最終更新時刻:2008年7月24日(木) 12時52分

-

新年の挨拶に代えて:マイクロソフトの戦略転換とRay Ozzieのメモ

公開日時:
2006/01/04 23:17
著者:
渡辺聡

本連載もあと四半期で2周年となります。何気なく始まったところから、気がつけば思わぬ長丁場になってしまいました。

これからもこれまでと変わらず、世にただ流されるのではなく、一本筋の通った視点を届けるべく綴っていきます。

ご愛顧頂いているみなさま、日頃お世話になっているみなさま、本年も宜しくお願いいたします。

◇ ◇ ◇

さて、どこから始めたものかと仕事頭への切り替え準備で幾つかのサイトを見ていると、昨年話題を読んだマイクロソフトのRay Ozzie(Grooveの印象が強いので”マイクロソフトの”という冠がつくのは少々違和感がある)、が社内向けに向けたメモがZdnetで邦訳されていた。小特集としてコーナー化されておりUIEvolutionの中島氏テックバイザージェイピーの栗原氏の解説記事も寄せられている。

MS視点とはいえ、バランス良く整理されたドキュメントなためにこのメモをまず。
 
 
現在の市場状況
 
冒頭に市場の状況がサマライズされている。

1995年以降、安価なコンピューティング技術とコミュニケーション技術はわれわれの予想を上回るスピードで進化した。もはやPCやウェブ、携帯電話の存在しない世界を想像することは非常に難しい。米国のブロードバンド人口は1億人を超え、携帯電話の契約者数も1億9000万人に達し、都市部にはWiFi ネットワークが張り巡らされている。これは多くの先進国に共通する傾向だ。コンピューティングは通信ネットワークと結びつき、新しいPCを購入すれば、インターネットに高速接続できるのは当たり前と考えられるようになった。職場でも、自宅でも、ホテルや学校、コーヒーショップでも、ネットワークに接続するだけで、ノートPCは「仮想オフィス」となり、情報を処理し、他者と交流することが可能になった。ハードウェア、ネットワーク、ソフトウェア、そしてサービスの普及と急速な革新は好循環を生み出した。革新のペースには一向に衰える気配はない。開発者であること、技術のユーザーであることが、これほど刺激的だった時代はない。

これを読みながらつくづく思ったのは、マイクロソフトはPC普及の波に乗って成長した企業だということである。

メモの冒頭で、マイクロソフトの節目を
 ・1990年 グラフィカルユーザーインターフェース
 ・1995年 ブラウザとインターネット
 ・2000年 インターネットとプログラマビリティ「.NET」
 ・2005年 サービス化
と区切っている。コンシューマーPCでのMSの覇権が確定したのはWindows95の普及と、その先のネットスケープとのブラウザ戦争に目処がつく頃、Office97が出たくらいと見てよい。サーバーサイドはともかく、OSとオフィスソフトの市場で独占的な地位を獲得した。ビル・ゲイツが夢見た個々人がPCを使って生産性を向上させる、豊かな暮らしを送る世界は少なくとも日米欧の主要先進国では概ね実現した。90年代まではパーソナルコンピューターの時代と区切って良い。

2000年。萌芽はブラウザ戦争をしていることから徐々に出ていたが、バブルのピークを迎えてネットの時代に入る。インターネットとネットワークの時代となる。ビジネスとしてのインターネットの普及はバブル以前から着々と進められていたが(Yahoo!やAmazonなど初期の主要企業は95年前後の創業となっている)、アプリケーションとしては2005年を区切りと見て良いだろう。この5年でブロードバンド環境と無線接続環境は整い、携帯も含めてコンピューターはネットワーク接続していることが常識となった。また、初期のASPのように既存のソフトウェアの発想ではなく、ウェブの発想で作られたアプリケーションが研究所や企画書ではなく、実際の事業ベースで成り立つことが実証された。Googleの華々しいIPOとその後も続く成長は象徴的な出来事と言える。

PCデスクトップの地位を固めたマイクロソフトの戦略の基本は、「次のコンピューティングプラットフォームはどこか?」という発想で作られていた。主な候補となったのは、家電(ゲームを含む)、携帯端末、自動車の三つ。上手く行かなかった試みもあるが、いずれもまずまずの成果を上げて現在に至っている。しかし、同社の屋台骨を支えるには至っていない。

分岐点として中島氏はこう指摘している。

Gatesが犯した最大の過ちは、Internet Explorer(IE)が大成功を収めた時点で、Brad Silverbergの「(OSビジネスはJim Allchinに任せて)私にMSNとIEを任せて欲しい」というリクエストを拒否し、IEチームをAllchinの配下に置いたことにある。

伸びつつあるインターネット市場と、新しいコンピューティング市場のどちらを取るかと言われてOSの可能性を取った。
 
 
プラットフォームの再定義
 
「3つの基本的な信条」として整理されている

1.広告を収益源とする経済モデルの力
2.新しい流通/導入モデルの有効性の高さ
3.「簡単に使える」こと--強力で統合されたユーザーエクスペリエンスへの需要

は見方としてはさほど珍しいものではない。Web2.0の議論で散々為されているところである。

しかし、プラットフォームの再設計を明確に追加しているのは面白い。

個々の技術はどれほど素晴らしくても、その数があまりにも多ければ、消費者は圧倒されてしまうかもしれない。消費者は高度にカスタマイズされ、エンドツーエンドのエクスペリエンスを提供する製品やサービスを選ぶようになっている。製品はユーザーにシームレスなエクスペリエンスをもたらすもの、複数の「使える」技術を同時に利用できるもの、ユーザーが自分の利益のために主体的に利用できるものでなければならない。これはインターネットベースのサービス、ソフトウェア、時にはハードウェアを意図的に融合させることで、ユーザーに有意義なエクスペリエンスとソリューションを提供し、こうした全体的なアプローチなしでは実現できないようなシームレスな設計と利用を実現することでもある。

