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持たずに押さえる:ハイテク/インターネットセクターの競争戦略試論

2004/08/09 17:20
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渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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昨日久しぶりに投資家仲間との情報交換を行い、延々7時間にもやりとりをしてきた。出た話が面白かったので、Blogは夏休みモードに入っているが備忘録も兼ねてまとめてみたい。

話の落としどころは、連載でも度々取り扱っている、アプリケーションの世界は転換点に差し掛かっているのではというところ、事業の競争資源はどこに求めれば良いのかというものになる。特に、どのようなアセットを保有管理し、どのようなものを外部化していけばよいのか、資産効率と競争力は向上するのか、という視点でまとめている。
 
 
ソフトウェア・セクターの傾向分析
 
2ヶ月ほどまえの資料になるが、投資銀行に勤める知人が私的にまとめたソフトウェア・セクターの分析を送ってくれた。ソフト企業をグルーピングし、
 ・売上が減少している
 ・この6ヶ月は売上成長が見られるグループ
 ・2Qに一時的に売上が落ち込んだグループ
 ・売上の成長が見られないグループ
といういまいちぱっとしない要素を含んだ分類に33社が当てはまり、セクターの時価総額の75%に達する。バブル後の回復過程に差し掛かっているところでこの様子だとセクター全体が成熟化したのではという意見にも頷きたくなるというのが彼の結論だった。

ソフトそのものは競争資源ではなくなっているのではないか、という仮説をこのところずっと考えている。

話はハイテクではないところから入る。ダイエーとイトーヨーカドーの明暗を分けたものは端的に何か。マネジメントチームなど様々な切り口はあるが、集約すると不動産を所有したかしなかったかの差と言える。ダイエーは資産を固定した形で大量保有したこと、資産のリスクと事業のリスクのバランスの管理が土地市場の変動バブルの崩壊もあり崩れていったこと。有利子負債が重かったことが資本と資産の視点で捉えた時に異なる。対して、「持たざる経営」と書くと薄っぺらくなってしまうが、ヨーカドーは資産のリスクを抱えていない。物財を取り扱い、サービスが競争力となるリアルビジネスの中で、ハードアセットから身軽でいたことによる成功事例がイトーヨーカドーと言える。

さて、ハイテク市場に目を向けると、ハードアセットを持たない企業はごろごろとある。ソフトやインターネット系がまさにそうである。もちろん、チップやPCなど製造を伴う企業がまったく何も持っていないということはないが、シスコのように工場をなるべく持たないケースも珍しくはない。

バブル崩壊前までのソフトウェア市場での競争力はアプリケーションの完成度に基本的には依存した。もちろん、マーケティングの巧拙やアーキテクチャーの転換期に上手く次の製品を出せたかなどポイントポイントの差はあるが、さっさとロックインしてしまったOSなどを除くと、RDB、ERPなど機能の高度化を目指して競合が切磋琢磨していた。ハードアセットと対比するなら、「ソフトアセット」の品質が競争力の根幹にあったわけである。人に投資し、アプリケーションに集積していくことが企業の基本方針となる。

ところが、上記の通り、ソフトセクターは転換期に入ってしまっている。オープン化、標準化の動きとも合わせて考えると、ある日出てきた品質の良いアプリが世の中を席巻し、次々と高収益企業が出来上がるという話はリアリティを感じられなくなってきた。これからは無形資産、インタンジブル・アセットの時代だとの話を数年前から良く耳にするようになったが、リストの中からアプリケーションそのものは落ちつつある、もしくは事業デザインの一部に一体化した形で組み込まれつつあるのだろう。出来の良いアプリといえども単体では資産価値を持たなくなりつつあり、競争力維持の投資対象としての位置づけは変わってきている。
 
 
持たざる無形資産
 
さて、では世の中はどこに向かっていてこのご時世何が大事になりつつあるのか。

比較対照として、ピザデリバリーチェーンの「ピザーラ」が話にあがった。特殊成功事例としてではなく、ごく普通に磐石に上手く行っている事例という文脈となる。

ピザーラはもちろん、フランチャイズ事業である。各チェーンごとに細かい違いはあるが、運営ノウハウを提供し、什器をレンタルもしくは販売し、原材料調達のサプライチェーンに組み込んで店舗オペレーションを任せて暖簾代と収益の一部を本部に還元させるモデルが基本となる。

ここでピザーラの事業の根幹の競争力は何になるのか。
一般的に解釈すると、店舗運営のノウハウ、フランチャイズ展開の大元になる知恵と資料が根っこだという理解が普通だろう。いわば、ナレッジを蓄積して体系化したアプリケーションである。しかし、冷静に考えてみると、ピザの作り方や店舗管理のノウハウそのものは模倣不可能なものだろうか。そうではないだろう。細部細部の細かい知恵と工夫はともかく、概ね競合も持っているコモデティが多くの部分を占めると考えるのが普通となる。材料調達のサプライチェーンなど本部系の機能にしても、適切な投資とリソースの確保があれば、ある程度のところまでは作る事が出来るものである。こう考えると、今のソフト産業と構造は同じであり、かつ収益体として成立しているという意味では何歩も先に行っている。

7時間の話を早足で圧縮したが、要するにピザーラはコモデティ要素の上に成り立っている収益体と言える。素材購買、流通などのサプライチェーンを持ち、実際の生産工程もあることからソフト産業とまったく同一という訳にはもちろん行かないが、どこをどう押さえていることがキーとなっているかにヒントは見つけられることだろう。その他幾つかの事例をケースとして浮かびあがってきた方向性としては「”持たない”が”押さえる”」というのが一つキーワードとなるのではなかろうかという話だった。

HBR日本版九月号に掲載されていた、ソニー森本氏の論文の問題意識と上記の話をまとめて考えてみるとまた面白い。これはまた別途にて。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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