最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

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プロマネ進化論

公開日時:
2008/04/24 14:58
著者:
渡辺聡

このところいわゆるベタなプロマネ業務に結構関わっている。この前ヘルプしたのが技術系のリサーチと要件定義のところで、チームメンバーが全体で20人弱、外のステークホルダーを加えるとやや遠いところまで含めると50人前後というもの。
 
いま調整に差し掛かっているものが体制図に入ってくる関係者で30人から場合によってはもうちょっと、予算規模だと億を超えるくらいのものとなる。世の中これより大きいものも小さいものもいずれもあるが、5桁に入ってくると決して小さいものではなく、片手間でほいほいという訳にも行かない。大きくても小さくてもプロジェクトはプロジェクト。正座モードである。
 
というところで、プロジェクト設計と下道整理を地道に進めているところなため、この辺の話を少し書きたい。
 
 
プロジェクトマネジメントの理解のされ方
 
書店なりに行ってプロジェクトマネジメント銘打たれた書籍を覗くと、まずは「どうやって進めるか」といった視点の記述のものが出てくる。

  • プロジェクト目標を確認する
  • タスクを洗い出す
  • メンバーに割り振る
  • 進捗管理をしてリスクに対応していく

といった構成になる。
 
これはこれで始まったらこのような形になる。また、作業現場は実際はこのように進む。
 
この次の段階で、現場作業のトラブルシューティングの巧拙という話が出てくる。ステージ2である。
 
トラブルというのは放っておくとたいてい余計なところに広がる。元々期日を規定して動いているプロジェクトというスキームで手戻りや無駄な動きはそれだけで嫌なものだが、加わって士気が下がったりというマイナスの二次効果によって、成果への道は更に遠くなる。
 
ステージ1が現物取引なら、ステージ2はショートヘッジを組み合わせた世界だろうか。攻めと守りのツールバリエーションが広がるとマネジメントスタイルは変わる。
 
このあたりまでは割と一般にも語られているが、ここから先は徐々に話として出にくくなっていく。理由は一部が実も蓋も無い話だからでもある。
 
 
プロジェクトの事前設計
 
意外と語られていないところとして、始まった瞬間に成否が概ね定めらているプロジェクトというのは少なくない。
 
つまり、上記のように、目標を確認して粛々とがんばって進めることではサブ変数をいじれるのみで、大勢には影響しないというパターンになる。
 
このような事態はどう生まれるかとなると、通常は、目標、リソース(予算)、スケジュールの整合性が初めから取れているかいないかがスタートとなる。開発系のプロジェクトやウェブ制作といったところでは、ときどきこの成立条件を破壊して「とりあえずがんばればいいんだ」と精神論に陥っているケースは珍しくない。また会社の経営レベルでも同じような状況に差し掛かっているのもまた珍しくない。太平洋戦争時の日本軍の歴史を紐解く気分である。
 
この始まってしまうともはやどうしようもないというのをどう回避するかというのは、要すれば事前設計になるのだが、発注要件を含めたプロジェクト計画で集中管理するスタイルを良く取っている。
 
腕の良いセールス担当の方や部課長クラスで評価の高い方は、先回りしてこの手の調整をかけていることが珍しくない。傍目から見ていて物事が始まった際には半分終わってるパターンである。
  
これは、PMBOKなどの体系でも要素分解がされているが、要すれば

  • やることを実現可能な範囲に収めていること
  • 必要なリソースと期間、体制を事前認識し、調達できていること
  • リスクファクターを発生時の押さえ方が概ね把握されていること
  • プロジェクト実施による期待効果が把握されていうこと
  • オーナーから関係者含めてステークホルダーで認識調整されていること
  • 何かあった際の調整方法が定義されている

というところを矛盾無く揃えて押さえておくところになる。加えるなら、ここま揃えた上で、様子を見ながら追加的な成果を上げられるようなアップサイドシナリオの作りこみだろうか。
 
と、書くと簡単なのだが、世の中この条件がかっちり揃っていることは通常ない。どこかに行き違いや無理矛盾がある段階で話が立ち上がるのが通常となる。
 
あっちとこっちの条件が揃ってないのを、どこをどう調整すると実現性のある形に持っていけるか、この調整作業がプロマネの仕事の開始であり肝の設計となる(そして、ここで苦労されている方は多数いらっしゃるものと思われる。同じ身分の方、めげずに頑張りましょう)。
 
