最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

「総務省の情報通信政策の最近の動向」総務省・今川拓郎氏

澁川修一

2004/09/07 15:57  

都市と地方の「ブロードバンド格差」という新たな課題

 それでは、ネットワーク政策の具体的に何を議論しているんだ、という点ですが、ユビキタスの中にいろいろな論点が入ってくると思いますが、まずはブロードバンドの一層の普及。これはDSLやFTTH、ケーブルインターネットを核として、さらに無線(Wireless-LAN、FWA)が入ってくることになると思いますが、これらの利用者の増加を図る施策ですね。それから、ブロードバンドを巡る課題としてデジタルデバイドといいますか、都市と地方との普及の格差が最近意識されるようになってきています。インターネットであれば、ほぼ全国どこでも使える状態が整備されていますが、ことブロードバンドになると、使えないところが結構地方には多いのです。

 今までは一部の都会だけがブロードバンドが使える状態でしたが、現在は地方都市でも整備が進んでいるので、「おらが町でブロードバンドが何故使えないんだ」という事を仰る政治家の先生方も多くなりました。近い将来、この問題が政治問題になる事もあるかもしれません。具体的に数字をあげれば、総務省で立ち上げている研究会に「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」というのがありますが、この中の資料(PDF)を見ていただきたいのですが、ブロードバンドといえば、通常はDSL、光ファイバ、ケーブルというのが代表的な手段で、基本的にこの3つで数字を出しているわけですが、今年の6月末の段階で1619万加入に達しています。e-Japanの当初の目標が高速インターネット接続に可能な環境が3000万世帯、超高速インターネットが1000万世帯でしたが、これらの目標は既に達成していて(今年1月段階で高速:5800万世帯、超高速:1800万世帯)今後は実加入数をさらに積み増そうという事ですね。ただし、e-Japanの評価専門調査会からは、あまりにも有線に偏りすぎていて、無線にもっとフォーカスしなさい、という提言があり、ユビキタスという点では無線も重要ですから、目標を上方修正しつつ、そこに無線を入れているところです。光ファイバは、現在150万加入といったところですかね。

 それで、数字だけ見ると順調に進んでいるように見えるのですが、細かく見ていくと、都市と地方との格差という点が結構如実に出ているんですね。例えばDSLの普及状況について、市町村別で見たデータがあるんですが、(上記資料7ページ)市では100%サービスされているんですが、町村部に行くと76.9%に落ち込みます。人口規模的に見ると人口が多いところほどサービスされている状況がもっと分かり易く出ています。また、過疎地域に限ったデータ(8ページ)では、町村部における普及状況が半分くらいに止まっていることが分かります。

 あと、この調査にはトリックがあって、当該市町村のどこか1カ所でもサービスエリアであれば、その市町村ではDSLがサービスされているとカウントしているのです。地方に行くと、市役所や役場の周りだけでしか、ブロードバンドが使えないという例が結構あるんですね。なので、この数字も過大評価なので、NTTの局舎別の提供状況(9ページ)を見てみると、さっき、市部では100%でしたけど、局舎で見ると一気に75%と4分の3になってしまいます。町村部の場合は、77%だったのが49%と半数を割ってしまう状況です。(過疎地域のデータはもっと厳しい:10ページ)しかも、これもその局舎で1件でもサービスしていると、その局舎はサービスしているというカウント方法なので、利用者についての正確なデータというわけではないのですが、それでも市町村サービスエリアのカウントよりはかなり精度が上がっていると思います。

 いずれにせよ、DSL一つ取ってもこういう状況ですが、光ファイバ(FTTH)の提供状況(12ページ)では明確な差が出ています。先ほどのDSLと同じサービスエリアからみた市町村別の状況を見ると、市では75%が提供されている一方で、町村部に行くと14.9%とガクンと落ち込んでいます。これを過疎地域に限ると市でも23%、町村部では2.1%と更に悲惨な状況です。私も今、集合住宅に住んでいて、光ファイバを使っていますが、一旦光ファイバを使い出すと元には戻れないですから、これが都市から地方への移住を妨げ、地方との格差を広げる一つの理由になってくるかも知れません。

 一方で、ケーブルテレビの普及率はどうかというと(16ページ)、ケーブルテレビ局がそもそもないと、サービスされないと言う点があるのでそこは他と比較が難しいのですが、市でいうと、6割程度、町村部は2割程度がサービスされている状況で、ここでも人口が多いところの方がサービスされている、というパータンが繰り返されています。もっとも、ケーブルテレビは首長の意向で「おらが町はテレビを絶対にやるぞ」ということで、人口が少ないところでもサービスをしている場合もありますが、統計で出してみると差は明らかになっていて、過疎地のデータ(17ページ)市が15%で町村部が8%程度ですか、もう全然サービスされてないですね。このように、ブロードバンドにおけるデジタルデバイドという問題意識はかなり強くなってきています。

