かねて噂されていたGoogleの携帯事業への進出は、噂されていたようなgPhoneではなかったが、Androidの発表で事実になった。ある意味で、これはやはり噂されていたgOS(Everex搭載のgreen OSではなく、google OSという意味)の計画の一部でもあるのかもしれない。PC用のOSをリリースするのではなく、まずはモバイル用のOSからというわけだ。そして、そのベースは大方の推測どおりLinuxということ。
で、Googleの今回の動きとは無関係といえば無関係なのだが、このニュースを聞いて、私は改めてCanonical社のビジネスモデルについて考えてみた。Canonicalは、このブログで中心話題として取り上げてきているディストリビューションUbuntuを支えている企業である。上場すらしていない新興企業だが、自分の愛用するOSのスポンサーであるから、やはり行方は気になる。
「考えてみた」といっても、もちろん憶測の域を出るものではない。Canonicalのトップであるシャトルワース氏はなかなかのやり手だから、私などの思いもつかないようなことを考えているだろう。それを含めて、私の推測では、実はCanonicalの収益モデルにはまだまだ当事者にも見えないところが多いのではないだろうか。シャトルワース氏は、けっこう動物的な勘で動いているような気がしてならない。
ひとつはっきりしているのは、Ubuntuが一気に名をあげたデスクトップLinuxの領域では大きなビジネスはないだろうということ。個人ユーザーの有償サポートでさほどの利益があがるとはとても思えない。それでもCanonicalがデスクトップ領域に力を入れるのは、ひとつにはそこにまだ見えない間接的な事業の可能性があると踏んでいるからではないかと思うし、もうちょっと直接的なところでは、こちらはある程度の収益が見込めるサーバー事業に食い込んでいく足がかりをそこでつくり出すことができるからだろう。
「見えない間接的な事業」が私などに予測できれば苦労はないのだが、ひとつのOSにまつわるビジネス総売上のなかにOSの販売額が占めるのはごく一部でしかないだろう。たとえば世界中で数千万台のパソコンがUbuntuで動くようになれば、その周辺には必ず大きなビジネスが生まれる。そういったビジネスの創造と、その中でリーダー的地位を占めることをシャトルワース氏は考えているのではないかと思う。しかし、具体的にはさっぱりわからない。私にとって大きな謎。
もうひとつのサーバー事業では、Canonicalは着実に前進しているようだ。日本ではUbuntuをサーバーのOSに採用するメリットは今のところあまりないようだが、海外では急速に既存のディストリビューションに割り込みつつあるらしい。これはたぶん、そこそこに安定性のある事業だろう。シャトルワース氏の最大の目的ではないかもしれないが、ひとつの重要な局面であることは間違いないと思う。
もうひとつ、おそらく比較的手っ取り早い収益事業として、Canonicalはモバイル分野への進出を考えているのではないだろうか。この6月に台北で開かれたComputexで、CanonicalはモバイルUbuntuの10月リリースをアナウンスした。10月が過ぎてもリリースされたという報道は聞かないのだが、 インテルの最新規格に適合するといわれるこのモバイルOSは、Canonicalのビジネスの支柱と期待されているのではないかと私は思う。
しかし、このモバイルUbuntuは、GoogleのAndroidと正面からぶつかってしまうのではないだろうか。LinuxベースのモバイルOSは既に各種普及していて、Ubuntuはそこに割り込もうとしているに過ぎない。一方のGoogleは、もっと野心的であるように思える。技術的な優位を押し出すことで、LinuxベースのモバイルOSのAndroidへの移行を促したいのではないだろうか。(もちろん既存のLinuxベースOS関係者はそんな流れを否定しているらしいが)もしもそういう方向に持っていこうというのであれば、Ubuntuの割り込む余地はなくなってくるだろう。
ここで奇妙なことは、GoogleがUbuntuの世界最大のユーザーであるといわれていることだ。Googleの社内ではUbuntuにGoogleの開発キットを追加したデスクトップ環境が標準とされていると聞く。PC用のgOSが噂されていた当初も、それは「Gubuntu」になるのではないかという推測さえあったほどだ。オープンソースの一大支援企業であるGoogleは、思想的にもCanonicalと近いし、心情的にCanonicalを応援する部分も大きいのではないだろうか。 しかし、全く異なったビジネスモデルをもったこの2つの企業が、モバイルOSという局面でぶつかってしまった。そんなふうに私には思えてしまう。
もちろん、私のような観衆の知らないところ、気づかないところで、もっと大きなドラマが動いているのだろう。野次馬としても、UbuntuとGoogleからは目が離せない。そして、実際には私は野次馬以上でもある。なぜなら、私の仕事は現在、全面的にUbuntuとGoogleの存在に依存してしまっているからだ。Ubuntuで動くパソコンで、Googleを使って仕入れた情報で仕事を進めているわけだから。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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