最終更新時刻:2008年9月8日(月) 15時58分

「総務省の情報通信政策の最近の動向」総務省・今川拓郎氏

澁川修一

2004/09/07 15:57  

ネットワークインフラの今後のあり方

--そうなると、特にこれから問題になるのは、大容量通信インフラ、即ちFTTHの普及をどこまで拡大していくかと言うことになると思いますが、FTTHの普及に関しては、次世代IPインフラ研究会の報告書が6月に出ましたよね。

(※参考資料3:「次世代IPインフラ研究会 第一次報告書」)

今川: はい。次世代IPインフラ研究会で取り上げた問題として、トラフィックの爆発が起こっていること、IXの東京一極集中などの構造的な問題とか、P2Pファイル交換への対応等がありました。その対応策として、ネットワークの有効利用に向けての中継系光ファイバの活用見直しや、光ネットワーク接続機器の開発等の策が出てきたわけです。これも、u-Japanの報告書には入ってくる課題だと思います。

 この次世代IPインフラ研究会のポイントという資料に簡単に論点がまとめてありますが、バックボーンの現状については、トラフィックの激増に対応するための設備投資や、トラフィックの制御をもうちょっと高度にする必要性、さらには東京への一極集中を改善するという課題があって、ネットワークの制御としては、光ルータやスイッチ、これは経済産業省とも一緒にやっているところですが、接続機器の技術開発を進めるとか、中継系の光ファイバの有効活用を含めた増強策も課題になっていますね。

--光ファイバについては、NTTの光ファイバへの投資が最近減少傾向にあるという話もあるようですが。

---
※注:以下にBフレッツの提供エリアの現状と将来の拡大予定を示す。 ここでは、今後の新規エリア拡大予定が公表されているが、東の場合、11月までにサービスインする市町村は8つ、西ではゼロである。
---

今川: ごく簡単に言えば、光ファイバによるネットワークは、ISPから通信事業者のビル・局舎等までの、いわゆる中継系と、その先の利用者のところまでの加入者系(幹線部分・配線部)という2段階に分かれているのですが、現在の所、中継系についてはほぼ光ファイバ化が終了したという段階で維持管理と高度化が今後の課題です。加入者系の幹線部分(ファイバが地中から電柱に出てくる所(「き線点」)までについても、現在の所全国の8割程度で整備が完了していて、これにはまだ投資が必要ではあります。確かに中継系については、かつてほどの投資はされていないことは確かですが、加入者系の光ファイバに対しての投資は引き続き堅調で、全体としては減少しているとは言えないと思います。中継系にしても、電力会社が新規にファイバを引く際等にはまた数字が跳ね上がりますし。ただし、投資額ではなく、敷設距離で見た場合には加入者系は距離がどうしても少な目になりますから数字としては少なくなるという事が考えられると思います。

--もし、光ファイバの投資が意図的に手控えられている事実があるならば、特に加入者系において、他の事業者への光ファイバの開放条件等に不満があるという事なんでしょうか。

今川: もしそういう事があるならば、競争政策上の問題ですので、そちらの方で対処することになるでしょう。また、加入者系については、光ファイバとDSLとの関係という判断が難しい問題もあります。ある人はもう光ファイバの時代だ、DSLは過渡期の技術だと言い、別の人は、いやいや、DSLもまだまだ技術が向上してきているから可能性はあるぞと言いますね。この両者の最適バランスについては、総務省としては従来から光ファイバの全国化を推進してきた経緯がありますから、光ファイバで行ければそれに越したことはないと言うのが基本的な立場ではあるのですが、最近では、技術的には中立であるべきではないかという立場に変化しつつあります。やはり技術の将来性を役人が見極める時代ではないですから。どちらかという事ではなくて市場競争の状況により判断するべきでしょう。正直、私もDSLと光ファイバのどちらが優れているのかについては分かりません。ただ、DSLの場合局舎からの距離が問題になると言う技術的特徴があります。ですから、究極的に過疎地域におけるデジタルデバイドのような課題を解決するには役不足ではあると思いますが、少なくとも都市部では有力なインターネット接続手段として競争力があるとは思います。ヤフーさんがあそこまで安いDSLサービスを提供したことに刺激されて、都市部では光ファイバもずいぶん安くなりましたしね。

--極論を言ってしまえば、私などは、過疎地へのデジタルデバイドの解消とか、地上波デジタル放送のアナアナ変換の費用負担等の問題があるのなら、いっそのこと加入者系は国策として光ファイバを各家庭に敷設してしまってはどうかと思うこともあるのですが、極論過ぎますかね。先ほど、ユニバーサル・サービス基金の話もありましたが。

今川: 最近そういう事を言う人が多くなっていて、政治家や学者の先生方に国が光ファイバを敷設してしまえば良いと主張する人もいますね。つまり、インフラは公団みたいなものを使って国策で整備して、おまけに通信料金をタダにしろ、と。しかし、国から地方へ、官から民へという現在の流れの中で、それに逆行するようなことは非常に難しいでしょう。

