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ニコニコとMySpaceと歌和サクラ

2008/06/29 23:18
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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前々回の「漫画誌休刊と漫画家の行方」のある意味続き。ただしちょっと角度を変えて。タイトルは部屋とワイシャツと私に特にかけてはいない(が、なんとなく思い出してしまう)。
 
しかし、前回がグローバルテックと新興国成長の関係だったので、自分で言うのもなんだか節操が無い。とそれはさておき本題。
 
歌和サクラとニコニコ
 
タイトル見ただけで「ああ、あれね」という方はネットの新し物好きの界隈の方は分かるかと思うので、この下しばらくは斜め読みして頂いて構わない。誰?という話である。
 
一言で書くと、ニコニコで最近話題の素人(これは本職として稼いでいるのではないという意味で素人)歌い手さんである。話題になるということで、つまりは上手い。
 
このところ、ニコニコ動画で、一般素人による「これは上手い」「プロじゃないの?」というコメントのつく作品のアップが増えている。”歌ってみた””弾いてみた”とのカテゴリーで括られる、一連の作品群はコンピレーションベストのような形で「ランティス組曲 feat.Nico Nico Artists」としてランティスCD化されたなどの動きも記憶にまだ新しい。
(余談だが、著作権問題がネックになりがちなこの手の素人作品に対し、著作権を持ってる会社=ランティスがこうして応えたというのはひとつの事例として面白い。問題解決のいちアプローチだろう)
 
という流れの中のひとりが歌和サクラとなる。
 
言うまでもなく、ニコニコはテストベッドであり、一種のオーディションとフィードバックの機能を提供していることになる。
 
 
メジャーデビューという声とMySpace
 
こういう、少し頭抜けたくらいの人が出てくると決まって出てくるのが「メジャーデビューしたら?」という声である。ライブハウスや路上での活動からプロになっていく流れがあったように、確かに一部はプロとして活動していくという経路を辿っていくだろう。
 
しかし、漫画誌の行方でも触れたように、方向感としては業界はやや縮小傾向を示している。社団法人日本レコード協会で音楽ソフト(オーディオ/音楽ビデオ合計)の金額ベースデータをざざっと見ると、

 07年 391,113
 06年 408,408
 05年 422,210
 04年 431,269
 03年 456,179
 (単位百万円)

と、明らかに金額ベースで落ちている。つまり、状況としては、

  • アーティスト一人当たりの売り上げが減る
  • 引退が増えない限りデビューは厳しくなる

という傾向になる。サブシナリオとして、人数増えて平均稼ぎが減るという流れももちろんあるが、やりづらくなるという意味においては変わらないので割愛する。この方向でのシナリオを考えてみたいからはそれぞれに是非。
 
というところを受けると、既存の仕組みに入っていくよりも、新しい仕組みの中で続けていく方法はないものか、という問いを立てたくなる。そこでひとつ補助線で出てくるのがMySpaceである。ここもいわゆるSNSのシェア競争云々という議論から、本来の持ち味(のはず)のアーティストに強いという特徴が日本でも良く出るようになってきた。
 
 
プロモーションツールとしてのMySpace
 
ここもMySpaceとは基本的に何かというのを押さえている方は前半斜め読みで構わない。本論は後半となる。
 
あるかな、と思って検索してみると、案の定歌和サクラのページがあった。そして、ファンがついている様子が下のフレンドネットワークのコメントからも窺える。このうち、ニコニコから流れてきたのはどれくらいだろうか?
 
自己紹介を見てみると

  • 歌はもちろん作曲や作詞、アレンジや打ち込み等も基本的に全部一人で作ります。
  • 両親や姉も音楽をしており、いわゆる音楽一家に生まれました。家では邦洋問わず様々な音楽が自然と溢れていました。
  • 家庭環境含む全てが私の音楽に影響を与えてくれたのだと思います。

ということで、しばしばいるタイプだが、自前度が高い。このレベルであれば第三者の手伝いを基本借りずに(ギターは若干手伝ってもらってるそうだが)作れるとのことである。ちなみに、ニコニコだと例の馬のかぶりものの彼とかが自前度の高さでは目立っている。
 
