文:Adrien Lamothe
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006/05/02 19:54
個々の機能を比べれば、ApertureはPhotoshopと直接競合する製品ではない。しかし、AdobeはAppleの方向性を慎重に見守る必要があるだろう。Macworld Expoで、Adobeは「Lightroom」と呼ばれるプログラムのベータ版を発表した。これはAppleのApertureとほぼ同じものだ。AdobeがLightroomをベータ版の段階で発表したのは、Apertureに対抗し、その動きを牽制するためだったのだろうか。AppleがMacにバンドルしている新しいソフトウェアの中には、Macユーザーがこれまでサードパーティ製品でまかなっていた機能を提供するものもある。
Appleの新しいソフトウェア戦略は、独立系ソフトウェアデベロッパーに新たなリスク対策の導入を検討させることになるかもしれない。もちろん、最良のリスク対策はより高性能な競合製品、たとえばCellシステム向けのソフトウェアを開発することだ。Cellは、新興企業がAdobeなどの既存のプレーヤーに挑戦し、グラフィックソフトウェア市場に食い込む機会も提供している。ソフトウェアデベロッパーがLinux版を用意しないなら、IBMはAppleのRosettaのようなエミュレータを開発し、Mac OS XやWindows向けのソフトウェアをLinuxシステムで動かせるようにしてもよい。Cellは処理速度が非常に速いので、エミュレーションモードでも、ソフトウェアはそれなりの速度で動作する可能性がある。
Linuxコミュニティには、すでに「Wine」と呼ばれるWindowsエミュレータがある(Wineは「Windows Emulator」または「Wine Is Not an Emulator」の頭文字を取ったもの。どちらを取るかは個人の見解による)。Wineはまだ開発段階にあり、サービス化は当分先だろう。しかし初期の徴候は、多くの企業がCellの採用、または少なくとも、このプラットフォームの調査に取りかかっていることを示している。ソニーによれば、Cellプロセッサ用のソフトウェア開発キットはすでに400組配布されたという。
Appleは最近、アプリケーションソフトウェアの自給率を高める一方で、直営店への投資を拡大している。現在、Appleの直営店は130店舗を数える。その多くは東京の銀座やサンフランシスコのユニオンスクエアといった一等地にある。このアプローチはAppleのコントロール(と潜在利益)を高める一方で、大きな間接費を生み出している。市場の飽和はリスクだ。Apple製品への需要が飽和すれば、Appleは販売インフラの維持に苦労することになるだろう。現在の直営店戦略が機能するためには、売り上げを一定の水準に保つ必要がある。Appleの販売店はこれまで、多様なサードパーティ製品を販売することで、Apple製品の売り上げが低迷していた時期をしのいできた。販売店は自由裁量で新しいサードパーティ製品を扱うこともできた。Appleの新しい直営店は、既存の販売店に影響を及ぼしている。古くからの販売店の中には、閉店を余儀なくされたところもある。Appleを相手取って、集団代表訴訟を起こした店もある。
Appleにとって、この1年は厳しい年になりそうだが、新たな難題も浮上している。Walt DisneyがPixar Animation Studiosの買収に合意した結果、Steve JobsがDisneyの最大の株主となり、同社の取締役に就任したのだ。Jobsはこれまで、AppleとPixarの経営をうまく両立してきた。しかしDisneyでの仕事が忙しくなれば、Appleでの仕事に身が入らなくなる恐れがある。Jobsは非常にイメージを重視する人物であり、多くの人がJobsをビジネスアイコンと見なしている。これまでとは桁違いに大きな舞台に引き出されたJobsは、新しい仕事で手一杯となってしまうかもしれない。これはAppleの成功に影を落とす可能性がある。もちろん、Disneyとの関係には利点もある。Disneyのコンテンツを供給できることはそのひとつだ。共同ブランディングの機会もある。
大量のレンダリング作業を必要とするアニメーションスタジオでは、Cellが大いに活躍する可能性があったことは皮肉といえるだろう。
Appleの現状を要約すれば、次のようになる。まず、Appleはこれ以上、運転費用を削減できないところまで来たようだ。大規模な販売インフラからは、継続的な固定費が生じている。新しいハードウェアアーキテクチャは当初考えられていたほど強力なものではなく、新しいプラットフォームへの移行は、既存の顧客やソフトウェアパートナーとの間に多少の緊張を生み出す可能性が高い。Appleはデジタルメディア市場での主導権を維持するために、iPodの価格を下げることを余儀なくされたが、今後も価格は見直していく必要があるだろう。また、今後はソニーなど、Cellベースのシステムが手強いライバルとして登場する可能性もある。
すでにAppleの見通しに注目している人々もいる。たとえば、Bear Stearnsの金融アナリストAndrew Neffは昨年12月、Apple株の格付けを「買い」から「中立」に引き下げた。

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