最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

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より良い製品戦略を求めて:PRTM小野寺寛氏、山田政幸氏インタビュー(2)

公開日時:
2005/07/16 03:00
著者:
渡辺聡

前回に引き続いて、『プロダクト・ストラテジー』について。後半部分の山田政幸氏の大枠の話から具体的な内容、コンセプトをサマライズ頂いたインタビューを。

 
--プロダクトストラテジーで紹介されているフレームワークの全体像について簡単に説明してください

「プロダクトストラテジー」では、ハイテク企業に対するPRTMのコンサルティング経験をベースに多くのケースが紹介されています。読みやすいのだけれども読了するのに思ったより時間がかかるという面白い本で、これは読者の方が自らの経験と照らし合わせて内容を咀嚼し、消化していくプロセスを繰り返すためではないかと思います。

紹介されているフレームワークを、解を導く公式や対症療法的な即効薬としてではなく、自社への適用に際して読者が考え抜く道具として捉えると、広義の製品戦略に関する示唆に富んだ気づきのきっかけと、今後の実際の行動への指針を提供することができるのではないかと考えています。

本書の邦訳は今春出版されたばかりですが、原書の出版は四年前ですので、掲載されている事例も四年以上前のものです。ハイテクの世界で四年前の事例が有効なのかというご懸念をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、邦訳されて初めて本書を読まれたというハイテク企業のクライアントの方とお話させて頂くと、事例の古さがフレームワークの古さを浮き彫りにするのではなく、誰もが知っている事例の提示がむしろフレームワークの普遍性を訴求しているように読めるようです。

どんなハイテクも時を経て陳腐化するので、これはとても良いアプローチだと思います。ハイテクのハイって何だろう?という問いにつながりますし、この答えを探すところに製品戦略の鍵があるのではないかと私は考えています。

「プロダクトストラテジー」で紹介されている製品戦略のフレームワークでは、「コア戦略ビジョン」「製品プラットフォーム戦略」「製品ライン戦略」の三つを、新製品開発に必要な三大コンセプトとして解説しています。

分かりやすく単純化すると、出発点となる「コア戦略ビジョン」によって企業の方向性を大きく定めます。この方向付けに従って「製品プラットフォーム戦略」が実際の企業の行動を導き、特定されたプラットフォーム上でどのような製品ラインを実現していくかを定める「製品ライン戦略」を経て、実際の新製品開発プロセスに至る、という形になります。

実際にはこれらの要素は単純な線形の関係ではなく、お互いにダイナミックに影響を与え合いますし、差別化やプライシングに加えタイムベースやカニバリゼーション、グローバル展開といった競争戦略や、限られた経営資源を踏まえた上で無数の事業機会を追求していく戦略バランスを実現するためのポートフォリオ管理等も実際には大きな役割を果たします。
 
 
--三大コンセプト、と出てきましたがコア戦略ビジョンから順にお願いします。

コア戦略ビジョンは、将来にわたって目指す競争優位実現の方針や達成すべき目標・実現可能な方法を簡潔に記述したものです。企業全体の方向付けを行う役割を担っています。

コア戦略ビジョンのフレームワークを特徴づけているものに、六つの境界条件というものがあります。これらは「技術動向/戦略」「市場動向/競争戦略」「製品戦略」という三つの外部要因と、「事業領域」「コアコンピタンス」「財務計画」という三つの内部要因から構成されており、コア戦略ビジョンの整合性を、これら六つの境界条件の観点から確認していくことで、ビジョンの実現可能性や変更の必要性を評価できるようになっています。

冒頭でも簡単に触れましたが、コア戦略ビジョンは製品が成功するための差別化の方向性、すなわち競争戦略の基本的方針も導出します。競争戦略には幾つかの基本型がありますが、「プロダクトストラテジー」の後半では、差別化戦略と価格戦略、そして価格、タイムベース、カニバリゼーション(共食い)、成長についての考え方が述べられており、特に成長については、基本的アプローチと共に、買収、新規ベンチャー、イノベーションについてのアプローチに触れています。

古典的な競争戦略に関する著作や近年多く出版されているイノベーションに関する書籍をご覧になっている方にとっても、製品戦略の観点から競争戦略を整理して考える良い機会となるのではないかと思います。
 
 
--次の製品プラットフォーム戦略というのは、他では見ない概念と捉えていますがどのような役割を果たすものでしょう。

コア戦略ビジョンを製品開発の具体的なオペレーションに結びつけていくためには、製品開発をある程度抽象化して大括りで整理したうえにコア戦略ビジョンとの連携を確認する作業を行います。このステップを加えることで、製品開発に関わる日々のオペレーションに埋没して打ち手がバラバラになってしまうことを防ぎ、全体感を維持しつつ開発作業を進めることが出来るようになります。

