アメリカビジネス社会は、感謝祭(Thanksgiving)からクリスマスまでが少しのんびりする。
そこで2-3年前から、12月末ではなく11月末の感謝祭を自分にとっての1年の「おしまい」と区切って休暇を取り、新しい1年を、気持ちの上で、その休暇が明けたところから、つまり少しゆっくり過ごせる12月からスタートすることにした。そうすると、本物の1月には、ちょうどエンジンがかかっていい感じになる。
感謝祭休暇から戻る飛行機の中で、だいたいいつも「Economist」誌編集の「The World in 次の年」を読む。新たな気持ちで「次の年の世界」について読みながら、休暇モードを少しずつ仕事モードに戻していく。今年は「The World in 2005」である。次の年を占うという意味での本筋の記事ではないが、「The Business Books of 2005」(有料)という記事があったので、今日はそれをご紹介しよう。
アメリカでは売れに売れ続ける「ビジョナリー・カンパニー2」
「The bestselling business book of 2005 has almost certainly been published already. And it may well be the same as in 2004--“Good to Great” by Michael Collins, a study of 11 companies and how their managers transformed them from ordinary to extraordinary.」
Collins (Michael CollinsってJim Collinsの間違いだぞ!!!)の「Good to Great」という本の話が冒頭に来ている。膨大な量の経営書が出版されるアメリカで、Collinsのこの本は2001年秋の出版以来、売れに売れ続けている。
「The book has been on the New York Times list of bestselling non-fiction almost continually since its publication in autumn 2001, and it has overtaken the 1982 classic, “In Search of Excellence” by Tom Peters and Bob Waterman, as the bestselling business book of all time.」
20年以上前の「エクセレント・カンパニー」以来の売れ方。実際にアメリカ人の友人の間でも、この本の信奉者はけっこう多い。
邦訳は「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」である。この本、日本でぜんぜん売れてないというほどではないが、アメリカでの売れ方、受け入れられ方から比べると、日本でのプレゼンスは限りなく小さい。その理由の一つは、日本であまりなじみのないアメリカの会社が、この本での詳述対象となっているからだと思われる。
「Good to Great」で詳述されている11社とは、Wells Fargo、Kroger、Walgreens、Nucor、Kimberly-Clark、Abbot Labs、Fannie Mae、Philip Morris、Gillette、Pitney Bowes、Circuit City。これではなかなか日本人には興味がわかない。
コロラドをベースに調査を続けるコリンズ
著者のJim Collinsは、もともとはスタンフォード大学にいたのだが、企業研究をするための調査研究会社を郷里のコロラドに作って、今は調査・コンサルティング・執筆・講演活動に専心している。
「Driven by a relentless curiosity, Jim began his research and teaching career on the faculty of Stanford’s Graduate School of Business, where he received the Distinguished Teaching Award. After seven years at Stanford, Jim returned to his hometown of Boulder, Colorado, to found his management research laboratory. “I am a self-employed professor who endowed his own chair and granted himself tenure,” he is fond of saying.
Jim set up his research lab in the same building where he attended grammar school. Still a place of learning, Jim uses the laboratory to conduct large-scale research projects to develop fundamental insights and then translate those findings into books, articles and lectures. Jim continues to conduct rigorous research while maintaining an active teaching schedule with leaders in the corporate and social sectors.」
アメリカでビジネススクールの先生を目指す人にとっての偉大なロールモデルの1人だろう。理想的ビジネスライフスタイルの1つだと言える。
彼は5年くらいかけて徹底的な調査を行った上でその成果で本を書く。そしてその本をネタに5-6年コンサルティングなどでかなり稼ぎつつ、次の調査を同時並行して進めて、また本を書く。そういうサイクルで自分の好奇心を満たす質の高い仕事をしていくわけだ。
コリンズの新刊は90年代の新興企業が対象
冒頭のEconomist記事に戻ろう。
「Perhaps the first place to look for a challenger is to Mr Collins himself. He is working on a new book which examines companies that had an IPO (initial public offering of stock) in the 1990s but somehow survived the business cyclones at the turn of the century. “The book ”, he says, “will appeal to anyone who has an inner unease because they don’t know how their story ends.” Who dares say that does not apply to them?」
ついに2005年は、4年ぶりに彼の新刊が出る年だというのである。
しかも内容は、90年代にIPOを果たして現在に至るまでサバイバルした会社が対象とある。
今度は90年代のニューエコノミーブームと共に勃興した新興企業が対象となってくる。Amazno、Yahoo、eBayといったネット列強は、Collinsの最終リストに残ってくるのだろうか。シリコンバレー精神の良質な部分が抽象化されて記述されるだろうか。今から出版が待ち遠しい。
