最終更新時刻:2009年11月7日(土) 10時00分
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会社はなぜリストラをするのか?

公開日時:
2008/10/22 10:15
著者:
清水 亮

ここ一年ほどの間に業界は大きく揺れ動きました。

先日、退職を決めたという旧知の知人と食事をしたときに、「いつ退職の決意をしたの?」と聞くと、彼は「去年大規模なリストラをしたとき」と答えました。


彼は非常に責任感の強い人で、能力もあったため、いま会社が苦しい時期に自分が抜けたらどうにもならなくなる、と思ってそのときは思いとどまったそうです。

一年かけて事業を安定化し、自分の手を離れてもなんとかやっていけるのではないか、という準備がそろって、いよいよ退職を決めたのだそうです。


それ以外にも、大手から人材が多数流出したり、最近の求人では同業他社の事業部門閉鎖などで職を喪った人たちからの応募が増えるなど、いろいろと苦しい時代のようです。

大手のモバイル関係の会社で、減給やリストラを経験していない会社はもうないと言って良いくらいじゃないかな。


先日のシャープの町田会長の本じゃありませんが、どうしても経営が行き詰りそうになったとき、最後の最後の手段として整理解雇があるとします。


製造業なら、ある意味でそれは仕方がないのかもしれません。

けれども在庫を持たず、人件費のみでまわるネットワーク流通のコンテンツ事業は、原理的にはよほどのことがなければ食いっぱぐれないはずです。


それでもリストラが起きる。

これはなぜでしょうか。




想像するに、二つの理由があると思います。


一つ目は、売上げが人員を支えられないくらいに打撃を受けること。

これは突発的だったり、持続的だったりしますが、時代の潮流の変化で起き得ることです。

時流に乗れないと、こういうことになってしまいます。


二つ目は、投資判断を誤ったと気づいたとき。

全く見込みのない新規事業のために大量の人員を雇用してしまったことにあとから気づいた場合、事業部ごと閉鎖するしか道がなくなることがあります。



どちらの場合でも、最近身の回りで起きているリストラの直接の引き金はキャッシュフロー、つまり現金がないことです。


現代の会社の場合、銀行取引のない営業というのは考えられないので、常に銀行にはお世話になっているのですが、一時的なキャッシュフローが足りないためにお金を借りると、それは絶対に返さなければならないお金になります。一度でも返済が滞ると不良債権になってしまいます。


事業が上向きのときに銀行からお金を借りたり、大きな投資をするときに銀行からお金を借りたりすることは稀にあります。

この場合、どちらも前向きな投資なので返済の目処は立てやすい。

しかし、立て続けに「前向きな投資」を失敗してしまうと、あっという間にキャッシュフローは火の車になります。

なにしろ儲かるはずが儲からなかったのに、さらにお金を借りていて、その返済だけは遅らせることが出来ない。つまりお金はどんどん出て行くのに、入ってくる見込みが殆どない、ということになるのです。


従って、たとえそれが「前向きな投資」であっても、借りたお金は極力使わないで置くのがひとつの鉄則だと思います。


僕はシムシティというゲームでよく失敗したのですが、最初のうちは銀行がバカスカお金を貸してくれるのでどんどん借りていると、あるときパタッと貸してくれなくなります。

気が付くと財政は火の車で、税収をどんなにあげても借金の返済に追われて全く首が回りません。最後は住民サービスを維持できなくなり、市民が次々と去っていく。


こういうあたり、凄くリアルな感じがしてゲームに空恐ろしさを感じるのですが、このゲームがゲームといえどシミュレーションとしてある種の現実を再現しているのは間違いありません。しかも、ゲームなので利息は低いほうです。


同じようなゲームで、ザ・コンビニというのもありますが、あれも同様です。


幸い、うちの会社はいまのところ、うまくいってるかどうかは解りませんが、一度も債務超過の状態になったことはありません。当たり前のように思われるかも知れませんが、同業他社で債務超過状態の会社はかなりあります。景気がいいときはそういう状態でも銀行借入がおこせたり、投資を受け入れたりできるのですが、今のように金融不安が起きると、だんだんそれがしにくくなります。そうなると、会社が突然死する確率も高まります。



僕は会社を作るときにとにかくザ・コンビニとシムシティをやりこみました。その横で、Excelを使って年間の資金繰り表を作ってシミュレーションを繰り返したのが、結果的にそういう借入金への恐怖心として残っているのだと思います。


いろいろな理由でキャッシュフローが圧迫されると、会社は身動きがとれなくなります。事務所の家賃すら危うくなる。


そういうときに、不本意ながらリストラをせざるを得ないわけです。


ただ、大きい会社ならともかく、小さい会社ならリストラをしなくても生き残る道は本来いくらでもあるはずです。


僕の知っているこの10年以内に創業された会社の中では、唯一潰れずに残っているのは社長一人社員一人の会社だけになってしまいました。

この会社も、もともとは最大6人くらいまでの規模にいったのですが、なにかの拍子にキャッシュフローがまわらなくなって、創業者の二人だけにもどって事務所も廃止してフリーランスに近い形で活動を続けています。


