たぶん、マイクロソフトは必要以上にシェアを失うことを恐れている。全世界のコンピュータは膨大な数にのぼるし、「次の50億人」までがもしもターゲットにあるのだとしたら、成長の余地はいくらでもある。だから、OSのシェアを減少させながらでもいくらでも成長を続けられるはずだ。だいいち、現状の9割以上の独占状態がそう簡単に揺らぐとも思えない。私はLinuxのシェア拡大を願っているし信じているが、それにしても当面はこの数年でWindowsの1割のシェアがとれたら上等だと思っている。それほどまでにデファクトスタンダードの力は強い。雑音など気にせず、自社のモデルで最善と思う製品を作りつづけていたら、たぶん大崩れはない。
けれど、ここのところ、どうも怪しい動きが続いている。「マイクロソフト、OLPC「XO」ノート用に「Windows XP」の新版を提供へ」という記事は、別のサイトの記事によれば「XOでXPを試験中で、ひょっとしたら来春にこのタイプに向けたバージョンをリリースするかもしれない」という程度なのかもしれないのだが、それにしても、「XPの販売を近々打ちきる」としてきたマイクロソフト社自身の方針とずいぶん矛盾する話だ。もちろんこの矛盾は今に始まったことではなく、以前にビル・ゲイツが発展途上国の教育セクター向けにXPを3ドルで販売すると宣言したときからのものである。一般向けの販売はやめるが、廉価販売は続けるということなのだろうか。そしてOLPC向けのXPも、この廉価販売の枠組みにはいるということなのだろうか。
この低スペックノートPC向けのXPリリースの話は、もちろん、Linux搭載のノート型が注目を浴びていることへの緊急対応であることは間違いないだろう。それも、実際にはOLPCのXOが引き金ではないと思う。確かにOLPCはペルー政府から26万台の受注を確保し、個人購入と合わせて30万台以上の販売が決まっており、生産ラインも百万台単位で対応できるようになっている。けれど、それ以上に伏兵として現れたEee PCの方が実績からいっても見込みからいっても大きいはずだ。何しろEee PCは、オーストラリアの市場に登場した途端に、一瞬で完売してしまったという実力だ。これらの廉価版PCを放置しておけば、Windowsのシェアは確実に崩れていく。
だから、XPの再投入は、シェアを維持するための緊急の動きだと見るのが妥当だろう。また、VistaのSP1からは海賊版対策の認証のシステムが一部緩められるそうだが、どうもこれも、シェア維持のためではないかという気がする。なにしろ、Windowsが全世界的に圧倒的なシェアを拡大した背景には、海賊版の存在は無視できない。公式には認めたくなくても、マイクロソフトだってその辺の事情はよく知っている。中国では、廉価版のPCはOSなしやフリーのDOSの搭載で販売されることが多いが、その大部分にはLinuxではなく海賊版のWindowsがインストールされるそうだ(実際、Eee PCの発売以前から、中国では神舟が4万円程度のノートパソコンを販売してきているが、これも実質的にOSなし)。海賊版対策の強化はWindowsのシェアを下げる。実際、ここのところ、Ubuntu関係のブログでも中国語のものが増えてきているような気がする。Vistaのあおりだとしたら、マイクロソフトにとっては笑い事ではない。
しかし、XPの再投入が、状況を救うだろうか。これは大きな疑問である。
去年の夏あたりだったように思うのだが、マイクロソフトは、レガシーPC向けに軽量版のXPをリリースしている。これは明らかに、Linuxを意識したものだと思う。レガシーなマシンは、Linuxの得意とするところだが、「Windowsだって負けてはいない」と対抗心を燃やしたのだろう。けれど、評判は散々だった。基本的には機能を削って軽くしてあるだけなので、いろいろと機能的な不備がある。それを追加インストールで補っていくと、最終的には単なるXPになるという仕組みだったらしい。もちろん、そうなればレガシーPCを活用することなどできない。
今回の低スペック用バージョンのXPにしても、結局は同じようなことが起こるのではないか。インストールしたときは軽くて「お、WindowsのほうがLinuxよりもいいかも」と思わせてくれるかもしれない。けれど、使い込もうとすれば、結局は普通のXPに逆戻りということになるのではないだろうか。
もちろん、マイクロソフトが気合を入れて、XPをベースにより軽量で機能の高いOSを開発しないとも限らない。しかし、その場合、Vistaの立つ瀬がなくなるではないか。いったいマイクロソフトのロードマップはどうなるのだろう。
