お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

ローエンド破壊の進むプリンタ市場:Dell vs HP

2004/05/26 04:38
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

渡辺聡

インターネット/IT分野で事業開発に携わる渡辺聡さんが、注目ニュースなどを題材に、そのニュースの背後にある本質的な変化とその先行きを、経済や社会との関わりの中で考えていきます。
ブログ管理

最近のエントリー

NY TimesにてデルとHPのプリンタ事業を比較した記事、The Distributor vs. the Innovatorが紹介されている。キャピタリストのJeff Nolan(BlogとしてはSAP Venturesと紹介した方が馴染みの方も多いだろうか)もクリップに含めているが、なかなかに面白い。

両者の立ち位置の違いはフィオリーナのこの一言に集約される。

"Somebody doesn't just come along, particularly a company that is not an innovator, and say, 'We're going to do it better,' " Ms. Fiorina said. "Dell isn't doing anything. It's just distributing other people's products."

記事タイトルにも顕れているが、デルはモジュール化を最大限生かして組み立てと流通サポートに付加価値を求める企業、HPは伝統的な垂直統合型のプリンタ市場老舗企業である。

The confrontation between Hewlett-Packard and Dell is more than a particularly lively bout of competition in the $106 billion-a-year printing industry. It is a clash - and an intriguing test case - of two different models of innovation and corporate strategy.

ストラテジーの異なる二社はコモデティ化やアーキテクチャ変遷の考えるに良い素材となっている。
 
 
市場セグメントと二種類のイノベーション
 
元記事はR&Dとイノベーションの方法を軸にまとめられているが、市場軸で読み替えをしてみる。まずDellであるが、

Today, Dell is an upstart in computer printing compared with Hewlett-Packard. Dell sold an estimated 1.5 million printers in its first nine months in the business last year. This year, analysts estimate that Dell will sell 4 million printers or more. Its revenues from printers and ink cartridges have already blown past the $1 billion-a-year threshold, the fastest takeoff ever for Dell in a new product category.

参入初年度の実績値1.5 million、今期4 millionの売上予測が出ており、Dellの過去の新規参入と比較してもより早い速度で成長している。

市場全体が成長していないとすると、Dellのシェアの増加は競合にとっては逆の現象となる。つまり、単純化して考えるとHPは攻められっぱなしという構図になるはずであるが、実際はそうなっていない。

Digital photography is a challenge for inkjet printing, but also a showcase for superior technology. And printing digital photos looms as a huge growth opportunity for the printer industry, with as many as 50 billion digital photos taken last year, a number that is projected to increase steadily over the next several years. A small fraction of digital photos are printed, but Hewlett holds 50 percent of the market for those printed at home.

デジカメの普及と合わせて、デジタルで保存された画像の量が増え、プリントの機会が増えている。写真レベルの印刷を小型のプリンタにユーザーが要求し始めていることは大きな技術開発の余地が生まれることになる。この市場が成長余地となっており、

"I want to add $2 billion every year in revenues,"

決して小さくない市場機会がHPの側にも存在している。

では、Dellが全くなにもイノベーションを起こしていないかと問われるとそうでもない。コアテクノロジーの多くを外部に依存していることもあり、HPのように自前で印刷品質の向上を図り質の向上を付加価値として収益源とする体制にはなっていない。彼らがフォーカスしているのはデリバリーの部分になる。

A central issue for Dell in printing is how easily it can get its hands on technology that is comparable or nearly comparable to Hewlett-Packard's. Dell says there is plenty of powerful printing technology out there, and that its goal is to work with suppliers and use its efficient distribution system to lower the cost of printer cartridges.

Dell has turned heads with the brisk sales of its printers - rebranded Lexmark machines with a few clever features, like the equivalent of an ink-cartridge gas gauge that alerts the user when ink is running low and links to the Dell Web site for reordering.

外部からモジュール単位でパーツを仕入れ、もしくはOEMを行ってプリンタ本体を供給し、カートリッジをDellサイト経由で提供することで実現出来ているのは利便性になる。HPがフォーカスしているポイントとは異なっている。もちろん、同時に製品価格の下落も起きており、

Over time, Dell contends it can drive down the cost of printing by 25 percent to 35 percent a page. Shave a third off the cost of a standard color inkjet cartridge for a home printer, now typically $29.95, and the price tag would fall to $19.95.

ハードからサービスデリバリーに勝負どころをシフトさせるいつもの手法は顕在である。
 
 
テクノロジー対ビジネスモデル
 
攻めるDellは強気であり、勝負の一つの特徴を示している。

Things are just beginning, Mr. Dell replies. "Stay tuned; there's a lot we can and will do," he said. A better business model, he explains, will beat a better technology, and he insists the odds are on his side in the printing business over the long run.

市場の要求は技術からビジネスモデルにシフトしている。製品そのものの品質向上ではなく、サービスを含めたプロセス全体の向上がポイントになっている。

"The days of engineering-led technology companies are coming to an end," Mr. Dell declared.

技術主導の会社はまもなく終わりを迎えるのだ、と。
 
 
市場の全体図としてはメインフレーム市場を浸食しつつ下層ではコモデティ化が進むサーバー市場と似ている。Dellは成長するだろうが、HPが即座に苦境に陥るかと問われるとそうはならないだろう。メインフレームが未だしっかりした市場を築いているように、HPの技術が求められる余地はある。ただ、画質を追求せず、サポートサービスの品質が大きな勝負どころとなるビジネスドキュメントの市場はDellが強く、表現力を重視する画像映像系のユーザーにはHPが重宝されるという棲み分けは進むことだろう。

--
本稿は「Closed Innovation vs Open Innovation」イノベーションモデルの違いとしても読むことが出来ます。MOT学習室を運営する知人がNY Times  Dell vs hp プリンタ戦争というタイトルでイノベーションの視点から同じ記事にコメントしています。合わせてどうぞ。

追記:
来日していたマイケル・デルが某ビジネススクールで講演したらしい。主席者曰く、医療分野への視野に入れていると言葉の端々から感じ取れた、とのこと。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社