最終更新時刻:2009年7月6日(月) 7時30分
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Eee PCの引き起こす地殻変動?

公開日時:
2007/11/21 20:18
著者:
まつもと

すっかりEee PCウォッチになってしまったこのブログだが、興味は尽きない。実際、検索をかけてみると早速外国から取り寄せてすっかりはまってしまっている人もいるようだ。こちらのブログには、Eee PC関係だけでエントリーが既に33件。しかもいずれも濃い内容だ。Windowsでも結構使えているようなのは意外だったが、やはり百聞は一見にしかずなのだろう。台湾在住のこの方は使い倒し過ぎてついに故障してしまったようだが、それでも相当な惚れ込みよう。実はこれ以外にもモニタの故障など、初期不良に関するブログエントリーは外国にも見られるけれど、だからといって「安物だ」というような否定的な意見につながっていないのが面白い。むしろ、「思ったよりも高級感がある」というようなコメントが目立つ。

昨日にはAsusのShih社長のインタビューもこちらに掲載されていたが、 やはりAsusは基本的には高級ノートパソコンをブランドイメージとして推し進めていくつもりらしい。低価格のEee PCはブランドイメージを傷つけないのか? それに対して、これは全く別種の製品だから影響はないというのが答え。それに、決して「安かろう悪かろう」には仕上げていない。「キュート」「スタイリッシュ」というようなコメントは、安物イメージからは出てこないだろう。

とまあ、前振りが長くなったが、このAsusの社長のインタビューを読んでいて、「これはEee PCの影響はさらに大きいかもしれないぞ」と思うようになった。なにしろ来年末までの380万台の予想を上方修正しようかというような口ぶりだし、2010年には世界のノート型パソコンの20%のシェアを占めたいというようなことまで言っている。それが冗談にも思えないのは、たとえばロシアから既に100万台の引き合いがあるというような噂とか、大口の政府系の引き合いが何件もあるというような話もあるからだ。「低価格・低性能・そこそこ使える」タイプのモバイルPCというのはこれまでになかったニッチだから、そこをEee PCが急速に埋めていくことは十分に考えられる。そしてそのニッチは、ニッチと言いながら決して小さくはない。

さて、Eee PCが数百万台売れるということになると、まず最初の影響は、これはLinuxの進歩に直接寄与するのではないかということだ。それも、日本語環境への対応がLinux全体で改善していくのではないだろうか。

私自身はそうは感じていないのだが、日本でのデスクトップLinux普及を阻んでいる要因の一つとして日本語環境の不十分さ・不安定さがあげられることがある。 たとえば、Ubuntuでは今回のアップグレード直後、日本語入力プログラムとのコンフリクトでFirefoxが落ちるというバグが数多く報告された。環境によっては、日本語入力プログラムを支えるSCIMというプログラムが不安定になることもあるようだ。さらに、ちょっとマイナーなアプリケーションでは日本語入力を全く受け付けなかったりもする。入力まわりだけでなく、日本語への翻訳もときどき不完全だし、文字の表示の扱いがおかしく、文字が間延びしてしまうアプリケーションもある。フォントに関しては近年改善したが、やはりかつては弱い領域だった。

システムそのものの完成度の高さと、日本語環境の完成度は、確かにアンバランスな部分もある。その原因の一つは、そもそも日本語環境の改善にリソースを提供しようというような企業があまりないからではないだろうか(全くないわけではない。過去の資産をオープンソース化することで寄与した企業もいくつかあったはず)。どういうことかといえば、Linuxを使っていていろいろなアプリケーションのクレジットを見ていると、 Red HatやNovellなど、企業が提供して開発されたプログラムが多いのに驚かされる。こういった企業はLinuxで商売をしているのだから開発に力を入れるのは当然だが(そしてその成果を公開してくれるのはありがたいことだが)、その関心範囲はもちろん自分たちのビジネスに関係のあるところに集中するだろう。Linuxの基本的な部分が驚くほど完成度が高いのは、ボランティアの開発者に加えてこういったプロの開発者が仕事として関わっているからでもあるのだろう。

ところが、日本語環境は、ビジネスにほとんど関係がない。日本でもLinuxでビジネスをしている企業はあるが、基本的にはサーバー関係の商売。そして、サーバーを扱うのに日本語はさして重要ではない。だから、企業が日本語環境の改善に改めて大きなリソースを注ぎ込もうというようなことが起こりにくいのではないか。これが、日本語環境の完成度がシステム全体の完成度に比較して低いとされる所以ではないか。

ところが、Eee PCが日本で発売されるということになれば(私は発売されると信じているのだが)、日本語環境の完成度は、製品の売れ行きに直接関係してくる。いや、実は多くのLinuxの日本語入力を支えているSCIMは、日本語だけでなく、アジア圏のほとんどの言語の入力メソッドでもある。ここにバグがあってはEee PCは大きな市場を失うことになる。そこで、Asusは(あるいは提携しているXandrosは)このあたりのバグフィックスに相当なリソースを注ぎ込んでくるのではないだろうか。つまり、日本語環境がビジネスに関係するようなステークホルダーが現れてくるのではないかということだ。

まあ、このあたりはいつもながらの憶測に過ぎない。私のように現状の日本語環境にそれほど不満を覚えないユーザーもいるのだから、Eee PCも現状のLinux一般の日本語環境にあまり手を加えないでリリースされるかもしれない。しかし、それにしても、ユーザーが増えるということは、オープンソースにおいては開発への推進力が大きくなることと考えてもいいのではないだろうか。

憶測ついでにもうひとつ、Eee PCが与える影響を考えておこう。それは、「低価格・低性能・そこそこ使える」タイプの市場への他メーカーの参入だ。もしもこの市場が、Asusが予想するように数千万台規模以上の大きなものなのだとしたら、それをみすみすAsusに全部もっていかせることはないと考えるのが当然だろう。Eee PCが快調に滑り出したら、それが数百万台も売れるよりも以前に、追随するメーカーが現れるはずだ。

これは全く根拠のない話なのだが、 たとえばソニーはこういった製品ラインに興味を示さないだろうか。もともとソニーはちょっと毛色の違った製品を得意とする。さらに、PS3で大量に生産しているCellは、Appleが見放したPowerPCの流れを汲むプロセッサで、やたらと高性能であるといわれている割にはパソコンには使用されていない。その理由のひとつはWindowsが走らないからなのだろうが、Linuxなら走る。どのみちVistaとは相性の悪い「低価格・低性能・そこそこ使える」タイプのモバイルPCなら、PS3で培った技術を一気に投入してLinuxマシンにすればいいのではなかろうか。ひょっとしたら、「低価格・高性能・ずいぶん使える」これまでになかったニッチがまた広がるかもしれない。まあ、本来モバイル向きの部品ではないだろうけれど。

Eee PCの人気がどこまで本当か、それがどこまで続くのか、日本ではどう受け止められるのか、実際にはまだまだわからない。けれど、その影響の可能性を考えるだけでここまで楽しくなってくる。こういうのは久しぶりではないだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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