前々回にプレモダンなどと書いておきつつ、返す刀で一見矛盾したようなところをひとつ。普通に資本市場の話を。両テーマは自分の中では根っこの方で繋がったものと認識できているがまだ上手く橋渡しして言葉を出せていない。
どこでどう繋がりが出来たのかはっきりと思い出せないが(Blog繋がりになるのだろうか?)、ネットライフ企画の岩瀬さんとお会いする機会が昨年後半にあった。目下、ひっそりと出されているこちらのリリース(PDF)にあるように、マネックスとあすかアセットマネジメント(正確にはあすかDBJ投資事業有限責任組合)の資本提供を受けて保険会社の設立を目指して動いている方となる。
あちこちのBlogを読んでいる方なら、「ハーバード留学記」の人。本読みの方なら同じく書籍版の『ハーバードMBA留学記』の中の人という表現の方が早いかもしれない。現在のBlogは「ハーバード留学記 その後」を改め「ネット生保 立ち上げ日誌」になる。
経歴としては持たれている連載からお借りするとこんな感じ。
1976年埼玉県生まれ。97年司法試験合格、98年東京大学法学部卒業、2006年ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。ボストンコンサルティンググループ、インターネット・キャピタル・グループ、リップルウッド・ホールディングスを経て、現職。 2007年秋開業を目処に、新しい生命保険会社の立上げを準備中。著書に、『ハーバードMBA留学記資本主義の士官学校にて』(11月16日刊、日経BP社、ISBN:4-822-24552-7、価格1890円)。
そして、生まれがなんとも同じ76年になる。キャリアといい他といいなんという彼我の違い。
ネットの会社を作ろうとしているという風な言われ方が時折されているが、諸々お話を伺った印象としては、純粋に金融事業を立ち上げようとしていると理解した方が、ご本人の意図や世界観とも近い。オペレーション効率を良くするのに当然のごとくオンラインサービス化と情報技術を取り入れて仕組みを作っていくという感覚になっている。その辺りは書かれた本をまとめて読んでも体感的に伝わるところだろう。プライベートエクイティの役割について考察されている幾つかの記述が物の見方としては近い。また、マーケティングをどのように設計していくのか考えている様子が描かれている最近のエントリでもこう語られている。
私はこの夏に留学先のアメリカから帰国し、現在はインターネットを主要な取引チャネルとする新しい生命保険会社の立ち上げに取り組んでいる。この新規事業の成功の鍵を握るのが、いうまでもなく新契約者獲得のためのマーケティングである。参考になりそうな文献を求めて訪れた書店で、当初はウェブマーケティング関連の書籍をいくつか手に取ってみたが、いずれも技術的な手法の解説に止まっており、消費者ニーズや提供価値、商品ブランドのポジショニングといったマーケティングの基本に沿って書かれているものは少なかった。そこでネットビジネスといえども、従来型のリアルなマーケティングと本質においては何ら変わらないことに気がつき、場所を変えて再度本を探し始めた。探していたのは、一見すると「ネット金融サービス」からは程遠い、「コテコテの消費財マーケティング」の本であり、そのとき目に止まったのが本書である。P&Gの元幹部による本だと知って即座に手に取り、ページをめくるごとに惹き込まれていった。
望む事業構造が先にあり、あるいは事業構造の選択範囲を広げるために技術とツールがあると考え、その後最適な形を求めて考えるとこういうアプローチになることもある。
(念のためであるが、世のネット事業全般を貶めたいために引用しているのではないと触れておきたい)
あくまでも門外漢のコメントになってしまうが、発想が今風なんだろうな、と思えるのは書籍の316ページに掲載されているネットライフ設立に至る経緯をまとめているこのくだり。
これからは、両者のあいだを自由に行き来し、柔軟な投資ができるフレキシブル・キャピタルであることが成功するために不可欠だと思う。バイアウトとヘッジファンドのハイブリッドのような投資ができるファームはないだろうか?
