カレンと聞くと、反射的に「メールマーケティングの」という枕が思い浮かぶ人は多いことだろう。そのカレンがブログマーケティング事業を本格的に提供し始めた。単純に市場として伸びているから参入、というものではないだろうということで、その真意を広報室長の四家正紀氏に伺った。

株式会社カレン広報室長 四家正紀氏
--ビジネスBlog事業を始めた経緯、きっかけとはどのようなものでしょう?
ビジネスブログというとイントラネットでの活用も含まれますので、弊社が打ち出しているのは「ブログマーケティング」です。
弊社はデジタルキャンペーンや資料請求などにより獲得される応募者リストに対するダイレクト・コミュニケーションにより、成約確度の高い見込み客だけをクライアントの営業チャネル(営業拠点・店舗・ショールームなど)につなぎ込んでいく「プレセールス・コミュニケーション事業」を推進しています。EメールとWebを中心に、ダイレクトメールやFAXなどを利用したワントゥワン・マーケティングです。
Blogは、RSSによる擬似的プッシュが可能で、もともと個人の情報発信のために作られているので個人の視点・語り口による表現が可能です。この二点はEメールに非常に近い。EメールとWebの双方の利点を持つツールとして活用できないかなと、昨年秋頃から研究を始めていました。
で、まずは自社からやってみようと自社サイトのほとんどをMovableTypeによる管理に切り替えたのが今年の三月で、これは日経新聞などに取り上げられ話題になりました。また、Web広告研究会の会員向け月例セミナーなどで講演したところ、こちらも大変ご好評をいただきました。
きっかけとしてはこのあたりでしょうか。
--Eメールマーケティングとのバランス、カレン全体での位置づけ、それぞれで出来ること、逆に出来ないこととはどのようなものでしょう?
まず企業Webサイトというものをどう捉えるかですが、その用途として、会社案内・商品カタログ・PR誌・IR関係の資料など、多くの場合、印刷物に近い使われ方をしています。
これらは不特定多数に対する情報訴求ということで、公的・網羅性・正確性などが重視されます。さらに印刷物では不可能な検索サービスやリッチコンテンツによる疑似体験の提供が可能です。
ただ、こうしたWebサイトの場合、印刷物と同じように
・情報がプッシュできない。特に繰り返しアクセスしてもらうことが難しい。
・「個人」の視点や語り口による親しみのある情報提供が難しい
・対象の属性や意識に応じた情報訴求が難しい
という欠点があります。
これを「プッシュ配信が可能で、発信者個人を前面に出した親しみある表現が可能なメディア」であるEメールにより補完しながら連動し、顧客や見込み客の属性・意識に応じた情報訴求により「より強い関係性」を段階的に構築していくこれがEメールマーケティングで、最近ではこれがダイレクトメールやテレマーケティング・ファックスなどと連動する「プレセールス・コミュニケーション」へと進化しています。代表的なソリューションがプレセールス・プログラム(PSP)です。
しかしEメールによるアプローチは、メールアドレスなど個人情報の利用についてのパーミションと個人情報の厳重な管理が必要です。またEメールを配信する対象層以外には直接働きかけられないので広がりがないわけです。
これに対してブログは、多数の消費者と「個人情報を介在しない緩い関係性」を構築できるツールとして捉えています。ファン層といってもいいかもしれません。
RSSによる擬似的プッシュ配信が可能で、個人からの情報配信の形態であるブログはEメールと非常に近い特性を持っています。さらに不特定多数への情報訴求が可能で、パーマリンクやトラックバックといった機能により一部のオピニオンリーダー的なブログライター(インフルエンサー・スニーザー)を起点としたバイラル効果も期待できます。
ブログによる「ファン層」の生成という緩い関係構築から、Eメールを中心としたパーソナルなコミュニケーションによる強い関係性へと進んでいくというのが理想です。
--XML/RSSの普及でインターネットは何が変わろうとしているとお考えでしょうか?
