最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

49

HD DVD撤退の反応に見るメディアと市場の温度差

公開日時:
2008/02/21 01:55
著者:
渡辺聡

いつ決着が付くのか、それとも長期化するのか、というVHSとベータの歴史を何度と無く思い起こさせていた次世代DVD規格の競争は東芝の市場撤退ということで一旦区切りがついた。
 
勝った負けたというフレームで見ると一応ブルーレイの勝利となる。しかし、少なからず聞こえてくるあるのが、「それはそれだけど、結局のところネットワーク配信がこれからの主流になるのでは」という声である。例えば、分かりやすいところで、シーゲートのCEOであるBill Watkins氏が、年頭CESで「勝者はBlu-rayでもHD DVDでもなく、ハードディスク」との発言したのがちょっとした話題を呼んでいた。

もちろん、言うまでも無く、ディスクドライブメーカーであるシーゲイトの立場からのポジショントークではあるが、それを分かった上でリアリティを持って受け止めてしまったというのが周囲の気持ちなのだろう。
 
という話もあるにはあるが、この構図整理は一種お約束みたいなものなので、この程度とする。今回取り上げたいのはそこではなく、東芝の決定と周囲の反応の構図が割りと面白かったこと、経営判断として記憶しておいても良いものなのでざっとまとめたい。
 
 
第一報への反応
 
雰囲気はニュースの検索結果からタイトルを斜め読めば概ね分かるだろう。踊っている文字は、失敗、撤退、責任、不満、戸惑いといったところになる。元々どっちが勝つかという対立勝ち負け構図でのフレーミングが多かったため、このようなまとめ方になるのは流れを受けて自然なところとも言える。
 
では、市場の反応はどうだったか。ロイターの記事を引くのがおそらく一番コンパクトだろう。ちなみに結論から書くと、ポジティブ。発表当日の株価もすっきり上昇している。

正式発表前の記事となるため、若干の前置きがコメントに入っていたりするが、こんなところとなる。

 大和総研のアナリスト、佐藤雅晴氏は、ロイターの取材に対し、「HD事業撤退が事実ならば」と前置きしつつ、「東芝の業績はHD事業の動向が不透明要因になっていたが、それが払拭されることになり、2008年度以降の業績にはポジティブな動きと考える」と語った。同氏は、「悪い状況を引きずる最悪のシナリオの回避になる。西田厚聡社長をはじめ経営陣の決断の早さは評価できる」と述べた。

解釈としては、典型的な重しとしてのリスク要素が取れた際の市場の反応と言える。これまでのR&Dコストは決して重くないものの、撤退コストがそう大きくはならず、且つずるずると難しい戦いを長引かせて疲弊していくよりは遥かに良いというのがマーケットから出されたメッセージと言える。

厳密には、同じ記者会見の席でフラッシュメモリ事業の強化が発表されていることから、こちらもポジティブ解釈だったとすると、HD DVDの話は影響として半分程度とのざっくりの見方も出来る。しかし、少なくとも、ニュースでの悲観的な空気とは逆を行っているのは間違いない。この感覚は

「ブルーレイ・ディスク(BD)」方式との規格争いで敗色濃厚となり、早期に見切りをつけたことが、同社の「選択と集中」路線に沿った判断と市場関係者からは評価されたようだ。

良く分かる 。

メディアと市場、どちらが一方的に正しいというものでもないが、こうして見方が綺麗に分かれることも珍しくないという典型ケースとして。 
 
東芝の戦略と動き
 
意外だったというか、はっきりと評価して見直さないとならないと感じたのは、今日発表されたソニーとの高性能半導体の生産合弁会社設立の話。もちろん、PS3のエンジンであるCELLも対象に含まれる。出資比率でみても、東芝60%、ソニー20%、SCE20%となっており、メジャーは東芝が取っている。
 
