UbuntuをはじめとするデスクトップLinuxには、「(比較的)低スペックでもそれなりに無理なく動く」 という特徴がある。私自身、時代遅れのiBookでUbuntuを使い始めて虜になったという経緯があるから、これは重要な特徴であるとは思ってきた。けれど、古いマシンをケチ臭く使い倒そうという人々がパソコンユーザーの主流とは思えない。中古パソコンは結構重要な地位を占めるとはいえ、全パソコンの流通量の1割程度にしか過ぎないとも聞く。時代が移るとともに多くのユーザーがハイスペックのパソコンへと自然に移行していくのだから、この「低スペックでも十分」という特徴は、あまり強調すべきではないのかなと思ってきた。Linuxの長所としてあげられるもののうちで「無料」や「低スペックでも動く」は、実は本質的な強みではないと感じてきたのだ。けれど、どうやらこれは私の思い違いであったようだと、ようやく気がついた。
まずは、前振り。
少し旧聞に属する情報なのだが、いったいLinuxとWindowsはどちらが多くの電力を消費するのかということを比較したレポートが10月半ばに公表された。10月時点でこれをネタに取り上げなかったのは、数字としてはUbuntuの方がXPに比べて分が悪いということもあったのだが、実質的にはほとんど差がないので、ハードウェアに無知な私には分析のしようがなかったからでもある。XP、Vista、Fedora、Ubuntuの消費電力を実測したところ、最も成績がよかったのはXPで最も悪かったのはUbuntu。ただし、その差は最大で1割程度だから、条件を変えれば変わる程度の数字のような気もする。消費電力の差は常駐アプリケーションの多寡にもよるのではないかという分析だから、特に、数ヶ月使い込んだ後のWindowとLinuxでは、たぶんまた別な結果が出るだろう。
おまけに、Ubuntuでも、バージョンによって消費電力が違うということが、同じサイトのレポートでその数日前に報じられている。これが意外だったのは、電力消費を抑えるtickless採用の7.10が意外に電力を食っていたこと。総合的には6.06あたりが省エネ性能が最も高いようなので、このあたりとXPならほとんど差はないのかもしれない。あるいは、どちらのテストも7.10は公式リリース直前のRCを用いていたことが関係しているのかもしれない。
いずれにせよ、あまり劇的な違いはOSによってないのだなあというのが、この記事を読んだ時点での私の印象だった。 だから、いろいろ考えたけれど、結局は何も書くことができなかった。タイトルさえ思いつけなかった。
さて、そうこうするうちに、Xandros Linuxを搭載したEee PCのリリースやgOS搭載のgPCの発売。Eee PCはディスプレイが小さいこともあって一般のノートパソコンよりは消費電力が小さいし、gPCはViaプロセッサー搭載で省エネルギーを謳い文句にしている。これらは、別にLinuxだから消費電力が小さいわけではない。消費電力の小さいハードウェア(Eee PCの場合はディスプレイをはじめとする機器全般、gPCの場合はプロセッサ)の採用によるものである。だから、「まあ、それはそれで結構なことだね」と、そういった特徴にはあまり注目しないでいた。
しかし、今朝方、たまたま同時に目にした2つのブログを見て、ちょっと考えが変わった。
ひとつは、VerjuさんのVerju Interactiveで、これは間もなくこちらのブログにコメントも頂いた。その記述によると、ハイスペックなCPUを採用したマシンは消費電力は高いが、Webで使うだけならそんなハイスペックなものは要らない。だったら、Webにはロースペックなマシンを用意したらどうだろうかというものだ。そして、ロースペックなマシンでWindowsを走らせるのは無理があるので、Linuxを使えばいいだろうということ。だいぶと要約がいい加減なので、正確には元記事をご覧頂いた方がいいと思うが、そういう趣旨だと私は受け取った。
もうひとつは、ungon77さんのうんごんのパソコン日記。こちらは、記事としてはiPod touchのレビューなのだが、引用すると、
まじめな話をすれば、touchに使ってるCPUってARMの遅い奴でしょう(インテルに切り替えるんじゃないか情報が飛び交ってるけどね)。低消費電力だけど非力。(中略)端末に負荷のかかる作業はさせないでね。それはサーバー側でやって。そうすれば、端末の価格は下げられるし(だってアップルなのにたった368だよ!!)、非力なCPUでいいからバッテリーも小さくていい。それ以外も小型化、低価格化ができる。それだよね。あれはネット端末の未来の具現化なんだよ!
