本連載もあと四半期で2周年となります。何気なく始まったところから、気がつけば思わぬ長丁場になってしまいました。
これからもこれまでと変わらず、世にただ流されるのではなく、一本筋の通った視点を届けるべく綴っていきます。
ご愛顧頂いているみなさま、日頃お世話になっているみなさま、本年も宜しくお願いいたします。
さて、どこから始めたものかと仕事頭への切り替え準備で幾つかのサイトを見ていると、昨年話題を読んだマイクロソフトのRay Ozzie(Grooveの印象が強いので”マイクロソフトの”という冠がつくのは少々違和感がある)、が社内向けに向けたメモがZdnetで邦訳されていた。小特集としてコーナー化されておりUIEvolutionの中島氏、テックバイザージェイピーの栗原氏の解説記事も寄せられている。
MS視点とはいえ、バランス良く整理されたドキュメントなためにこのメモをまず。
現在の市場状況
冒頭に市場の状況がサマライズされている。
1995年以降、安価なコンピューティング技術とコミュニケーション技術はわれわれの予想を上回るスピードで進化した。もはやPCやウェブ、携帯電話の存在しない世界を想像することは非常に難しい。米国のブロードバンド人口は1億人を超え、携帯電話の契約者数も1億9000万人に達し、都市部にはWiFi ネットワークが張り巡らされている。これは多くの先進国に共通する傾向だ。コンピューティングは通信ネットワークと結びつき、新しいPCを購入すれば、インターネットに高速接続できるのは当たり前と考えられるようになった。職場でも、自宅でも、ホテルや学校、コーヒーショップでも、ネットワークに接続するだけで、ノートPCは「仮想オフィス」となり、情報を処理し、他者と交流することが可能になった。ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェア、そしてサービスの普及と急速な革新は好循環を生み出した。革新のペースには一向に衰える気配はない。開発者であること、技術のユーザーであることが、これほど刺激的だった時代はない。
これを読みながらつくづく思ったのは、マイクロソフトはPC普及の波に乗って成長した企業だということである。
メモの冒頭で、マイクロソフトの節目を
・1990年 グラフィカルユーザーインターフェース
・1995年 ブラウザとインターネット
・2000年 インターネットとプログラマビリティ「.NET」
・2005年 サービス化
と区切っている。コンシューマーPCでのMSの覇権が確定したのはWindows95の普及と、その先のネットスケープとのブラウザ戦争に目処がつく頃、Office97が出たくらいと見てよい。サーバーサイドはともかく、OSとオフィスソフトの市場で独占的な地位を獲得した。ビル・ゲイツが夢見た個々人がPCを使って生産性を向上させる、豊かな暮らしを送る世界は少なくとも日米欧の主要先進国では概ね実現した。90年代まではパーソナルコンピューターの時代と区切って良い。
2000年。萌芽はブラウザ戦争をしていることから徐々に出ていたが、バブルのピークを迎えてネットの時代に入る。インターネットとネットワークの時代となる。ビジネスとしてのインターネットの普及はバブル以前から着々と進められていたが(Yahoo!やAmazonなど初期の主要企業は95年前後の創業となっている)、アプリケーションとしては2005年を区切りと見て良いだろう。この5年でブロードバンド環境と無線接続環境は整い、携帯も含めてコンピューターはネットワーク接続していることが常識となった。また、初期のASPのように既存のソフトウェアの発想ではなく、ウェブの発想で作られたアプリケーションが研究所や企画書ではなく、実際の事業ベースで成り立つことが実証された。Googleの華々しいIPOとその後も続く成長は象徴的な出来事と言える。
PCデスクトップの地位を固めたマイクロソフトの戦略の基本は、「次のコンピューティングプラットフォームはどこか?」という発想で作られていた。主な候補となったのは、家電(ゲームを含む)、携帯端末、自動車の三つ。上手く行かなかった試みもあるが、いずれもまずまずの成果を上げて現在に至っている。しかし、同社の屋台骨を支えるには至っていない。
分岐点として中島氏はこう指摘している。
Gatesが犯した最大の過ちは、Internet Explorer(IE)が大成功を収めた時点で、Brad Silverbergの「(OSビジネスはJim Allchinに任せて)私にMSNとIEを任せて欲しい」というリクエストを拒否し、IEチームをAllchinの配下に置いたことにある。
伸びつつあるインターネット市場と、新しいコンピューティング市場のどちらを取るかと言われてOSの可能性を取った。
プラットフォームの再定義
「3つの基本的な信条」として整理されている
1.広告を収益源とする経済モデルの力
2.新しい流通/導入モデルの有効性の高さ
3.「簡単に使える」こと--強力で統合されたユーザーエクスペリエンスへの需要
は見方としてはさほど珍しいものではない。Web2.0の議論で散々為されているところである。
しかし、プラットフォームの再設計を明確に追加しているのは面白い。
個々の技術はどれほど素晴らしくても、その数があまりにも多ければ、消費者は圧倒されてしまうかもしれない。消費者は高度にカスタマイズされ、エンドツーエンドのエクスペリエンスを提供する製品やサービスを選ぶようになっている。製品はユーザーにシームレスなエクスペリエンスをもたらすもの、複数の「使える」技術を同時に利用できるもの、ユーザーが自分の利益のために主体的に利用できるものでなければならない。これはインターネットベースのサービス、ソフトウェア、時にはハードウェアを意図的に融合させることで、ユーザーに有意義なエクスペリエンスとソリューションを提供し、こうした全体的なアプローチなしでは実現できないようなシームレスな設計と利用を実現することでもある。
インターネットを範囲としてはA VCの「Point Solutions vs End to End Solutions」など指摘する声は他にもある。インターネット層でも統合型のポータルサービスが良いのか、緩やかに全体が繋がっていくのが良いのかという議論があるが、今後立ち上がっていくユビキタス、マルチデバイスの世界を想定するとPCや携帯のみをターゲットとせず多様なデバイス向けに成立するプラットフォームが要求されることとなる。
広告モデルの伸び、サービス型のソフトウェア提供に目が行きがちであるが、プラットフォームは領域として面白い。
新しいサービスはユーザーコミュニティを、通常は口コミによって、ゼロから構築しなければならない。多くのサイトはシンジケート広告を利用して、サイトの運営費用を捻出しているが、事業規模を拡大しようとすると、とたんに大きな壁にぶちあたる。ユーザーエクスペリエンスにクライアントソフトウェアを組み込もうとしている企業もあるが、そのためにはソフトウェアの配備、更新、コミュニケーション、そして同期のメカニズムを作り替えなければならない。ユーザー IDやサービスの相互運用性を維持するメカニズムは、相変わらず不必要に細分化されている。直感的にいって、プラットフォームの分野には、迅速な革新の条件であるスピード、シンプルさ、そしてゆるやかな結合を損なうことなく、こうした機能を開発者に提供するチャンスがある。
この話は.NET前後でマイクロソフトが一通り挑戦し、そして十分な普及は行えなかった領域となる。相互運用性の議論も随分を進められているが、ソフトやデバイスについての議論が主であり、サービス層は議論の中核に置かれていはいない。
多義的な意味を含んだそのままで、プラットフォームがどうなるのかは今後面白い。ネットの人々が語るようにブラウザになるのか、Ozzieの語るように新しいOS的なものが出現してくるのか、もう少し緩やかな規格の上で疎結合していく形になるのか。はたまた、中身は様々に分かれてもインターフェースデザインと操作感が重視されていくのか。
新年企画の補足の意味も込めて、今後しばらくはCNETとZDNetの”間”に見え隠れしているものがキーになるという見通しを整理して始まりとしたい。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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