チップの層の競争と、最終製品の競争については別物なため、このような味方なんだか敵なんだか分からない構図に入っている会社というのは決して無い訳ではない。しかし、撤退発表の話も記憶から消えないうちに、(一般的な見方では敵方であった)ソニーとがっちり手を組んで事業を進めているというのは、部門が違うとはいえ、なんとなくなぁなぁで経営していては出来ない。最終的な数値評価は少し先の決算を見てということになるが、経営の手の打ち方と感覚としては評価したい。

ちなみに、レコーダー事業については記者会見の席で、

次世代レコーダーに関しては、「NAND型フラッシュメモリや小型HDDといったストレージ技術、画像処理技術、次世代CPU、ワイヤレス技術、暗号処理技術などをいかし、新たなデジタルコンバージェンス時代に適した次世代映像事業を行っていきたい」

というところで、DVD媒体ではない道を模索していくとのこと。BD製品を作るか否かという議論も一部であるが、むしろ、こうした新しい設計思想での可能性を模索する方が消費者利益に繋がっていくところかもしれない。

個人的な結論としては、製品市場での覇権争いには敗れたものの、経営の仕方としては評価したいし、今後どのような結果に繋がっていくのかはまた改めて見てみたいというものになる。手放し無条件ではないが、ポジティブとなる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

2

誤変換ですね。ありがとうございます。

  渡辺聡 on 2008/02/21

1

> VHSとベータの歴史を難度と無く思い起こさせていた

何度の誤変換でしょうか。訂正後はコメント削除していただいて結構です。

  くぼた on 2008/02/21

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々今アーキテクチャが面白い
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトインターネットのリュミエール
クロサカタツヤの情報通信インサイト
平野敦士カールのアライアンスInsightGoogleお前もか?
平野敦士カールのアライアンスInsight
江島健太郎 / Kenn's ClairvoyanceiPhoneという奇跡
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」サミット、サミット、そして今こそ!公衆無線LAN
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点暗黙共同体へ−秋葉原事件で考える
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点

読者ブロガー

個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志
独断と偏見の気になる情報セキュリティGoogleというネットの巨大なメディアに支配される脅威
独断と偏見の気になる情報セキュリティ

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

ルート134さん。コメントありがとうございます。 >すべての情報にはス......
Googleというネットの巨大なメディアに支配される脅威
投稿者:新倉 茂彦
コメントありがとうございます。 「消費者・生活者を主役とした行政への転換......
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:sumimotoshohei
こういう余計な人がいなければ、知られずにアリバイ工作できたのに。 //...
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:ルート134
一般にも、うけているが、マニア系にはHPLXの後継機なのでしょうね。 XPにも......
iPhoneの影で馬鹿売れしているみたい
投稿者:ルート134
>制作についてはこれといって語られない。 今週、4ch(読売)で深夜に少......
動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
投稿者:ルート134

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
オンリーワンの個性を極めた超薄型テレビ--日立 Wooo UTシリーズ
日立製作所の超薄型液晶テレビWooo UT 770シリーズは2008年6月にラインアップが増強され、さらに日立らしい
[レビュー]“この手があったか”と思わせるパワーユーザーも納得のPCオンデマンド--「VALUESTAR G タイプR Luiモデル」+「Lui RN」詳細レビュー
「VALUESTAR GタイプR Luiモデル+PCリモーター」は、設置場所にとらわれずにPCを使える、NECが新しく提案
今週の新製品総チェック:ドコモ、au夏モデルが続々店頭へ、ビデオカメラは新機種ラッシュ
NTTドコモ、auなど、ケータイ夏モデルの店頭発売日が決定し、盛り上がりを見せている。9.8mmの超薄型ケータ
[レビュー]テレビを持ち歩ける最強ツール--ソニー、Blu-rayレコーダー「BDZ-A70」
[レビュー]ネットワーク対応の高機能デジタルフォトフレーム--ソニー「Canvas Online CP1」
15時間の行列で手に入れたiPhone 3Gファーストインプレッション--ソフトバンクモバイル「iPhone 3G」
北京を見逃すな!--2008年夏、今買うべき「薄型テレビ」
[レビュー]通勤鞄に忍ばせたい軽さと装着感--マクセルのノイキャンヘッドホン「HP-NC15」