 ただ、そういうニーズがあるのは確かなので、情報通信インフラの整備に対する補助金等を増額してもらって、過疎地域におけるインフラ整備を抜本的に進めたいというのが、私たちの願いなんですけれどね。

 歴史的に見ると、NTTが民営化したときから、インフラ整備は民主導で、競争ベースでやりましょうという原則ができていて、今までずーっとそれでやってきたわけですが、先ほど申したように競争原理が働かないエリアに対してどのような手を打つかが政策的な注目を集めてきている一方で、国の補助金とか予算とかの壁がなかなか破れないという現状があります。もともと公共事業予算を潤沢に持っている国土交通省とかは、道路管理用の情報BOXの中にダークファイバを一杯持ってたりするので、そういう資産を有効活用するための連携も重要でしょう。

--ダークファイバについては民間事業者の保有するものについては、情報開示や開放ルールを含めてe-Japanの中できちんと整備されてきたと思うのですが、政府・自治体が保有しているダークファイバの活用・民間への開放についてはe-Japan重点計画2004にも盛り込まれました。具体的には今後、どのように進める方針なのでしょうか。

今川: 国土交通省の他にも、地方自治体がかなり光ファイバを敷設していたりします。そのような公共系のダークファイバ同士を連結して、活用しやすくするような施策を考えているところです。現在、中継系の光ファイバの芯線未利用率は6割にも上るという調査もあるので、新しく整備する部分と既存資産の活用の両輪の対策が必要になってきます。ただし、ダークファイバというのは基本的には中継系の幹線部分で、末端ではないんですよね。光ファイバを引くというのは今の時代、道路をほじくり返して敷設するわけですから、お金がかかります。ですから予算が少ない現状では難しいところもあります。末端ほどお金がかかる世界ですね。都市での光ファイバの普及は、競争がある分進んでいくとおもいますが、市場原理の外にある世界をどうするかですね。

 例えば、地方に行けば、通信事業者の中には、2〜300の世帯をまとめてくれれば、引きますよという対応を取るところもあります。その辺のコーディネートの支援と言う役割も期待されてくると考えています。

 また、そのような末端のインフラ整備については、無線の活用、無線LANの活用も大事になってくるでしょうね。例えば、京都のみあこネット等、事業の長期的な継続性にはまだ不透明な部分もありますが、もしそういう住民主導のインフラ整備のモデルが確立できれば、そういう主体との連携も政策的なテーマに上がってくると思います。

 無線LANの振興ということで言えば、周波数政策の世界では、「電波有効利用政策研究会」の答申で出したように、周波数を空けていくための給付金制度等のスキームを作って、積極的に無線LANや電子タグに割り当てていくという方針を打ち出しているんですけど、無線LANでも基地局の整備などのコストがかかるわけですから、それで全て解決、と言うことではないと思いますが。

 究極的には、昔、國領先生が、常時接続を低価格(定額・低額)で、という"Internet for All!"という運動を行っていましたが、そのような、固定料金でできるだけ安く、というインフラが整備できれば、理想だと思います。そのために、有線と無線、これには地上デジタル放送も入りますが、そのような組み合わせで整備政策を進めているところですね。

特集

「Chrome」が持つウェブ新興企業への可能性
グーグルの話題の高速ブラウザ「Chrome」はウェブ新興企業にとってどのような意味を持つのかを検証した。
グーグルが「Chrome」を作った理由--高速ブラウジングがもたらす利益
グーグルが新しいウェブブラウザ「Google Chrome」を発表したのは、高速化されたブラウザがグーグルにとって2つの面で利益をもたらすためだ。

オピニオン

■インタビュー

米国人アーティストが語る中国当局による拘束--チベット支援活動の結末米国人アーティストが語る中国当局による拘束--チベット支援活動の結末
米国人アーティストのJ・パウダリー氏は、オリンピック期間中、チベットを支援するメッセージをレーザー光線で映し出すことを計画していたが、中国警察に逮捕された。同氏が、その経緯と拘束中の様子を語った。
「検索市場の3強にならないと、ヤバイかな」--百度社長、井上氏「検索市場の3強にならないと、ヤバイかな」--百度社長、井上氏
元ヤフー検索事業部長の井上氏が日本トップになった百度、同氏の掲げる「検索市場の3強」という明確な目標に、どういった戦略でアプローチするのか。

■コラム

リコー、攻めの大型買収で世界市場へ活路リコー、攻めの大型買収で世界市場へ活路
複写機など事務機器の国内需要が飽和状態となる中で、精密機器大手各社は欧米を中心とした海外市場の開拓に活路を求めざるを得ない状況となっている。
モバイルSEOに有用なデータの収集方法モバイルSEOに有用なデータの収集方法
PCのSEOでは「site:」や「link:」といった特別構文を用いて施策を進めるが、モバイルではうまくいかないのが実情だ。そこで、1つの指標として用いることができるのが、Google「ウェブマスターツール」と、「Yahoo!サイトエクスプローラー」だ。
中国ケータイは理屈ぬきにオモシロイ!中国ケータイは理屈ぬきにオモシロイ!
「3度のメシより携帯電話」。24時間365日、海外ケータイのことばっかり考えている、香港在住の携帯電話研究家、山根康宏が、500台を超えるコレクションからとっておきの“トンデモケータイ”を紹介する。

