると、音楽業界は2つめのタイプの学生にアプローチすべきではないかと私は思う。それは、このタイプの人たちが通常ダウンロードしている曲を購入すれば、業界の売上は大幅にアップするからだ。
しかしレコード会社はそのように考えてはいないようである。レコード会社は、何千もの音楽を必死でダウンロードしてあらゆるフォーマットで違法に音楽を配信している悪ガキと、学生ダウンロード族との区別さえついていないのだ。実際にはほとんどの学生は、新曲を試しに聞いてみたり個人の楽しみとしてコピーを作るためだけにPtoPサービスを利用しているというのに。
レコード会社はPtoPサービスを法的にストップさせる権利があるのかもしれないが、もしそのようなことを行えばネット上でのデジタルメディアの普及は進まないだろうし、貪欲な企業が罪もない顧客の邪魔をしていると思われるのがおちだ。
このコラムを執筆するにあたって何人かの学生に話を聞いたのだが、音楽を購入する際、もっと簡単で手ごろな方法があればいいのに、と考えている学生が多いことに気がついた。彼らはもしそのような方法があればお金を払ってもいいと考えている。もちろん、自分の聞きたいアーティストや曲に対してのみだが。
最近あるレコード会社の幹部と話す機会があったのだが、そのとき私はレコード会社とPtoPサービスとの問題の本質を垣間見たような気がした。レコード会社は、10代の若者が音楽のダウンロードばかりしてCDを購入しなくなったことが大きな問題だと考えているわけではないようだ。それよりも彼らは、音楽の制作や配給において現在握っている主導権を奪われるのではないかと恐れている。レコード会社は、自分たちにとって満足のいくインターネット戦略が見つかるまで技術の進歩を邪魔し続けることだろう。
一部では、大学のキャンパス内でPtoPネットワークを禁止してはどうかという案もあがっている。しかしそれではPtoPを正当な理由で使用しているユーザーに迷惑がかかる。不法なコンテンツのダウンロードを防ぐため、大学寮で回線容量に制限を設け、サイズの大きな音楽やビデオなどのファイル交換ができないようにした大学も多い。幸か不幸か、それでもファイル交換サービスの利用者や利用量に大きな変化はないようだ。
大学側にネットワークのトラフィックを常時監視してもらい、著作権を侵害するファイルのやりとりが行われていないかチェックしてもらっても、それが問題解決につながるかどうかは疑問である。そのような監視をRIAAなどの組織に任せたとしても状況は変わらないだろう。
妥協点を探る
それにしても、なぜみんな妥協点を探ろうとしているのだろう。例えばソニーは、家電から音楽レーベルまで数多くのブランドを運営している。大学のキャンパス内で、ダウンロードしてきたMP3ファイルをソニーのDiscmanで聞いているという姿もありふれたものだ。ソニーは、新しい収益源を生み出し戦略を変えることで、最新の音楽技術を受け入れてきた。
ハイテク企業とメディア企業が手を取り合ってデジタルメディア普及のためのメカニズムを考えれば、価値のあるニッチ市場を狙えるのではないだろうか。Apple Computerがいい例だ。最近オープンしたばかりのiTune Music Storeがすでに成功しているではないか。同社は今年後半にも同様のサービスをWindowsユーザー向けに開始する予定だ。
エンターテインメント業界で音楽関連企業は重要な役割を果たしている。常に新しい才能を発掘し、育て、プロモーションするための人材にあふれている唯一の現場だからだ。それを思うと、著作権のある作品を無料で配布するべきだと声高く叫んでいる技術エバンジェリストらも、少し冷静になってみるべきだろう。
しかし、教育機関やPtoP関連会社と戦うには資金が必要だ。また、インターネットラジオやストリーミングビデオの人気が高まるなか、戦いに敗れた場合の代償が大きいということも覚えておかなくてはならない。レコード業界が独自のインターネット戦略における妥協点を見出せないのなら、先はもう見えている。PtoPはさらに発展し続けるだろうし、RIAAのような団体は今後も裁判で戦い続け、世間に与えるイメージも悪くなっていく。
レコード会社が新メディア業界においても生き残りを考えるのであれば、シリコンバレーと手を組み、双方が潤うための方法を探るべきである。でなければ、大学寮から聞こえてくる著作権法に触れる音楽のことなど取るに足らないという事態にもなりかねないのだ。
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