また2005年は、Jack Welchの「Winning: The Ultimate Business How-To Book」も5月に出版予定なので、ビジネス本は、Collinsの新刊とWelchの新刊の一騎打ちになるのではないかというのがEconomist誌の予想だ。
ロジャー・マクナミーの新刊「The New Normal」
そんなこんなで久しぶりに「Good to Great」を手に取って読んでいたら、無性に本屋にいきたくなった。最近、Amazonのおかげで、シリコンバレーの街角から本屋が次々に消えていき、自然と本屋から足が遠のいていたのである。
でも行けばやっぱり本屋は楽しい。
そこで思いがけなく発見したのが、Roger McNameeの新刊「The New Normal」であった。
本連載をはじめたばかりの頃、つまり1年以上前、本欄でも何回かRoger McNameeの「The New Normal」という考え方についてはご紹介したので、記憶されている方もいらっしゃるかもしれない。廃刊になってしまった「LOOP」という雑誌の連載で、彼に会って話も聞いた。
当時の彼の考えが集大成されて、ようやく一冊の本になったわけだ。年末にかけてじっくりと読んでみたいと思う本のひとつである。
本の表紙に書かれているキャッチコピーは、
「Great Opportunities in a Time of Great Risk」
ぱらぱらと見て限り、1年前の彼の議論よりもずいぶん幅広いテーマについて語っている様子。
現代は不確実性の高い時代
AmazonのEditorial Reviewからちょっとだけ引用しておこう。
「Back in the 40s, 50s, and 60s, it was fairly easy to plan for a secure future. People picked a career, a spouse, and a place to live, and those basic decisions put them on a predictable course for the rest of their lives. Especially if they were lucky enough to land at a big corporation with great benefits and smart enough to buy stocks.
In the 70s, 80s, and 90s, technology and global competition transformed the world. An increasingly strong economy masked spiraling instability in the workplace and the world. A rising stock market lulled people into thinking they were in control of their lives.」
1940年代から60年代は、安定した将来を計画することが簡単だった時代。70年代から90年代は、テクノロジーとグローバル競争が世界を変えた時代だが、強い経済が世界の不安定性を覆い隠していた。
「But now we’ve entered a totally new era, which Roger McNamee calls the New Normal. It’s a time of great uncertainty--about terrorism, corporate scandals, the outsourcing of jobs overseas, and much more. The old safety nets aren’t coming back, even when the economy recovers. But the good news is that the New Normal also offers tremendous opportunities. 」
でも今、全く新しい時代に入った。今はおそろしく不確実性の高い時代(テロ、企業スキャンダル、職の海外流出・・・)で、仮に経済が戻ってきても、古いセーフティネットは全くワークしない。でも一方で膨大な新しい機会が創出される時代でもある。これが表紙の「Great Opportunities in a Time of Great Risk」の意味である。
不確実性の中のチャンスを生かすには
最後に、出版記念に、Always Onに彼が寄稿した文章「Four Secrets of the New Normal」をご紹介しておこう。
彼は、自著「The New Normal」の最後の最後を、こんな言葉で締めくくっている。
「The New Normal is about taking chances: knowing the risks, but taking advantage of opportunities that are within grasp. Be thoughtful. Work hard. Act. Have fun. This is the New Normal. Make it yours.」
「Be thoughtful. Work hard. Act. Have fun.」というのはいいですね。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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IT市場は、成熟市場のダイナミクスにあると思われる。このため、経営のベクトルをアシストする書籍が脚光を浴びるのではないだろか。
だからこそ、現在、あえて『2010年の情報技術イメージ』を見透すチカラが、ベンダーだけでなく、企業経営を統括するお客様自身にも、様々なステークホルダーから求められているのではないかと予想される。
米コンサルタントのジェフリー・ムーアは、
『キャズム(溝)』という考え方を提唱している。
このキャズム自身は、新しい技術が市場に投入された際に、果たして多くのお客様ニーズに応えることが可能か否かを、自身の言葉で『トルネード(アーリー・アドプターにおける大きな波及効果)』こそがKSF(Key Success Fctor)になるという。
つまり、新しい技術を好むオタク(イノベータ)から、
企業ニーズ(アーリー・アドプター)への製品移行プロセスにおいて、大きな溝(キャズム)がある、と指摘している。
その後、技術は大いなる市場(レイト・アドプター)へと波及することになる。
米IBMによるPC事業の撤退は、PC(Personal Computer)という技術が、ムーア氏でいう『レイト・アドプター』のプロセスに突入したのではないかと思われる。
これまで、われわれが体験した技術の中で、
大きな変化として、『大型計算機』『クライアント・サーバシステム』『PC』『インターネット』があった。
最後のインターネットに関しては、いまなお様々な技術革新が、自身だけでなく、関連する技術レベルにおいてR&Dが進展していると思われる。
従来のプラットフォーム技術を、
インターネットというイノベーション・ウェイブに乗り、新たなサービス価値を見出そうとしている。
Linuxはじめ、オープンソース・ソフトウェアの動きもしかりではないだろうか。
もしかすると、新しい価値を見つける探求にこそ、
次なるイノベーションの鍵が隠されているのかもしれない。