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大型M&Aから読むエンタープライズ市場の変化

2004/07/12 00:12
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プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
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CNETの記事、SAP-Microsoft talks underscore harsh market realityが面白い。BeyondVCにおいて、「summarizes the market quite well」と評されていたが確かに頷ける。法人市場の動向を整理するのに何回かに分けて取り上げてみたい。

エンタープライズ市場で起きている目立つ出来事といえば、くすぶり続けているOracleとPeopleSoftのM&A、同じく正式発表はされていないものの、水面下で交渉が進んでいるとされるMSとSAPのM&Aである。両方とも同じM&Aではあるが、細部を見てみると微妙に意図が異なっている。何がどう違うのか。

 
背景の整理
 
それぞれの狙いは異なるとしても背景は同じである。なぜ彼らがダイナミックな手を打つに至っているのかを先に確認したい。

SAP, along with rivals Oracle and PeopleSoft, has long enjoyed fat profits and double-digit growth, as large corporate customers stocked up on financial, human resources and manufacturing software--functions that fall under the category known as "enterprise resource planning," or ERP.

まっさきに指摘できるのは成長性となる。80年代から90年代までは絶好調であり、OracleはRDB市場での成功をERP市場に伸ばしそれこそ破竹の勢いで成長し続けていた。成長の基盤となったのが、財務、生産、人事、物流など企業機能それぞれの情報化余地。ERPと略される統合業務ソフトに次々と各ファンクションを取り込んでいくことで、大きくなっていったのが2000年以前までとなる。

背景にあった物語は「キラーアプリ」というソフトウェア中心の競争概念。

For three decades, the prime mover behind business software sales has been the promise of a "killer app" that can give customers new insight into their businesses, wring profits in the most efficient way and help them gain a competitive edge. That's what drove multimillion-dollar sales throughout the 1990s.

個人的には、ブラウザ競争の終息するところまでがキラーアプリの時代ではないかと考えている。その後はアプリよりはサービスとコンテンツに軸が移ってきている。切れ目をどこに定義するかはさておくと、2000年まではソフトウェアを磨き上げることが成長に繋がっていった。肥大化の時代でもある。
※余談だが、「肥大化」と今でこそ書けてしまうが当時はメインフレームを比較すると、「ダウンサイジング」として小さくなることが売りの一つだった。時代とは変わるものである。
 
 
バブルの崩壊と変化の予兆
 
さて、ここで起きたのがバブルとその崩壊である。エンタープライズソフト産業は単なる不況以上のものを土産として受け取ることとなった。

In recent years, however, many corporate customers have begun to rethink that notion, especially after the twin blows of the technology bust and the national recession forced them to live with less. Now, rather than buying more products to do more things, companies want the software they already own to more closely model how they do business.

まず、バブルの勢いもあって成立していた、投資額を増やし競争力を高めてライバルに打ち勝つという攻め手の市場から、コストダウンとスリム化へと需要がシフトする。ワンストップ、全てを統合し、何でも引き受けるという一枚岩のERPの発想から、モジュール実装や段階導入などの柔軟性をより求める動きへと変化が起きたのが一つ。もう一つは、

"We no longer need the next killer app. We've all become pretty damn smart as buyers."

キラーアプリという概念自体が消え去ってしまった。
 
 
転換点
 
これらの動きが収益構造にどのような変化をもたらしているのか。

見たままとなるが、
 ・ライセンス収入が着実に減っている。
 ・柱と言われたサービス(コンサルティングも含む?)が減っている
 ・メンテナンスのみが伸びて他をカバーしている
ここに二つの事実を重ねると、M&Aが起きるのは素直に理解出来る。まず、そもそも論になるが、

"The thing to realize is that the ERP market is a very small market," said Jim Shepherd, an analyst at AMR Research in Boston. "The reality is that the Fortune 1000 only has 1,000 companies."

ERPの主要顧客は非常に限られている。売り切ったらあとは周辺サービスと次いつになるか分からない買い替えしかない。ちなみに、買い替えのサイクルは

Companies only replace systems every 15 to 20 years, according to AMR, which means that major deals are few and far between.

15年から20年と非常に長い。メインフレーム時代よりもERP時代の方が短くなると予想されるため、今後10年程度までは短くなる可能性はあるが、それでも長いことには変わりない。一通り回ってしまうともうすることはなくなってしまう。

many are likely to be the result of one of the Big 3 ERP players stealing a rival's customer. For instance, earlier this month, SAP trumpeted a deal with beverage giant PepsiCo, which had been a premier Oracle customer.

限られたパイを争い始めると、製品価格の下落が始まるのは世の必然である。

そして、いまや収益の柱となったメンテナンス費用は磐石なのか。

Maintenance costs have risen substantially in the past few years, and many companies see those costs as out of line with the perceived value, according to an AMR survey of several hundred corporate software buyers this year. Thirty-five percent of respondents said they will try to renegotiate their maintenance contracts in the coming year.

そうではない。三割強のユーザーが条件交渉を近いうちにする予定でいる。これもまた同じく不安が残る。

つまり、どこをどう切っても既存市場は伸びるシナリオがない。ソフトで差別化が成立しにくくなり、ユーザーに交渉権が移ると同時に価格の下落圧力が高まるとM&Aによる寡占化に向かうのは自然な流れと言える。OracleとPeopleSoftの鍔迫り合いは古典的なポーター論のような見方で整理がつく。

少し異なるのがMSとSAPの方である。成長を求めて、という動機では同じであるが、両者の現在ポジションが異なっていることから、違う道が生まれる。こちらについては次回

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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