最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

第19回 創業後から事業の離陸まで

西川 潔

2003/08/07 09:56  

会社設立:株主構成プランは非常に重要だ

 前回まで、創業にまつわるノウハウを述べてきました。最初の1年は一生でもっとも仕事をする覚悟で、恐ろしく集中していくべきです。そして無我夢中で1年を終えたころ、ようやく顧客もある程度の数になり、事業立ち上げのめどが見えてくることでしょう。

 この連載では会社設立実務やその後の成長戦略などの詳細についてはふれませんが、会社設立およびその後の増資に際して最大のポイントである株主構成、資本政策について少しだけ述べましょう。資本政策はステップバイステップで前へ進んでいき、決して後戻りができないので、これだけは最初から正しい知識をいれておいてください。

株式は起業家の血である

 イエス・キリストは最後の晩餐のとき、弟子たちに、パンとワインを、「これは私の肉であり、これは私の血である」といいましたが、起業家にとってまさに株式は血であり肉でもある、もっとも大事なものです。なぜなら、株とはその企業の所有権そのものであり、商法に規定された経営権・意志決定権がそのシェアによって決まるからです。また、当然ですが儲かった際の分け前、つまり配当のシェアも出資シェアに比例します。

 会社設立には出資者を決めなければなりません。また、その後の増資を行う際にも出資者が増えます。最終的にどのような出資者構成になるのかは非常に重要です。

 創業時は会社の実績ゼロですから、まさに絵に書いた餅に投資してもらうわけで、あまりこちらから選べる立場にはないという考えももっともです。しかし、できるだけ自分以外の創業株主としては、事業の立ち上げにともに命をかけてくれると思える創業メンバー、仕事をくれる人、企業経営のアドバイスをくれる人、何かと世の中にコネクションをもっていて役に立ってくれる人、などを選びたいものです。

 間違っても、暴力団関係者などの怪しい筋の人々を株主にしてはなりません。人の紹介であっても自分が直接知らない人を株主にするのは原則やめるべきでしょう。たとえ一株でも万一そのような人を株主にすると、あとで法外な値段でその株の買取りをせねばならないはめに陥ります。くれぐれも気をつけましょう。

 その後の増資についても同じことです。増資については項を改めますが、何度かの増資をへて、いよいよIPO(株式公開)というとき、株主構成や株主の顔ぶれが思わぬ障害になることがありえます。成長企業を目指すなら、IPOを意識した株主構成の理想形にすこしでも近づけたいものです。このあたりは経験豊富な起業家、CFO経験者、未公開企業の成長・公開コンサルタントのアドバイスなどを求めるべきでしょう。

起業家自身のシェアをどうする?

 これは非常に難しい問題です。また、日米で発想のちがうところです。大きなビジネスをやるためには、到底個人マネーだけでは足りませんので、VCマネーを導入します。日本では、その導入後も起業家のシェアが下がらないよう、非常に多くのワラント権を出して、起業家に付与したりしていました。

 日本では一般的に創業起業家自身のシェアは、未公開時代はできるだけ高いにこしたことはないと考えられています。全部自己資金で創業できれば100%シェアです。また、国民金融公庫などでの借金でまかなえば、シェアの低下を防ぐことはできます。

 逆に米国では、起業家はお金をほとんど出さず、シェアはせいぜい25%程度取れれば上出来として、残りはVCが取ります。つまり、起業家は社長といえども絶対権限はなく、お山の大将になれません。逆にいえば、自分の好き放題にはできない。常にシェアを多くもつ投資家の意見や目を気にすることで経営していく。その緊張関係がいいのだ、とアメリカでは考えられています。私もどちらかというとこの考えに賛同します。

 いずれにせよ、ある程度本格的なビジネスをやろうとすると、自分で払える金額には限りがあります。そんなとき、エンジェルから借金させてもらい、それを使って株を買って半分以上のオーナー権を保持するというディールもありえます。つまり投資と融資の抱き合わせをお願いするのです。会社が成功したら借金を返済します。会社が失敗したら、一生かかってでも返済するのが筋ですが、エンジェルによっては担保もとらず、失敗しても返済を追及しない、というまさに天使のような人もたまにはいるようです。ただし、このようなケースは起業家がそのエンジェルからよほど見込まれたときに限られ、しかも再起して成功した暁にはやはり返すのが当然です。あくまで例外と考えてください。

(以下つづく)

「起業家というキャリア」は毎週木曜日の更新予定です。


筆者プロフィール
西川 潔
ネットエイジ 代表取締役社長
KDD、米国コンサルティング会社、AOLジャパン などを経て、98年2月、ネットエイジを草の根的に創業。 インターネットビジネスの企画・開発・運用を通じ、ビジネス インキュベーションおよび、投資業務を手がける。現在までに12のビジネスをおこし、M&Aで4社を売却。また、99年に 日本中を席巻したビットバレー構想の発案者でもあり、常に起業家主導経済の重要性を説く。東京大学教養学部卒

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