シード、アーリーステージにある会社を恒常的に手伝うようになってきた。
インキュベーターというほど大掛かりに特化した訳ではないが、ファイナンス業務の前後均しに事業計画のブラッシュアップを行ったり、体制強化ポイントを整理したり、会社の方針について議論を深めたりと、単に「売上伸ばしましょう!」というのではなく、経営の仕組みや先々の方針をどのようにしていくのかを話す機会が増えている。
会社というよりはトップそのものの支援という形になっている場合、単に会社の成長をどうするかというだけでなく、社長個人の資産運用、資産管理の方針をどうしていくのかを先に整理した方が話がスムーズに行くことがある。ご本人のポートフォリオをどう決めていくのか、また会社の経営方針とどのように摺り合わせをしていくのかという視点から物事を良く考えるようになった。
法人化をしていないとはいえ、一応独立事業者として仕事をしている身なため、家計のバランスシートと事業のバランスシートをどのように繋げればいいのかというのは他人事ではない。
社長の資産と会社の資産
大きな公開企業と違い、ベンチャーの場合は創業トップが株式の過半を保有していることが珍しくない。
この状態だと、良い悪いは評価はともかくとして、社長個人の資産と会社資産は感覚として似たものとして扱われやすくなる(もちろん、公私混同や資産管理の切り分けがはっきりせず、会社が私物化されてとガバナンスとして良くないのは言うまでも無い)。
社長個人のポートフォリオ内での会社を分類すると、たいていは積極運用を目的とした大型の直接投資となっている。また、社長個人が借金をしている場合、個人としてデッドで調達してエクイティ投資をしていると解釈できる。自身がちょっとした投資会社みたいになっている訳である。
さて、このような前提で、
・会社を変に私物化することなく、つまり従業員や関係者に自分の都合を一方的に押し付けることなく
・事業の可能性を十分に引き出しながら
・社長個人の運用効率を高める
という三つを達成するにはどのようにスキームと計画を作れば良いのか。
普通に事業支援するケースと違って出てくるのは上記でも触れたが、まずは個人としての資産運用の期待値とリスクの設計になる。あまりに社長が無理をしてしまっている場合、事業側を上手く行くように設計していても、リスクを社長個人にただ転嫁しているだけになってしまっていたら意味が無い。
事業と個人の切り分け
この場合は、無理が無くなるように、事業目標の再設計から運用状況の改善まであちこちバランスを取り直すことになる。事業以外の要因で事業がこけることになると実にもったいない。また、事業が大事とはいえ、一方的に個人が犠牲になって良いものでもないだろう。
その他細かい話は多数あるが、個人としてやりたいことと事業としてすべきことが未整理な場合、切り分けをするところから入る。こうなってくると、事業支援というよりは、社長個人の相談相手という役割になる。
やりたいことが絡み合ってどっちで達成すべきか判然としないと、個人の思いを会社の事業目標の中に混ぜ込んでしまい、会社の方針がぶれてしまうことがある。ビジネスモデルやオペレーションが複雑になると運営しづらくなるので、思い先行で事業を押しつぶしてしまうことになりかねない。この手の問題は当事者よりも、第三者的に見ている人の方が切り分けのヒントを提示しやすかったりする。
事業と社長個人と、両方のケアをするというのは取り扱う情報量や配慮する範囲が広くなるので、業務としては結構手のかかるものになる。しかし、事業側だけを考えても上手く解けないものが、本人の悩みも含めてすっきりと解けてしまったりすることもあるため、アプローチとしては割と重宝している。
大きなテーマと繋げると資本と経営の分離、というところなんかにも連なってくるが、事業と個人の切り分けというのは、個々人のマインドレベルも含めるとまだまだ整理と意識改革の必要な分野なのかもしれない。
◇
そして、書きながらふっと思いついたのだが、おそらく上記の話は社長に限らず普通に仕事している社会人一般に実は多く当てはまるのではないだろうか。
単に時間やエネルギーの配分バランスというのではなく、仕事で達成したいことと個人で見届けたいこと。やり方はあまり変わらないだろうから、結構応用出来るんじゃないだろうか。
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