製品プラットフォームは戦略的思考のための抽象的な概念であり、自社の製品群に共通する要素技術の集めて整理したものです。経営陣による重要な意志決定の適時化や迅速かつ矛盾のない製品展開、そして長期的な事業機会を踏まえたプラットフォームのライフサイクル管理、改善などに結びつけることができます。

例えば、ソフトウェアにおけるプラットフォームは標準的にはアーキテクチャ、インタフェース、アプリケーションから構成されます。

製品プラットフォーム戦略がうまく機能しないと、製品開発という日々のオペレーションから戦略的側面を抽出して適切な打ち手を展開するために必要な抽象化を行うことが困難になり、コア戦略ビジョンをいきなり製品開発に直結させてしまうような乱暴な事態を引き起こしてしまいます。

実際に、ハイテク企業における広義の製品戦略が失敗する場合、この製品プラットフォーム戦略に原因があるか、そもそも存在しない場合が多いようです。逆に、製品プラットフォーム戦略をうまく機能させている企業では、製品という概念の抽象度を更に上げていくことで、このフレームワークの適用範囲をいわゆる製品開発以外の領域にも拡大している事例も存在します。
 
 
--製品ライン戦略は、いわゆる製品開発のオペレーションに一番近い部分だと思いますが、市場との対話が必要だという意味では、マーケティングの要素もかなり意識する必要があるのではないですか。

製品ライン戦略は、共通の製品プラットフォームから生み出される具体的な製品ラインアップ(原書ではProduct offering)を時系列に並べた開発計画として表現されます。

製品ライン戦略は、市場条件、競合要因、要員の可用性等の制約を考慮して立案されていくもので、通常、製品ラインアップ(Product offering)にはハードやソフトに限らずサービスも含めて考えます。
定義された製品プラットフォーム戦略と製品ライン戦略を、実際の市場を対象としたアクションプランに展開するには市場プラットフォーム計画(MPP)というフレームワークを適用します。

市場プラットフォーム計画は市場情報・製品・固有(原書ではDefining)技術から構成されており、製品と市場の関係を理解するために必要な課題を検討していきます。これらの課題の例としては、市場のセグメンテーションと顧客価値・差別化要素の定義や、提供すべき製品の定義と製品開発に必要な項目の整理、市場での成功を判断するための客観的な経済指標の確立などを挙げることができます。
 
 
--三つのコンセプトを簡単にまとめて頂きましたが、現実には資源や時間の制約など、やりたくても出来ないということが多々出てくるかと思いますが、バランスの取りかたについてはどのように捉えられているのでしょう。また、戦略バランスや従来のポートフォリオ管理のコンセプトが、ITを活用した形で今後どのように進展していくかも本書では述べられていますが、この戦略バランスについて最後に簡単にお願いします。

戦略的なバランスの実現とは、簡潔に言うと、企業にとっての無数の事業機会を限られた経営資源に整合させることです。コア戦略ビジョンが企業の目指すゴールを設定し実現するためのフレームワークをトップダウンで提供するのに対し、ボトムアップのアプローチも併用する必要があります。

この際に考慮すべきトレードオフが幾つかあります。具体的には、集中と多角化、短期と長期、既存プラットフォームと新規プラットフォーム、ある事業ユニットと別の事業ユニット、高リスクと低リスク、研究と開発、そして財務的にはセグメント毎の適切なハードルレート設定等があります。これらの優先順位を確定する際には、製品開発プロセスからボトムアップで収集される情報と、トップダウンで定められる戦略バランスを組み合わせて整合性を取ることが重要になります。

この整合性をビジョンという形で示し(コア戦略ビジョン)、次に自社の競争資源を踏まえて(製品プラットフォーム戦略)、実現可能性のある計画(製品ライン戦略、市場プラットフォーム計画)に落とし込んで行きます。
 

読むと時間がかかるというのは確かにそうで、分厚い本をずいぶん長い間持ち歩いて格闘していた。というより、読み返さないとならない類の本なので、未だに時折手に取っている。

他のツールと違って特徴的なのはいきなり戦略立案に飛ばずにケイパビリティの議論を経由することから、転換点の説明がしやすいことだろう。例えば、アップルがiTune/iPodを打ち出した際の変更点や、マイクロソフトがウェブ系のサービスを拡充する際にネックになっているポイントなど、企業分析するには使い勝手が良い感じを受けている。

小野寺さん、山田さん、お忙しい中ありがとうございました。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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