この問いの先に保険会社の話が続いており、事業構造として情報化の話が出てくる。金融事業としてこれから強みを持つだろう、世の中から望まれる形を突き詰めた結果出てきたのが現在の事業モデルと考えるのが理解としては自然になる。この視点で見ると、保険会社を作るという表現も少しズレがあり、ヘッジファンドの機能強化という解釈の方がより良いかもしれない。
このところ、新しいオンラインビジネスは何か、メディアサービスの新しい形は何かという次は何かという発想よりも、事業会社の側が何を取り入れていくのかを軸にして考えることが多くなっている。
新しい技術、新しいサービス、新しい商品というのは話題の切り口も作りやすく話しやすい。また、新しいと言われるとなんとなく良いものに思えてくる。しかし、各業界での新商品の生存率などを持ち出さなくとも、内需だけを見ると問題となってるのは、総需要の問題となる。以前に関心空間の前田代表と似たような話をした際に「欲望が足りない」という表現をされていたが、マクロで考えると出てくるのは需給ギャップをどう調整するかというのが問題として上がってくる。
運用ベースで考えて、あるサービスやテクノロジーが新しくメリットをもたらすか、売り手都合ではなく買い手都合での最適化の視点を読み取れるか。事業支援の仕事の際にも導入やカタログ上のメリット比較よりも、中長期の運用視点やオペレーションフローを精査してサービス評価を行うようになっている。
ファイナンスと事業資金需要
岩瀬さんの検討されてる事業は保険会社であるが、上には運用会社がついている。よって、ビジネスプランを書いて投資家を回りベンチャーファイナンスを受けてIPOにGO!、という典型的なベンチャーのイメージよりも事業会社の新規部門立ち上げに近い雰囲気がある。
また、親会社が投資事業を行っているため、グループ全体で見ると資本の調達運用の仕組みは事業会社のファイナンス部門としてでなく、専門企業として備わっている。よって、一般的な会社よりも突っ込んだ形で事業資金の出し手と受け手という金融市場の形を凝縮したような構図が見れるようになっている。
当日も、このファイナンスの仕組みに絡めて様々な議論になった。
前から気になっていたため、大きくトピックとして出してみたのが全体として金余りになってるのではないかというところ。例えば、少し前の記事になるが、LBOがハイテク業界でも普通に行われるようになってきているという話がある。
テクノロジー業界は伝統的には最もLBOに向かない業界だと考えられていたからです。それに対して最近米国のPE業界の人から聞いた話によると、大学基金などからPE業界への資金の流入が止まらない現状を受けてファンド間の競争の激しさは増す一方であり、最近では大手のLBOファンドがLBOを「検討しないセクターは無い」そうです。
理由として、テック業界が一部では安定化しつつあること、再編期に入っていることなど幾つか上げられるが、ひとつはやはり資金調達がやりやすくなっていることにある。同じく、「PEファンドは世界を制する」と題してプライベートエクイティ隆盛の様子が描かれている。
資金調達は調達しやすくなっているというのを正しい前提として受け取ったとして、運用先が無ければ調達の意味は無い。調達側のハードルが低いのなら、資金量に物を言わせて何かを振り回すのではない限り、無駄な調達をしない方が資本効率は高まりリスクも押さえられる。日本だと人口と経済成長、世界レベルだと環境という分かりやすい制約条件を置いたところで、この2点をクリアしないと経済全体が長期で大きく成長するというシナリオは考えにくい。どこかで破綻する。
ミクロレベルで考えても、調達を最小限にするもしくは、調達をしない事業モデルというのは結構考えられる。例えば、少し前に訪問した会社が、伝統的なシステム開発をトランザクション課金で提供しているという話を聞いていた。もちろん、最終的には帳尻を合わせるのは当然だが、発注側は初期に多額の開発費用を調達する必要が無くなる。以前の取引スキームと比較すると、開発会社が事実上のファイナンス機能を発注側に提供しているということにもなる。その分だけ外部の金融事業者の仕事は無くなる。もしくは、件の開発会社の方に資金需要が移ることになる。
これらが世の全体の動向として隅々まで行き渡っている訳ではないが、ひとつのトレンドとして捉えた場合に事業会社の動きはどういう選択があるのか、及び金融事業を営む側はどういう構えが良いのか。運用スタイルとしてはどのような構成になるのか。
というところで、前エントリも絡めると更に形の定まらないテーマに化けてしまうが、仕事の現場にいると否でも応でもぶつかる。ぶつかるものはさっさとまとめていきましょうということで、年始テーマに確認にて。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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