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CNET Japan ブログ

スパコン開発にもコモディティ化の波

2004/12/01 09:54
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 吉岡 弘隆 hirotaka yoshioka
12月1日(水)〜12月3日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに吉岡弘隆さんがゲストブロガーとして登板します。
吉岡さんのプロフィール:
ミラクル・リナックス取締役技術本部長兼CTO。日本ディジタル イクイップメント、日本オラクル(米オラクルよりの出向)を経て現在に至る。YLUG(横浜 Linux Users Group)でカーネル読書会を主催。OSDL Japanアドバイザリボードメンバーでもある。

本日からゲストブログを3日間担当するよしおかです。よろしくお願いします。

バリバリのアルファーギークの非常にエキサイティングなブログのあとはロートルのヌルイ話におつきあいいただければ幸いである。ミラクル・リナックスというLinuxディストリビューションの技術担当(CTO)をやっている。わたしが何者であるかとか、どーゆーキャリアを歩んできたかとか、梅田望夫との関係とか脇道に属することは自分の日記に書いたのでそちらを参照してほしい。

Top500

世界中のスーパーコンピュータのTOP500というのがある。年に2回更新されて前回までのトップはNEC製の地球シミュレータだったが今回はIBM製のBlueGene/Lになった。

1993年よりリストが年2回更新されているがそれを見ながらいろいろちょっと考えてみよう。LINPACKというベンチマークを利用して、その速度を計測し、速い順に順位を決定するというきわめて単純なスピード競争である。コンピュータのF1競争である。ベンチマークが速ければ速いほどいい。単純な競争であるが、単純なゆえに苛酷な競争でもある。

NECが2年前にトップ500の1位になった時、米国で大騒ぎになったそうである。米国の威信にかけて1位の座を奪還しなければいけないという議論になった。膨大な国家予算をかけその座を奪いかえすというドラマがあったという。スーパーコンピュータの開発の歴史は軍事利用の歴史でもある。国家安全保障のために米国は世界最高速のコンピュータをもたねばならないという事らしい。最近も米議会がスーパーコンピューティング法案を可決というニュースがながれていた。

それはともかく、今回の世界一のコンピュータは700MHzのPowerPC 440を32768台利用したクラスターコンピュータである。このシステムで70.72TFLOPSをたたきだす。前回まで1位だった地球シミュレータは35.86TFLOPSである。FLOPSというのは1秒間に1回浮動小数演算をするという単位でM(Mega=100万)、G(Giga=10億)、T(Tera=1兆)なので1TFLOPSは1秒間に1兆回浮動小数演算を実行するというとてつもないスピードである。

単体のスピードでいうと700MHzのPowerPCというのはIntelの3GHz越えのPentium4に比べて随分クロックが遅いような印象をうけるがメモリバンド幅がPowerPCの方があるのでシステムの性能としてはPowerPCを利用した方が有利ということだ。

性能は10年弱で1000倍向上した

10年前のスーパーコンピュータのアーキテクチャの主流はベクトル型と呼ばれCrayが市場を独占していた。(500システム中の193システム)それが今回のリストでは318システムがIntelアーキテクチャで、Crayはわずか7システム。NECの地球シミュレータはベクトル型のスーパーコンピュータなので、ある意味古典的なアーキテクチャであるが、主流はまちがいなくスカラー型しかもIntelである。

今回の世界一のBlueGene/LもプロセッサはPowerPCでスカラー型である。そしてOSはLinuxをスペシャルチューンしたものになっている。スーパーコンピュータの要素部品はこの10年間で特製品からコモディティになった。

かつてスーパーコンピュータを作る事は最先端の半導体技術、コンパイラーをはじめとするシステムソフトウェア開発力をもつ一握りの企業にしかできなかったし、そのような企業は、米国ないし日本と英仏独ぐらいにしか存在しなかった。

アジアの国々に目をやってみると1993年スーパーコンピュータを開発した国は、トップ500のうち日本111システム、台湾3システム、韓国3システム、香港1であった(米国225システム)。それが2004年11月のリストでは日本30、中国17、韓国11、インド8などである(米国267)。日本がシステム数を減らし中国、韓国、インドなどが増やしている。

10年間で要素部品(CPUやOS)がコモディティになったことで、ある程度の技術力と経済力さえあれば誰でもスーパーコンピュータを作れる時代になった。中国、インドは間違いなく次のスーパーコンピュータ競争の常連国になるだろう。自国内に十分な数のコンピュータエンジニアを持ち、自国製コンピュータベンダーも育ちつつあるからだ。

高校生でも作れるスーパーコンピュータ

普通のPCをクラスタ構成にすればスーパーコンピュータになる。広島県立広島国泰寺高等学校・科学部物理班が作った。2.4GHzのPentium 4を64台並列にしたPCクラスタで9476MFLOPSをたたきだしている。1993年当時であれば、トップ30位以内にランクインできた数字である。

彼等は特別のハードウェアを利用したわけではなく情報教室にある通常のWindowsマシンを64台を利用した。PCクラスタにするために一時的にLinuxを立ち上げるためにCDから起動できるKNOPPIXをベースにPCクラスタを構築するという工夫をしている。彼らは特別なハードウェアとソフトウェアを持っていたわけではなく、普通のPCとLinuxをはじめとするオープンソースソフトウェア、そしてちょっとした工夫と知恵と勇気でスーパーコンピュータをいとも簡単に作ってしまった。

梅田望夫流に言えば「高速道路」が整備されたおかげでスーパーコンピュータ製作という敷居が劇的に下ったということか。

かつてはOSを作る事やシステムソフトウェアを作る事は間違いなく多くの人的資源および莫大な資本が必要であった。しかし今日ではそれはいつのまにかにコモディティ化してしまったのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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