でもこの形が一番強いわけです。

なにしろ、フリーランスとしてやっていけるほどの実力の人が、その時間を切り売りすれば、それなりに仕事はあるからです。

また、規模が小さいので利益を欲張る必要もない。


この状況でリストラすることはまず有り得ません。


つまり、リストラしなくても仕事を選ばなければ会社が存続する可能性があるわけです。


なぜそうなるかというと、


 1)会社のキャッシュフローが厳しくなる

 2)リストラする

 3)それぞれが新しい仕事を見つける

 4)それぞれが自分の食い扶持を稼ぐ


という、フローが、必ずまわるはずです。

もともと正社員で働いていたような人なら、同業他社にも正社員で入れることが多いからです。


だとすれば、3-4のプロセスを社内に居ながらにして行うことも本来は可能なはずです。たとえキャッシュフローが厳しくなったとしても、何ヶ月前かには予想できるはずですから、休職期間とかを考えれば、その時点から営業活動に転じても、さほど問題はないはずなのです。


そうすると、会社は、そもそもその存在目的を問われることになります。

すなわち「手段を選ばず生存して、会社の存在目的は達成できるか」という問いに答えなくてはなりません。



これは会社の存在目的が抽象的なものであればあるほど達成しやすくなります。

だから長く生き残る会社というのは、そのスローガンやテーマがかなり抽象的になっているのではないかと思うのです。


あのソニーだって苦しい時は電気座布団を作ったこともあるそうです。

ソニーのスローガンを要約すれば、「いたずらに規模の大を追わず、科学技術で人類の幸福を実現する」ということですから、電気座布団だって立派な人類の幸福への寄与なわけです。


これがあまり絞り込まれていると危険です。


たとえば「モバイルで革命を起こす」みたいなスローガンだと、モバイル業界が斜陽産業になってしまったとき、逃げ道がなくなります。


ところがベンチャー企業というのは、そもそもなにか目的を絞り込んで投資家から投資を募るので、このコンセプトに柔軟性がないことが多いのです。


確かに、投資家に対して「僕たちの好きなこと、楽しいことをやり、手段を選ばず生き残る会社です」と説明したら、そっぽを向かれてしまいます。そんなことは、みんながやりたいことだからです。

つまりベンチャー企業は一般の私企業に比べてそのコンセプトに大きな制約を受けることになります。投資家が投資するのは、経営者個人にではなく、コンセプトに投資するものだからです。ものすごく稀に、「この人なら」みたいな場合もありますが、それは個人投資家が個人に対して投資する場合に限られると思います。サラリーマン投資家がどこかに投資するときは、必ず社内での説明責任が発生するからです。




結果的に、会社の持つコンセプトが現実的な収益を生まない、または生まなくなってしまったとき、会社はリストラを迫られることになります。

そのコンセプトそのものを否定するか、会社そのものを否定するか、という違いです。


個人事務所のような会社が意外としぶとく長続きするのは、まさに「いたずらに規模の大を追わず、楽しいことをやる」くらいの柔軟性を持っているからです。


誰だって働いて食っていかなくてはなりませんから、リストラされるような状況になったら、仕事なんて選んでいられなくなります。





僕は二日に一遍くらいは、会社が潰れたらどうしようと考えます。

多いように感じられるかもしれませんが、これが四年前は半日に一度くらいは考えていました。創業時は、二時間に一回くらいは考えていましたね。

周囲の方々のご理解により、幸い、いまのところ会社は順調に成長し続けていますが、最近は成長しすぎないように注意しなくてはならないと思うようになってきました。


リストラしなくてはならないような状況が来るかもしれない。

来ないに越したことはないですが、来るかもしれない「そのとき」のために、常に備えておくことが経営者の仕事だと思っています。


そしてリストラについて考えるということは、すなわち業績低迷について考えるということですから、業績が低迷しないように常に「次の仕事」を探すようになるわけです。


いつも思うのは、いまさら会社が潰れてしまったとしたら、他の優秀な社員はともかく、僕自身はもう就職できないだろうな、ということ。就職して面白い仕事にありつけるイメージがありません。



会社を一度つぶしてしまうと、その評判は一生付いて回るのです。だからきっと、これからの僕は意地でも経営者を続けなくてはならないのだと思います。たとえたった一人になっても。


会社が潰れてしまって、たった一人になったとき、どんなことをするだろうか、と考えてみると、意外に面白い商売を思いつきます。

すると、「なんだ、会社が潰れるまで待つまでもなく、今やればいいじゃん」という結論になるのです。

つまりリストラや倒産の一人シミュレーションをやっているわけですね。

僕というやつは、つくづく暗い人間です。



満開の桜は散るのも早い。

じっくりと時間を掛けて、大輪の花を咲かせる姥桜のようになりたい、と思うのでした。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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