インターネットを範囲としてはA VCの「Point Solutions vs End to End Solutions」など指摘する声は他にもある。インターネット層でも統合型のポータルサービスが良いのか、緩やかに全体が繋がっていくのが良いのかという議論があるが、今後立ち上がっていくユビキタス、マルチデバイスの世界を想定するとPCや携帯のみをターゲットとせず多様なデバイス向けに成立するプラットフォームが要求されることとなる。

広告モデルの伸び、サービス型のソフトウェア提供に目が行きがちであるが、プラットフォームは領域として面白い。

新しいサービスはユーザーコミュニティを、通常は口コミによって、ゼロから構築しなければならない。多くのサイトはシンジケート広告を利用して、サイトの運営費用を捻出しているが、事業規模を拡大しようとすると、とたんに大きな壁にぶちあたる。ユーザーエクスペリエンスにクライアントソフトウェアを組み込もうとしている企業もあるが、そのためにはソフトウェアの配備、更新、コミュニケーション、そして同期のメカニズムを作り替えなければならない。ユーザー IDやサービスの相互運用性を維持するメカニズムは、相変わらず不必要に細分化されている。直感的にいって、プラットフォームの分野には、迅速な革新の条件であるスピード、シンプルさ、そしてゆるやかな結合を損なうことなく、こうした機能を開発者に提供するチャンスがある。

この話は.NET前後でマイクロソフトが一通り挑戦し、そして十分な普及は行えなかった領域となる。相互運用性の議論も随分を進められているが、ソフトやデバイスについての議論が主であり、サービス層は議論の中核に置かれていはいない。

多義的な意味を含んだそのままで、プラットフォームがどうなるのかは今後面白い。ネットの人々が語るようにブラウザになるのか、Ozzieの語るように新しいOS的なものが出現してくるのか、もう少し緩やかな規格の上で疎結合していく形になるのか。はたまた、中身は様々に分かれてもインターフェースデザインと操作感が重視されていくのか。

新年企画の補足の意味も込めて、今後しばらくはCNETZDNetの”間”に見え隠れしているものがキーになるという見通しを整理して始まりとしたい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々今アーキテクチャが面白い
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトインターネットのリュミエール
クロサカタツヤの情報通信インサイト
平野敦士カールのアライアンスInsightGoogleお前もか?
平野敦士カールのアライアンスInsight
江島健太郎 / Kenn's ClairvoyanceiPhoneという奇跡
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」サミット、サミット、そして今こそ!公衆無線LAN
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点暗黙共同体へ−秋葉原事件で考える
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点

読者ブロガー

レンタルサーバの裏事情サーバトラブル事例(2)
レンタルサーバの裏事情
朝之丞のTry and TestedGoogle Lively試してみました。
朝之丞のTry and Tested

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

EMONEαもiPhoneも所有しておりますが、どちらをより使いたい、携帯したいかと......
iPhoneの「絶賛」と「冷めた反応」の間で
投稿者:Toyolina
lifehacxさん、こんにちは。 CNETの方からTB pingが打てませんでしたので、......
Google Lively試してみました。
投稿者:朝之丞
統計などは別として,私の周りでも,私も含め,「最近ニコ動は面白くないから......
ニコ動、頭打ちなのかい
投稿者:さぁや
余計なことですが、ロータスヨーロッパは、当時のスーパーカーのレギュレーシ......
they'll drink from the fountain of retro,
投稿者:ルート134
1995年ですか、地震で高速道路は落ちるは、Windows95が発売されるは、サリン......
いつか見た歴史のひとコマ
投稿者:ルート134

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
オンリーワンの個性を極めた超薄型テレビ--日立 Wooo UTシリーズ
日立製作所の超薄型液晶テレビWooo UT 770シリーズは2008年6月にラインアップが増強され、さらに日立らしい
[レビュー]“この手があったか”と思わせるパワーユーザーも納得のPCオンデマンド--「VALUESTAR G タイプR Luiモデル」+「Lui RN」詳細レビュー
「VALUESTAR GタイプR Luiモデル+PCリモーター」は、設置場所にとらわれずにPCを使える、NECが新しく提案
[レビュー]テレビを持ち歩ける最強ツール--ソニー、Blu-rayレコーダー「BDZ-A70」
加速度的に製品の認知度を普及させているBlu-rayレコーダー。その高画質、長時間録画という製品特性に「お
今週の新製品総チェック:ソニー「VAIO」が新キーワードを発表、ビクターからはYouTube対応ビデオカメラ
[レビュー]ネットワーク対応の高機能デジタルフォトフレーム--ソニー「Canvas Online CP1」
15時間の行列で手に入れたiPhone 3Gファーストインプレッション--ソフトバンクモバイル「iPhone 3G」
今週の新製品総チェック:まさにiPhone一色の1週間、ついに店頭発売へ
北京を見逃すな!--2008年夏、今買うべき「薄型テレビ」