 ただし、このような状況を改善するために国が何ができるかというと、総務省の情報通信インフラの予算は補助金支援の枠組みも用意してるんですが、合計で100億円くらいしかないんですね。一方で市町村からの支援要請はたくさん来るようになっていて、我々も危機感を強めているところです。ご存じのように、三位一体の改革ということで、補助金は削減するのが基本方向ですから、この手の予算が増えることはあまり見込めません。その対応策はいろいろ考えていますが、まったくの私案ということで申し上げれば、一般歳出(48兆円)の予算の半分以上を占める社会保障費(20兆円)と文教費(6兆円)、この辺から1%以下でも良いので、総務省の情報通信インフラの予算に回して欲しいのですが、現実には公共投資の予算を1%変動させるだけでも大騒動になる状況ですから、難しいですね。

 例えば、米国では、ユニバーサル・サービス基金という枠組みがあって、売上高に応じて通信事業者が資金を拠出し、過疎地域における通信インフラの整備費にその基金から補助が出るという仕組みがあります。この補助の対象として、学校・図書館を対象にした遠隔教育や医療機関を対象にした遠隔医療用の特別割引が1998年から導入されました。ネットワークを活用すれば、トラベルコスト、病院や学校に通うコストが節約できるわけですから、社会保障費や文教費から予算を支出するという枠組みはできない話ではないと思います。このように、社会保障費や文教費を活用して、過疎地における通信費を援助する制度を導入できないか、と個人的に妄想しています(笑)。現在の補助金のような仕組みが限界を迎えつつある中では、このような基金制度も検討されて然るべきではないかと思います。

(※参考資料2:「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」)

 以上のような問題が、u-Japanにおけるネットワーク政策分野における主な課題というところでして、先ほどの3つの「u」を使って政策を分類してみると、以下のようになります。

ユビキタス ブロードバンドの推進、都市と地方のデジタル・デバイドの解消、電波の開放、IPインフラの高度化(光ルータ等)、情報家電、電子タグ、地上デジタル放送
ユニバーサル バリアフリー、ユニバーサル・デザイン、多言語対応、音声入力
ユーザ・オリエンティッド 利用者のニーズを精査して政策に反映させる

 このような内容を盛り込みつつ、12月の取りまとめに向けてu-Japanの議論を進めているという状況です。

特集

「ソーシャルメディアキャンペーン」の半数は失敗--アナリストが指摘する理由
多くの企業がソーシャルメディアキャンペーンを計画している。しかし、ガートナーによると、キャンペーンを始める理由が明確になっていなければ、失敗に終わることになるという。
人工知能による会話マーケティングの可能性
日産NOTEのウェブサイトがおもしろい。人工知能を用いて、ユーザーの質問にCMでおなじみのキャラが反応してくれる。裏側で実現しているのは、PtoPAが開発したソフトウェア「CAIWA」だ。同社はこれをウェブマーケティング分野でも活用しようとしている。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能
近年のウェブサイトリニューアルプロジェクトでは「ユーザビリティテスト」を実施することが当たり前になってきたようです。今回は、単なる「使いやすさ調査」を超えた「ユーザー行動観察調査」の効果・効能を紹介します。
“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」
香港や中国のケータイショップでは、「おぉっ!こりゃかなりいける!」とワクワクしてしまう怪しいトンデモケータイに出会うことがある。そんな魅力あふれる製品の1つが、今回ご紹介するケータイである。
ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念
日経平均が約4年10カ月ぶりに1万円の大台を割り込む中、ソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。

企画特集

ネットと家電をつなぐチャレンジ「Life-X」
第一題:ライフログ・シェアリングサービス「Life-X」の第一印象は?
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第2回】メーカー/占いのコンテンツを作ってみた!

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

今どきのメッセージ論日経平均株価の落ち着く先は…(2)
今どきのメッセージ論
箱田雅彦・ネットとメディアのききかじりにゃふにゃふ動画
箱田雅彦・ネットとメディアのききかじり
インフラコンサルティングの最前線コンサル業界進化論〜悪評の原因を考える〜
インフラコンサルティングの最前線
WebClip - ウェブのニュースと Second Life (セカンドライフ)琴線に触れた発言集 - エンジニアの未来サミット
WebClip - ウェブのニュースと Second Life (セカンドライフ)
夢幻∞大のドリーミングメディア騒がれないと不安になる人たち
夢幻∞大のドリーミングメディア

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

金融不安の市場に、IR活動は何を頼るか!?
CMS未導入企業300社へのアンケート 担当者のホンネを徹底追求

■調査発表

【ゲームクリエイターの方へ】攻めの開発体制を敷くAQインタラクティブ社の中途採用・求人情報をレポート
Alibaba JAPAN、カー用品店に関する調査 カー用品専門店の認知、利用ともトップは「オートバックス」
調査結果「携帯OS『Android』認知度調査、6割が『知らない』 〜ユーザー期待のメーカーは?」

イベント情報

Microsoft Windows SharePoint Services 3.0によるチームサイトの構築
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft .NET入門
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft SQL Server 2005 インフラストラクチャの設計(#4612)
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

自動車の未来を垣間見る--2008年パリモーターショーのコンセプトカー

2008年度グッドデザイン賞が発表--環境を意識した新基準も

GMのハイブリッドカー「Chevrolet Volt」、パリモーターショーに登場

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。