ということ。
つまり、末端個人ユーザーのパソコンに対するニーズは二分化してきている。ハイスペックなCPUを必要とするタスクと、それほどのスペックを必要としないWeb関係のタスク。そして、それぞれのニーズに対する最適解というものは、当然ながら大きく異なっている。ところが、Windows、特にVistaは、前者に対する最適解を出すことに夢中になっているように思える。大は小を兼ねるから、確かに強力なパソコンで強力なOSなら、もちろんWebを見るにも使えるはずだろう。しかし、現実にはハイスペックなマシンは価格が高く、消費エネルギーも大きい。消費エネルギーの大きさは、ハードウェア全体の設計から自由度を奪うだろう。「大は小を兼ねる」かもしれないが、同時に「牛刀をもって鶏を裂く」ばかばかしさは確かに存在する。
ならば、この二分したニーズに同時に応えようというのではなく、低スペックでも十分なWeb周りにだけ特化すればどうか。Eee PCやiPod touchは、そういった解を提供しているのではないだろうか。そして、その際に採用されるOSは、ハイスペックを前提としたVistaではあり得ない。モバイル用に特化したOSになるのか、それともデザインの方向性によっては低スペックのPCでも十分動くLinuxの出番となる(たとえばEee PCのXandros)。
そう、「低スペックでも十分に動く」というLinuxの特徴は、時代の流れを高速処理・大容量の方向ばかりと見ていたのでは強みにならない。けれど、もう一方に処理速度や容量よりも可動性や省エネルギーに視点を置いた進化、ユーザーのニーズとしてはWeb端末としての使い方の方向に流れがあるのだとしたら、これは相当な強みになる。
ひょっとしたら、それが現在起こりつつあることなのかもしれない。そんなふうに考えながら記事を書いていたら、似たような方向性のことをblog@browncat.orgさんの方で書いてあるのを見つけた。ニュアンスはだいぶ違うのだけれど、モバイル系のニーズが独立したことであるのを伺わせるような内容と受け取った。
CPUの処理速度やメモリ搭載量、ディスク容量なんかの数字は小さいけれど、十分に使えるWeb端末的なパソコンの世界。そこについてこれるのは、やっぱりLinuxだろうと、私は思う。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
まつもと on 2007/11/12
私も「ロースペックPC+軽快なOS」の実用性がもっと注目されることを願っています。
そして、ホビー=Windows、クリエイティブ=Mac、ビジネス&教育=Linuxといった具合に棲み分けが進むのがいいのではないかと。今のところビジネス分野は無条件にWinだったりしますが、実用的なWebサービスが充実してくれば、むしろ余計なものをいっさい搭載しない安価で軽快な環境の方が断然相応しいと思いますので。
ただ、個人的にはLinuxには清貧のイメージがあり、商業的にはどうかなと感じますので、例のGoogleのAndroidがPCをカバーするようになれば面白い展開があるかな、と。またもや「Microsoft VS Google」というネタで楽しめそうですし。
PowerYOGA on 2007/11/12
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PowerYOGAさん、コメントありがとうございます。PCとモバイルの狭間のあたりは、まるでどうなるのか予断がつきません。このエントリーではPC側からのアプローチとしてデスクトップLinuxに着目しましたが、モバイル側からのアプローチの方が強力かもしれません。そういう意味では、Google OSとしてのAndroidは面白いことになるかもしれません。ただ、AndroidもLinuxではあるわけなんですが。