プロでも自前でやってしまう人は少なくなく、高校で一瞬同じバンドだった岡本仁志(GARNET CROW)など、宅録派の人は珍しくない。
 
となると、外部スタッフを雇って楽曲の出来を上げていくという方向に行かないのならひとまずざっくりの直販回収モデルと自前のプロモーション機能があれば良い。プロモーションがニコニコとMySpaceでいけるとするのなら、あとは何がしかの販売決済のモデルがあれば良い。これはいまのところはっきりとしたパターンがあるようには見られないが、携帯からPCから流通経路はあちこちにあるため、必要とされればいずれ解かれるだろう。

もしかすると、この手の自分で出来てしまうというパターンの人だと、ソロ活動くらいならMySpaceだけあれば出来るようになってきつつあるのかもしれない(全員に当てはまるかはまだ微妙だが)。

 
 
音楽を続けていくこと、表現を続けていくこと
 
さて、ここで、これからも作っていきたい人とこれからも聞いていたい人の関係が長期的に維持されるには?という問いかけに進みたい。要件としては

  • 作り手が様々な意味で続けられる
  • 聞き手に届けられる環境が整っている

の二つとなる。業界がどうなっていくかという話は一旦忘れる、あるいは、この方向性の先に出てくる業界像とは何か?と別アプローチで考え直してみたい。
 
歌和サクラのケースだと、作って届けて喜んでもらうという下地は出来ている。ばんばん売ってばんばんヒットさせたいとかいうのでなければとりあえず一旦ひとつ形になっている。
 
となると、あとはストレートに食べていくにはどうすればという問いになる。漫画家と漫画雑誌は作品発表の場をどうするかという話に割と近い話だが(同人とデジタルコミックの話は一旦忘れる)、音楽の方がインディーズとメジャーの境目が昔からあいまいだったことなども含め、発表の場が消え去るという危機感はそう感じられない。むしろ、発表の場とバリエーション、機会が増えたという反応の方をよく聞くように思える。
 
方向感のひとつはまず本業にしてしまうというところ。これは、更に二つに分かれて、1)既存の仕組みでプロになってデビューする、2)既存の仕組みそのものではないが本業とする、というものに分かれる。前者は厳しくなっているとして、後者の可能性を検討するが、その前に、本業にしないというところ。これは社会人でも、セミプロというか上手いアマチュアという人はたくさんいるが、この中に新しく加わることになる。
 
という訳で、半歩戻って2)。なのだが、直感的にこれは音楽のみというよりは何か副業状態みたいなものの方が可能性として面白いのではないかという気がしている。先行モデルとなるのは社会人スポーツ。彼らは半分職場勤め、半分が準プロとして活動している。
 
社会人スポーツとの違いとなるだろうことは、PR機能やある意味の社会貢献として企業側から特別枠のような形での在籍になるケースではない、個人の側からみたらビジネスポートフォリオのような構図が作りやすいところではないだろうか。フルタイム正社員で仕事がっちりというのではなく、派遣に近い形で音楽活動の余力を残しておくこと、逆に音楽側に全てを賭けないことで長期的にじっくりと活動をする体制とペースを作っていくこと。課題となるだろうことは、音楽家としての腕と技術をどういう形で維持していくか。
 
デビューしてプロになるぞというのが夢物語なのか、本稿で提示したモデルこそがむしろ夢物語と言うべきなのか、いずれかは分からない。なのであるが、後者についてはそろそろ主たる可能性パターンとして真面目に考えても良さそうに思える。昨今一部で議論の進んでいる専業ライター限界論にしても、そういえば書き物本業でもないのに数冊の出版に関わった自分自身の経緯からしても、この界隈にはまだ試してみるべきことがたくさんあるように思える。

少なくとも、音楽活動を続け、アーティストとファンが作品を通じてやりとりするというだけなら結構なところまで環境が整ったと言ってよい。オーケストラといった維持費のかかる大編成ものなど相性の悪いものがあるがそこはそこでもしかすると何か解き方があるかもしれない。オンラインの特徴を生かしての分業となると各パートばらばらの居住地でというのは理屈上いえるが、バンドサウンドくらいならともかく、さすがにオケでは難しいところか。

そして、もし仮にこのような動きが大きくなっていくとするのなら、いわゆる音楽業界と言われているものはどういう形と役割と顔ぶれになっていくのか。準対抗シナリオくらいの扱いで少し考えてみたい。もちろん、隣の出版業界も、もしかしたらメディア一般もあまり他人事ではないかもしれない故に。
 

 
ちなみに、一言だけ触れておくと、ちゃんとした意味でプロと呼ばれる人たちは本当に上手い。そして、それ即ちSalesと連動するかと言われると必ずしもそうではない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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