最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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PC業界のアジアシフトシナリオ

公開日時:
2007/08/30 12:23
著者:
渡辺聡

エイサーの買収話から少し構図の整理を。
 
ハイテク関連業界の例に漏れず、PC業界にも資本最適化を目指した企業統合、買収の動きが着々と進んでいる(エイサーの件のコメントはこちらでも)。この中で、PC関連市場でアジアシフトの傾向が出てきている。
 
製造業の製造拠点がアジアを中心とした新興国にあるという構図は今に始まった話ではもちろんない。80年代のナイキのグローバル化から、アパレル関連のアジアシフトなど世界の工場としてのアジア、特に最近は中国という役割分担は世界規模のファイナンス構造の中にぴったり収まって成立してきていた。
 
エイサーの件、あるいは少し前のレノボの件が何が違うかというと、製造機能のみではなくブランドの移転が起きていることになる。
 
 
製造能力とブランド資産
 
米国企業(あるいは欧州企業でも日本企業でも)がグローバル生産を行う場合、企業の本社機能は出身地の本国に置くのが普通となる。販売側は需要の分布に従った内需中心となるか、先進国中心としたグローバルとなるかはその会社の持っているプロダクトと企業ポジションで決まる。
 
いずれにしても、どこの会社ですか?と問われたら米国企業です、あるいは日本企業ですといった言い方がされる。また上場市場についてもニューヨークかロンドンかドイツか東京かといったところだろう。
 
エイサー/レノボは企業の仕組みとしては、先進国での高い販売単価と新興国での安い製造能力をマージンの源泉としていることに違いは無いが、どこの会社ですか?と問われたら「中国企業です」「台湾の会社です」という答えが返ってくることになる。
 
プロダクトブランドとして元米国のものを使い、ADRでニューヨーク上場をしている場合などは、中国企業です、というフレーズがどこまで真なのかは微妙なところもでてくるが(更に株主の大半が米国人で販売市場が米国が軸だったら、実質ほとんど米国企業みたいなもののとなる)、とはいえやはり法人としてのアイデンティティとしては中国です、という言い方が正しいのだろう。
 
 
資本と企業の成長期待(成長願望)
 
M&Aが成立した双方の事情を列挙すると
 
 【売る側】
 ・業界の競争はやっぱり厳しい
 ・株主の期待に応えるのが難しくなってきている
 ・事業として売れるうちに利益確定させたい
 
 【買う側】
 ・成長期待に応えてハイエンド市場に行きたい
 ・自社でブランド保有をすることでマージンを引き上げたい
 ・自分たちが買ってもブランドを破壊しない(という見込み判断)
 
といったところだろう。素直に納得、という構図になる。後押し要因として組み合わせるのなら、新興国への膨大なファイナンスと成長期待がかけられているというのを重ねても良い。
 
さて、次のポイントは、同じ動きが続くかどうかである。更なるアジアシフトはありうるのか。業界アナリストの意見では、まだまだ続く、といった声もあり実際その可能性は高いと読んでいる。アジア企業間の競争に置いて、自社ブランドを伸ばしていくことと外からブランド資産を手に入れることを考えたら後者の方が有利な会社は少なくないだろう。誰もがサムソンのようなポジションにある訳ではない。
 
もう一つ、業界の癖として考慮したいのがブランド移転のしやすさになる。
 
遠いところからの比較になるが、LVMHグループの企業群がアジア系の会社に身売りを考えるかと問われたら、ハイテク産業に比べると発生率は低いだろう。ローカル市場の販売権のやりとりくらいで終わると考えるのがいまのところ自然となる。
 
上に挙げたので触れると、ナイキも普通に考えるとまずないだろう。アジア、特に中国企業のファッションブランドでがんばって海外市場のハイエンドも取りたいと考えてるところは当然あるだろうが、成立要件としては、国力の逆転くらいが無いと素直に起きるとは考えにくい。
 
これらの産業と比べると、移転のハードルは低い。トップブランドであったIBM(ThinkPad)がまっさきに事業売却に踏み切ったところが象徴的でもある。
 
あと、当てはまりすぎるので割愛したが、シフトの動きをクリステンセンの整理した企業の成長と衰退モデルに当てはめてみても面白い。ローエンドから上がっていく企業とハイエンドの企業がどのようなExitを選択したかといった視点での読み解きとなる。
 

 
さて、そうなると自動車産業はどうなっていくのだろうか。書きながらヒュンダイやメルセデスなんかの名前が頭のなかでちらちらしていた訳である。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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