最終更新時刻:2009年7月11日(土) 10時00分
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「もう一つの選択肢」ではLinuxは売れない

公開日時:
2007/12/01 11:50
著者:
まつもと

デスクトップLinuxに関する今年の十大ニュースを選ぶとしたら、まずそのトップバッターとして候補にあげられるのはDellのUbuntuプリインストールマシンの発売だろう。火種がくすぶりつづけていたUbuntu人気の炎を一気に燃え上がらせたのはDellの動きだった。ウェブサイトに寄せられた13万件ものリクエストをDellは無視しなかった。このプロセスが、Ubuntuへの注目をいやが上にも集めたのだった。

では、実際にUbuntuマシンはどのくらい売れたのだろうか。これまでDellは、「満足すべき成果である」というような抽象的なコメント以上のものを発表してこなかった。今でもそうだ。だから、実際に何台売れたのかはまったくわからない。それでもどこからかこういう数字は流れるもので、「DellのUbuntuマシン販売数は4万台だ」という報道があった。あくまで非公式な噂であるが、「ああ、その程度かもしれないな」と納得できるような感触もある。

一方のEee PCは、発売から1ヶ月でおそらくそれ以上の台数を売り尽くしている。 年内の販売数でいえば、はるかにDellの成績を越えるだろう。生産さえ順調に進めば、一桁上の数字をいくのは確実。この違いはどこから出ているのか。

OSの違いでないことは明らかだ。UbuntuとEee PC採用のXandrosはどちらもDebian系だし、後者がEee PCのハードウェアに合わせて調整されているという点を除けば大きな違いはない。用途によってはむしろ同じEee PC上でもUbuntuの方が使いやすい場合もあるようで、あちこちにEee PCでUbuntuを利用する記事がある(たとえばこちらとかこちらとかこちら)。Ubuntuを採用したことでDellの売上が伸びなかったというわけではない。

また、ハードウェアそのもののせいでもない。Eee  PCのような爆発力はなくても、Dellのパソコンは売れている。昨年急下降したDellの業績は、ここのところかなりの反発を見せていると伝えられている。何といっても世界第2位のパソコンメーカーなのだ。競争力は強い。Ubuntu版は売れなくても、Windows版なら十分に売れていることだろう。

ハードウェアとOSの相性の問題でもない。確かにEee PCではXandrosをかなり改変しているようだが、Dellにしても専用のライブCDやドライバをリリースしている。プリインストールマシンである以上、そのあたりは十分に気をつかっている。

結局、大きく違うのは、製品の提示のしかたではないだろうか。Dellの場合、Linuxは、「Windows以外にLinuxという選択肢もありますよ」という形での提供だ。Ubuntuは「もう一つの選択肢」である。もちろんこの選択肢にはそれなりのメリットもある。目に見えるところでは価格だし、本質的にはセキュリティやユーザビリティなど数多くの長所がある。しかし、2つのものを並べて「さあ、どっちにしますか?」という売り方では、どうやら人はLinuxを選択しない。

Eee PCの場合は、最初から製品の特徴としてLinuxの採用が含まれている。消費者は、「OSを選ぶ」という感覚をもたない。もちろん、今後Windows版が発売されれば実質的にはDellと同じになるのだが、その場合でも「OSはLinuxを選びますか、それともWindowsですか?」という形ではなく、「Linux版のEeeですか、それともWindows版のEeeですか?」という形になるだろう。2種類のEee PCは、ハードウェア構成も異なってくる。OSを選ぶというよりは、製品全体として選ぶという格好になる。

Linuxプリインストールマシンの売り方としては、どうやら後者が正しいようだ。同じハードウェアを提示して、「さて、OSはいかがしましょう?」とやったのでは、売れない。最初から「はい、この製品はLinuxで動くものですよ」として売るべきらしい。

マーケティングの理論上、これはどのように解釈されるのだろうか。私にはわからないが、事実はそういうことになっているらしい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

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コネクト広瀬さま、コメントありがとうございます。
なるほど、ですね。おもしろい解釈です。もちろん世の中にはドリルの収集家や鉄道マニアもいるわけで、「PCやテクノロジーの世界ではどうも穴よりもドリルを売りたがる傾向が強い」というのは、やっぱりパソコンそのものに魅せられてしまうマニア心理をおっしゃっているのかと思います。
で、Eee PCは、そういったハードウェア愛好者の心も掴んでいるようなんですね。このあたりが、さらに面白いところです。もちろん、サービスの方に関心があるユーザーが主流ではあるのですけれど。

  まつもと on 2007/12/02

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>マーケティングの理論上、これはどのように解釈されるのだろうか。

1960年代にセオドア・レビットは「マーケティングの革新」のなかで「お客が欲しいのは3/4インチのドリルじゃなくて、3/4インチの穴だ。」「鉄道会社が提供しているのは移動そのものであって"鉄道に乗ること"じゃない」と言ってます。

PCやテクノロジーの世界ではどうも穴よりもドリルを売りたがる傾向が強いのですが、Eee PCでは「穴」を売っていると感じています。「安くて便利なPC」という穴ですね。逆にDellではUbuntuを「ドリル」、つまり便益を構成する道具/機能として構成していて、その領域ではWindowsの方が優秀な「機能」なんでしょう。

じゃぁDellの提供している便益って? と考えた方がマーケティング的には楽しいかも。

  コネクト広瀬 on 2007/12/02

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