このところのマイクロソフトは、雑音に振り回されているような気がする。「重い」という評価をされれば「カーネルだけならこれだけ軽いですよ」というデモンストレーションを行う。けれど、それが実際にその軽さを生かした製品に結実するのかといえば、そうではない。Vistaの先もよく見えないままに推移している。
私は個人的にWindowsが好きではないが、自分が使いたくないだけで、別にそれが売れていることまでを問題視するつもりはない。問題なのはシェアが異常に高いことだが、7割を切るぐらいの穏当なシェアでトップを走ってくれる分には別に構わない。それだけのシェアを握っていても揺るぎもしない大企業。だから、ここはVista路線に賭けて「ウチのカラーはこうです」とはっきり開き直ればいいだろうにと思う。けれど、Linuxが低スペックで売れ始めたら、慌てて低スペックに対応しようとする。Linuxが無償なら、ほとんど無償に近い3ドルならどうだ、不自由を忍んでくれるなら海賊版も大目に見ますよとくる。Linuxがいくら伸びてもWindowsの売上にはほとんど影響しないと思うのに、そこで意地になるのは、やはりシェアを失うのが怖いのだろうか。
確かに、マイクロソフトのビジネスは、OSの圧倒的なシェアを基盤に成功してきた部分が大きい。だからそれに拘りたいのかもしれないが、過去のことは過去のこととして、王者らしい方向性をはっきりさせるべきではないだろうか。さもないと、このままどんどん凡ミスばかり積み重ねて、シェアばかりでなく売上まで失ってしまうのではないだろうか。
もっとも、それも時代の流れかもしれない。本当の意味でのマイクロソフトのロードマップは、OS販売事業衰退後を見据えたものでなければならないはずだから。 だから現状のOSを巡る多少の混乱など、実際は本質的ではないのかもしれない。
追記: CNETの記事「OLPC用「Windows XP」開発は前途多難--MS幹部が明らかに」を見ると、ちょっと上記の私の解釈は的を外していたようだ。少なくとも現場レベルでは、「シェアを失うのを怖れて」といったような意識ではなさそうだ。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
Windows Vistaは、Windows Meと同じ道を辿るのではないかという仮説
Sho on 2008/01/25
どうも。確かに本体の完成度においては、red.green.blue さんのおっしゃるように比べようもありません。問題はかるさんの言われるように、Vistaがこのままではメインストリームからは離れる可能性があるのではないかということです。最近関連会社でアクセスするOSの種別を調査したところ、VistaはXP,2000に次いで第三位でしかありませんでした。XPを逆転する頃までもなく、次のOSが出ることでしょう。Meと比較するのはそのあたりの問題ですね。
BigBang on 2007/12/12
↓進んでいる道は違うでしょう、時代も技術も当時とは違いますから。
だけど、辿る道(ハズレOSと評価される)が同じになるといっているのでは?
>>かつてのユーザーの新規OSへの「ワクワク感」「期待感」のようなものが失われているように思える。
この一言で、もしかして、日本に限って言えば、パソコンを「パーソナル」に使っている人が少ないのではないか…と思えた。
本文中の事例でも「仕事をするうえでの支障」を気にしてバージョンアップしていないようなので、「ビジネスで使うツール」(ビジコン?)に落ち着いているのではないでしょうか?
XPが出た頃まではPC普及の拡大期で、皆、個人使用も見据えていたけど、普及しきって「当たり前」になった今は、単なるツールに落ち着いてしまった…のでしょうか?
かる on 2007/12/11
・Meの場合
OS自身が、システムリソースの多くを占有し、
ブルー画面やフリーズが多発的に発生し不安定。
1年あまりで不安定さが大幅に改善されたOSがでた。
・Vistaの場合
システムリソースの制限は無くメモリは安い。
ブルー画面やフリーズはほとんど起こらず、
次のOSまで3年ある。(3年というのはMe以外の
発売サイクルと比べて特に短いわけではない)
この事実から見ても、明らかに、Meとは
別の道を歩んでいるとしか思えないのですが?
red.green.blue on 2007/12/11
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軽いOS作ればいいのにね.
せっかく技術が進歩してるのにOS重くなるから,結局体感できる恩恵が薄い.
要らない機能たくさんつけて重くするから評判悪くなる.
ビジネス用に軽さを究極まで求めたWindowsと,
個人やPC初心者用にもっさりしてももボリュームたっぷりのWindowsの2種類つくったらどうなんだろう.
完全に開発陣は別にして.