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Mary Meekerと板倉雄一郎氏の点と線

2004/11/11 11:36
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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昨日のエントリの続きがあるが、面白いエントリに出会ったので先に。

情報がコモデティ化する時代、というテーマ設定は自分の中で強く意識して持っているものになる。情報、あるいはコンテンツ自体の付加価値が磨り減る傾向があるなかで、企業は、あるいは個人としてどのような打ち手があるのかという視点となる。

例えば昨日の梅田さんのエントリ「バブル戦犯と言われたMary Meekerの再登場」の途中で出てくるパラグラフ、

僕はまだ当時、大手コンサルティング会社に勤めていたのだが、彼女のプレゼンテーションを見て、インターネット産業に関して、これからは間違いなく投資銀行や証券会社が膨大な情報を顧客に無償提供する時代に入ることを予感した。競争の場とやり方をぐっと変えてサバイバルしなければならんな、日米の情報格差をてこにしたコンサルティング事業はもう終焉させなければだめだな。小さな方向転換ではあるが、そんなことを強く思った。その発見は、大手の高コスト構造下でコンサルティングの仕事をするのではなく、コスト構造をうんと安くして少し違ったサービスを志向するという新戦略につながり、1年後の独立に至った。

これは明らかに戦略転換の一例となる。同じような現象は他の分野でも起きており、例えばメディア産業も何を付加価値と見なすのかが根本から変わりつつある印象を数々の記事やエントリから受け取っている。

PCや半導体に限らず、コモデティ化というのは考え出すと非常に深くてややこしい。特に、コモデティ化後にどのように競争力を維持するのかという問いは戦略論の芯を触るような感覚を受ける。

このテーマに引っかかるような印象深いエントリを板倉雄一郎氏がまとめていた。「アイデアと経営」がそうである。

今更ながらの紹介は不必要かと思うが簡単に。『社長失格』と聞くと、「あ、あの本の」とピクッと反応する人は多いことだろう。2000年頃、米国の後を追うようにインターネット企業が生まれ始めた頃、幾つかの経営者インタビューで必読書として紹介されたりしていた。ハイパーネットが倒産しまでの経緯が出版され、世の中から少なくない反響を受けて後既に6年。現在は、企業コンサルティングとベンチャーキャピタル経営、執筆とその他諸々を生業とされている。

数ヶ月前、ひょんなことから知り合う機会があり、以来、時折情報交換させて頂いている。過去にYahooとGoogleの違いについてまとめた「GoogleとYahoo!の価値創造における根本的な違い」はやりとりに触発されて生まれたものになる。
 
 
差別化の源泉
 
会社というのは、差別化を行い、独自性のある商品サービスでもって収益を維持するべし、という教訓が特にスタートアップの世界では言われる。資本と体力にまかせて規模の経済や効率性を追求するのはベンチャー企業の普通することではない。如何に尖らせて行くかという発想が基本として持たれる。しかし、それは本当なのかというのが氏の問いかけになる。

僕に限らず、おそらく大部分の人は、「すばらしい『商品としての』アイデア」(と、少なくとも本人が認識しているアイデア)を思いつくと、経営はそれにすがる傾向があります。よって、そのアイデアをお金に換えるための事業を遂行する際、すざんな経営になりがちです。

一方、「すばらしい『事業戦略としての』アイデア」が思いつけば、それ自体が一つの経営手法となりますから、経営に没頭できます。よって、商品がどこにでも転がっているようないわゆるコモディティーであればあるほど、経営力によって、それを克服しようとします。

ご本人の口からも違う語り口で耳にしたことがあるが、「僕の経営は、明らかに自分が生み出した商品としてのアイデアにすがっていました」と後述されているようにケースとしてはハイパーネットが該当する。良いシーズと良い企業は必ずしもイコールではない、むしろ良いアイデアが良い企業となる妨げとなることがあるという逆説的な視点が提供されている。

ベンチャーがスタートアップする際、おそらくほとんどの方が上記前者の「すばらしい商品アイデア」を探そうとするわけですが、現在のたとえばIT分野の成功者を見回してみればわかるように、どれもこれも商品としてのすばらしさなんてものは、見当たりません。ISPにしても、ECサイトにしても、セキュリティーサービスにしても、広告システムにしても、コミュニティーサイトにしても、ケータイのサービスにしても、長年この分野に関わってきた僕にとっては、「いつかどこかで見た商品」に過ぎません。違いがあるとすれば、技術とインフラの成長によって、当時と同じ商品を提供する手段が多少違っているだけに思えます。

この記述は主に日本市場を見渡しての印象から書かれたものだろう。米国シリコンバレーをはじめとして、純粋なテクノロジーベンチャーとして成長しているケースは世界レベルだとないわけではない。が、しかし、印象として成長と普及の度合いを見ていると頷ける。

では、彼らの成功要因とは何かと問うと、商品やアイデアそのものがキーファクターではないことは明白だろう。

しかし、扱う商品がコモディティーであるからこそ、その成功には、経営力が不可欠だったわけです。
言い換えれば、扱う商品が何であれ、ある一定の価値を持っている以上、経営力によって成功に導くことができるといえます。

ソフトバンクが今やっていることは、単なる電話サービスとISPです。
NTTDoCoMoのi-モードは、ダイヤルQ2のケータイ版に過ぎません。
でも、彼らは、それまでの企業を出し抜き、キャッシュを生み出しています。

経営力、と一言でまとめられているが、要するにコア技術やアイデアが成功要因ではなく、その後種をどのように育て鍛えたかという総合力の方こそがポイントだと結論付けられている。
 
 
コモデティ化と競争資源
 
企業の競争力資源とは何かというシンプルな問いとともにバーニーの「企業戦略論」などを紐解いていると、最後の最後は組織文化や企業の成立経緯といった曰く言い難いものが最後に残ってくる。シェア、技術など時々の場面で有効に働く競争資源はコモデティ化と模倣可能性を意識して、ある程度時間軸を引き伸ばすと有効性を持たなくなることが少なくない。

例えば、おそらく、現在の検索技術そのものは今後何年かかけてコモデティ化に向かう。インデックスサイズなど規模に依存している競争力もあり、スタートラインとして一定の技術力も必要なため、寡占型になっていくと考えられるが、特定企業が圧倒的な競争力を維持するためには、検索技術そのもの以外がキーになっていくことだろう。

差別化を明示的な独自性から編み出し、維持するのは難しい作業であると、幾つもの企業の事例を見ながら考えるようになりつつある。

しかし、板倉氏の指摘は、そもそも経営とは当たり前なコモデティから始まるのではという問いかけが透けて見える。
 
 
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梅田さんのまとめられているMary Meekerのこれまでの経緯、板倉さんのこれまでの経緯、特に直接のやり取りから、世間の評判ではなくご本人が自分のこれまでと今をどのように捉えているのか、この点と線を繋ぐ作業は個人の来し方行く末を考えるには面白い素材ではないかと思っている。

社長失格』を未読の方、この機会に手にとって見てみてください。そして、現在の板倉さんが何を見て何を考えているのか、両者の違いはどこにあるのか。単なる失敗の物語でも再起の物語でもないというのが私の読み方となります。是非。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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