ブログにおけるXMLの利用は、簡単に言うと「みんなで一つのデータベースを作る」ことだと思います。あるテーマについて企業・個人それぞれの立ち位置から、ジグソーパズルのピースを埋めていくように情報を発信していくというかたちですね。
ブログがSEOに強いということで注目を集めていますが、ただ上位に表示されればよいということではなく、情報を探している人にとって価値のある情報に素早くアクセスできるように、巨大なデータベースのどこを埋めたいのか、何を探している人にどう訴求したいのかを考える必要があると思います。
RSSはWebの利用形態を一変させる可能性があるのは多くからの指摘がある通りですが、現状においてはツールが未発達で誰でも利用できるわけではない。またヘビーユーザーにとっては、あれもこれもいっぱい登録しすぎて結局は使えなくなってしまう「ブックマーク飽和のジレンマ」があると思います。
最近の米国Yahoo!のMyYahooへの組み込みや、今後実現してくるOSへの組み込みが進み、さらにレコメンデーション機能が進化しないとなかなか広範囲に普及しないのではないでしょうか。現時点では、企業が自社ブログの普及のためにRSSリーダーを開発してユーザーにダウンロードしてもらうのは良い手段だと思います。
--事例として、味の素のケースについて、どのようなコンセプトなのでしょうか?
なるべく高頻度での更新が望ましいブログにおいては「題材(ネタ)」と「書く人」のふたつが重要だと思います。これが決まれば後は目的に応じてフレーム・シナリオを設計していけばいい。
味の素様はWebサイトに10,000件のレシピをお持ちです。さらに社内に料理についての優秀なエキスパートがいらっしゃいます。こうした独自のリソースを生かすコミュニティツールとしてブログを活用するというのが今回のコンセプトです。
--企業からユーザーに対して、コメント、トラックバックをするのは難しいところだと考えられますが、どのような方針でいますか?
コメント・トラックバックについては、基本的にその企業の方針・ブログ運営の目的・管理体制によって使い分けていけば良いのだと思います。ブログの利用を方針立案のための機会と捉えるケースもありそうです。
味の素様においては、メインターゲットである主婦のブログ普及率はまだ低いと判断して、コメントを利用しています。
一般的にコメントの管理には手間がかかりますので、集中的に人気が爆発するようなブログにはコメントを使わないほうが良いと思います。
ブログのよさが現れるのはやはりトラックバックだと思います。トラックバックは自分のブログのエントリからリンクするものですから、あまり幼稚な荒らしは発生しにくいと考えられます。
またブログに掲載されたプロフィールや、他のエントリの傾向により、発言者の持つ特性が読み取れますので、「名無しさん」のコメントに比べ情報の価値も高い。
といって眞鍋かをりさんのブログのように1エントリに300もトラックバックがつくようになると、これは対応が大変です。
弊社の担当する案件ではここまでトラックバックが集中したり、有害なトラックバックが送られてきたりするケースはありません。しかし今後、利用者が増えればトラックバック管理におけるリスクとコストは徐々に問題になるかもしれません。
もうひとつ、企業から消費者の持つブログへのコメント、トラックバックですが、これは更に難しいですね。トラックバックはひとつ間違うとスパムになりますし、コメントについてはなりすましが心配です。と言いつつ、僕自身は会社のブログである カレン広報室 ベスト・メッセージングBlogからトラックバックを発信しています。最近の例として こちらのエントリをご覧になっていただければと思います。「緩い関係性」のなかでどこまで積極的なコミュニケーションが可能なのか、さらに考えて行きたいと思います。
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メールマーケティングの、という言葉が強すぎてBlog参入と耳にして意外な感じを受けていたが、話を伺ってみると当たり前であるが、実に筋が通っていて面白い。インタビュー中最も印象に残ったのはEメールマーケティングのカレン”だった”という過去形であり、最近では「Eメールマーケティング」というワードはほとんど使わない会社になったという一言だった。
ウェブログの、というか一般的なものも含めてマーケティングは出稿量よりもコンテクストのコントロールに比重が移りつつあるのではと時々感じている。その辺りの距離感の取り方、スタンスやキャラクターの打ち出し方がポイントになっていくというのはやはり現場でも出ているという。マニュアルにも言葉にも落とせないような微妙な判断バランスは様々な場面で勝負のポイントになっていくことだろう。
また、実は大きすぎるキャンペーンには合わないのでは、というのも仮説的に持っているが、この点は半証といったところか。瞬間最大風速の勝負ではなく、読み物的なコンテンツを提供してじっくりコミュニケーションを取るタイプのものへの相性はやはり高い。幾つかの事例についても意見交換をさせて頂いたが、コンテンツを十分に保有している場合、資産を生かす手段として使える。インタビューのまとめ中で出ている味の素のケースは好例と言えよう。
セールスよりもマーケティングのツール、そういう印象を強くした。
四家さん、遅い時間までご対応頂きありがとうございました。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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