企画特集

サーバ仮想化・グリーン化の利点を最大化!サーバ仮想化・グリーン化の利点を最大化!
多機能・高価値なNetAppストレージの秘密とは
KDDI「SaaSソリューション」KDDI「SaaSソリューション」
〜社内コミュニケーションの課題への解決策とは〜

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々ベトナムへ行ってきました
外資系エグゼクティブの日々
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

夢幻∞大のドリーミングメディア8/29-9/8のアクセス数分析
夢幻∞大のドリーミングメディア
ネットのニュース.logiPhoneとメルマガ
ネットのニュース.log
インターネットの裏側を探しましょホームページの制作費
インターネットの裏側を探しましょ
中小ソフトハウスが下請け脱却を目指す時に読むブロググリーンITって何?IT業界が作り出した流行マーケットに一言
中小ソフトハウスが下請け脱却を目指す時に読むブログ
オープンソースJoomla CMSJoomlaでバイリンガルサイト
オープンソースJoomla CMS
ベンチャー企業にとって最適なプロジェクト管理とは?あるITマネージャの挑戦
ベンチャー企業にとって最適なプロジェクト管理とは?
オープンソースCMS GeeklogがWEBの標準になる日Geeklog1.5でOpenID対応へ
オープンソースCMS GeeklogがWEBの標準になる日
電子政府パブリックコメントの抜粋経営者が無断ビデオ撮影するとき
電子政府パブリックコメントの抜粋

リサーチ

■リサーチコラム

ジェネレータコンテンツに関する調査--ジェネレータコンテンツはユーザーの興味喚起に効果的?
ジェネレータコンテンツの利用が企業やサービスのイメージにどのような影響をもたらしたかについて調査を実施したところ、提供企業の認知率はわずか11.1%にとどまることが分かった。
ジェネレータコンテンツに関する調査--キャンペーン成功のカギはクチコミと・・・
ジェネレータコンテンツに関する調査を実施したところ、利用経験率は31.6%でSoftBankユーザーにおける利用率が最も高く、auユーザーが最も低いことが分かった。認知経路は、「友人・知人からの紹介」ということも明らかになった。
クロスメディアに関する調査--30代が最も「指定検索キーワード広告」に接触
クロスメディアに関する調査を実施したところ、30代が最も「指定検索キーワード広告」に接触していることが分かった。また、世帯年収が高いユーザーほど、テレビCMの「指定検索キーワード広告」を閲覧していることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

Lucene のスコア計算
インターネットと英語

■調査発表

MMD研究所 SNSに関する利用動向調査
調査結果「トイレ掃除を毎日する人、6割が『置くだけタイプ』の洗浄剤利用」
人気の広告は何?オンライン広告.com、先週の人気オンライン広告ランキングを発表

イベント情報

ISO22000構築実践セミナー
主催:社団法人日本能率協会
ISO22000構築実践セミナー
主催:社団法人日本能率協会
事務改善基本コース
主催:社団法人日本能率協会

CNET Japan セレクション

フォトレポート:注目の「iPhone 3G」アプリトップ10
「iPhone 3G」発売から時間がたち、App Storeが充実してきた。ここでは、注目のアプリケーション10種を紹介する。
フォトレポート:コスプレーヤー、コミックの祭典に集合--Comic-Con 2008
Comic-Con 2008が7月にサンディエゴで開催された。このコミックの祭典とも言えるイベントで見つけたコスプレーヤーたちを画像で紹介する。
フォトレポート:絵で見る「Internet Explorer 8」ベータ2
マイクロソフトがこのほど、「Internet Explorer 8(IE8)」のベータ2をリリースした。このリリースにおける特長はユーザー志向の機能だ。
若者がモノを買わない理由--インターネット依存、低い上昇志向・・・
M1・F1総研が首都圏在住のM1、F1層の消費行動に関する調査レポート「若者がモノを買わない要因の考察と消費を促す方法論」を発表した。若者がモノを買わない要因として「低い上昇志向」、「インターネットへの依存」など5項目を挙げている。
フォトレポート:「グッドデザインエキスポ2008」で見つけた気になるモノ
8月22〜24日まで、東京有明の東京ビッグサイトにて行われた「グッドデザインエキスポ2008」。2008年度グッドデザイン賞の審査対象デザイン展示が一堂に介するほか、企業によるデザインの取り組み、デザイン専攻大学生の作品などが集結された。この会場で見つけた、かわいく、かっこよく、おもしろいデザインプロダクツを紹介する。
iPhone 3Gの陰で売れたもう1つのもの--iPod touchの販売動向を見る
話題のiPhone 3Gが7月11日に発売され、1カ月半が経過した。徐々に電車の中でiPhone 3Gらしきものを見かけるようになってた印象を受ける。しかし、それはもしかするとiPod touchかもしれない。

今日の見どころ

Google Chromeを支えるブレーンたち、ローンチイベントで集合

「Google Chrome」の機能をチェック--米CNET Newsの視点

新型PSPに搭載された機能を写真でチェック

レビュー

今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。