感覚で言うと、先物やオプションの世界に近い。先々の動きと構図を想定して、どっちに振れても大丈夫なように仕掛けを先に打っておく作業になる。
 
究極的な言い方として、良いプロジェクトとは、一丸となって現場が四苦八苦して無理難題を通しきって最後は涙涙というものではない、可能なアップサイドは適度取り込みつつ、変な波風無く最後まで順当に泳ぎきったものが成功といえる。発生してからのトラブルシュートが頻発しているようでは事前設計が足りないか、トラブル発生前の察知と回避が遅いかと言われても仕方が無いかもしれない。
 
 
先回りオプション
 
また、現場経験を積んでいる方か、オプション市場を眺めている方だとよく伝わることと思うが、何かが起こってからの対応はコストがかかる。まず、対応し始めてから効果が出るまでのリードタイムで追加ロスが出ること、転換修正するところは純粋に追加コストでありロスになること。そして何より、同じ手を打つにしても、物事が動いてからの方が一般にコストは高い。発生前、あるいは発生直前に頭を押さえるのが一番無駄が無い。
 
オプション市場でいうなら、これはIV(インプライド・ボラティリティ)の世界と同値となる。危ない雰囲気を察するとオプションプレミアムは上がる。となるとヘッジにかけるコストはプレミアム増加分だけ上がる。しかも、しばしばここは指数関数的に跳ね上がる。
 
現場でもトラブルというのはあちこちに飛び火する。飛び火すると、それぞれを消化しなければならないので延焼が延焼を呼ぶ構造になっていると、場合によっては延焼速度に火消し速度が追いつかず、丸焼けになるまで手を打てないというのもある。もう一旦つぶしてやり直した方が早い、というプロジェクト状況に心当たりはあったりしないだろうか。
 
ここまで来ると、プロマネの仕事は完全に質が変わってくる。分かりやすく分けると、現場にいなくなる。もちろん、適時見たりはすることがあるが、現場がきっちり回っているのなら特に手を出す必要は無い。それよりも、現場に不安定な指示や情報が伝わって右往左往しないように、塞き止めの役割を果たし、必要なら上に調整を差し戻すことによって現場の安定を維持出来る。
 
 
足元の状況
 
というところで、最近の話に戻ると、目下この先回り作業をえっちら行っている段階となる。どうやっても現時点ではヘッジを組めない要素が幾つかあるため、ここはモニターと回避シナリオを組んでウォッチ対象に入れて眺めておくしかないのだが、他はだいぶと先行勝負が出来そうな感触がある。
 
理屈ではなく経験と体感で理解してるところもあるため、はっきりと説明する言葉は持っていないのだが、この段階の作業は結果として無駄なものは少なくない。あとから考えて発生しなかった事象への先回り対処も一部には含んでいるからである。なのであるが、リスクとトータルコストで見るとこのやり方の方が総じて低い。
 
SIや制作など受託系の会社が赤字を出すのは全体として不調な場合もあるが、そうでなければ多くの仕事の中でごく幾つかが大失敗プロジェクトになったからというのはよくある。他で積み上げた黒字をその少ない赤字案件がすべて食って吹き飛ばしてしまうからである。
 
泥沼スパイラルの辛さと出血(コスト負担)の多さからしたら、少々の今のロスはまったくもってPayするというのが投資感覚でも判断となる。
 
幸運なことに、今回の仕事は他にも複数名、この手の勘所感覚の鋭い人がいらっしゃるため、説明のための説明みたいなことをする機会が最小限で済んでいる。内部調整速度は対外的な反応速度を規定してしまうため、コアメンバーの動きが軽いのはプロジェクトリスク管理としてとてもしやすい。
 
という感じでしばらく粛々モードにある。プロジェクト終了まで願わくばこの粛々モードを維持して終わらせたいところである。(そうなってくれると嬉しいのだが、潜在リスクファクターが結構大きいので怖い)
 

 
なお、次のエントリはトレンドセオリーに従うなら「プロマネ時代をゆく」か「プロマネ時代 5つの定理」になるはずなのだが、残念ながら逆張り投資家なので、別路線になるものを思われる。あなたは何屋さん?という話になる見込み。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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