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CNET Japan ブログ

人との出会い、不連続な成長が作るキャリアパス

2004/11/30 09:47
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 伊藤 直也 Naoya Ito
11月26日(金)〜11月30日(火)までの間、梅田望夫さんの代わりに伊藤直也さんがゲストブロガーとして登板します。
伊藤さんのプロフィール:
青山学院大学大学院にて超並列計算機の研究を行い修士課程を修了。2002年にニフティ株式会社入社。blog サービスの企画/開発などに携わる。2004年9月、株式会社はてなに転職。はてなでは開発リーダーとして人力検索はてなやblogサービスはてなダイアリーをはじめとする一連のサービスの企画/開発を行う。また、講演やメディアへの執筆活動を通じてはてなやblog技術のエバンジェリスト活動も行っている。著書にBlog Hacks (オライリー・ジャパン)。個人ブログはこちら NDO::Weblog

さて、私のゲストブログ担当も本日で最後です。今回は技術という話からすこし離れて、エンジニアとしてのキャリア形成に必要なことついて考えたいと思います。

私が面白いと思う人

唐突ですが、普段私が仕事やプライベートを通じて「この人は面白い」と感じる人がどういう人かを考えてみました。前2回の記事の中で紹介したのは宮川さん高林さんGREEの田中さん、2ちゃんねるの西村博之さん、そしてはてなの代表である近藤淳也。そして、梅田さん。また、この記事執筆に関して声をかけてくださったCNET Japan編集長の山岸さん。

どの方もそれぞれに非常に強い個性を持っており、光るものがあります。よく業界ではこういう人のことを「エッジが立っている」とか、「尖っている」なんて言ったりもします。

エッジが立っている人というのは面白いもので、物事の考え方が非常にユニークだといいますか、私が考えたことがないような何かしらの価値観をかならずそれぞれの中に持っているように感じます。いや、自分にはないものを持っているからこそエッジが立っているように見えるのでしょう。

そして、彼らのような個性的な人々との会話の後で気が付くのは、彼らによってうけた影響により、自分がそれまでよりも広い視点で物事を考えるようになっている、ということです。

弱い絆が価値観を増大させるという事実

少し話がずれますが、スタンフォード大学社会学部教授のマーク・グラノヴェッターが1972年に発表した「The Strength of Week Ties (弱い絆の強み)」という論文があります。これまでに書かれた社会学論文のうちで最大の影響力をもつ、とも言われる論文です。

この論文の主題を簡単にまとめると、「社会的絆によって形成される社会ネットワークにおいては、古くからの友人といった、自分にとって強い絆で結ばれている人物よりも、ちょっとした知り合いのような弱い絆で結ばれた人物のほうが、自分に与える影響が大きい」というものです。

これは、グラノヴェッター教授による調査でも実証されています。その調査の中でも最も興味深いのは、「管理職や専門職の人々に今の職を得るために力になってくれたのは誰だったかを訪ねた結果、その返事はいつもきまって"ちょっとした知り合い"だった」という点です。

就職、転職という人生における大きな岐路において強い影響力をもつのがちょっとした知り合い。なにやら不思議な話です。

さて、この弱い絆が大きな影響力を与えるという話と、先に挙げた面白い人々、そして彼らと私との関係や私の身辺を照らし合わせてみます。

実は、先にあげた人たちと知り合ったのはだいたいが一年以内で、そんなに古い仲ではありませんし、中には数回しかあったことない人たちもいます。しかし数ヶ月前にはてなというベンチャー企業に転職した私にとって、そんな一年足らずの友人・知人が与えた影響力は非常に大きなものでした。

宮川さんは、私が表舞台に出るチャンス、例えば Perl開発者のカンファレンスでの講演する機会や技術雑誌への執筆の機会を与えてくれました。(それらの機会を通じて、近藤と知り合い、はてなに入社してました。) また、宮川さんや田中さんは成長著しいベンチャー企業においてエンジニアが果たす役割やそのスピード感を体現してくれました。梅田さんにはシリコン・バレーにおけるベンチャー・ビジネスの変遷や、日本における企業内のエンジニアの立ち位置といった、本質的な話をたくさん聞かせていただきました。また、大きな企業からベンチャーへの転職に迷っている私に決定的なアドバイスをくれたのは、他でもない山岸さんでした。

自分を見返してなお、弱い絆が大きな影響力を持つというグラノヴェッター教授の主張は正しいのではないかと、そう強く思います。

連続的な成長と、不連続な成長

改めて考えてみると、なぜそのような新しい、異なる環境にいる人々との出会いが私に大きい影響力を持つのかという本質に達します。それは「連続的な成長、不連続な成長」という言葉に集約されるのではないでしょうか。

毎日職場で出会う先輩、同僚との交流の中で得るものがないのかというとそんなことはありません。彼らとの交流の中で磨かれていく価値観というのは、自分がもともと持っている価値観です。余計な部分をそぎ落とし、それを確信と変えていく、つまりはブラッシュアップです。これの成長具合は、グラフの線ように連続的な成長でしょう。

一方、大きな企業に所属していた私が、ベンチャー企業で活躍する彼らに出会ったときの価値観の揺れ動きというのは、そこに大きな塊がぶつかり衝撃を与えたような揺れ具合でした。これはまさに、不連続な成長だったのだと思います。

こんな話があります。ある企業のウェブアプリケーションエンジニアと数人で会話しているときのこと。「昨日○○というサービスをオープンしたよ。」「おお、あの規模のサービスだし結構時間かかったでしょう? 半年ぐらい?」「いや、フレームワークあるし三日くらいかな。」

彼らは私と同年代のソフトウェアエンジニアでした。環境こそ違えど、手がける仕事のドメインにそこまでの違いはないはず。しかし、ふとした会話の中にあったスピード感の違い、そして自分が日ごろ行っているプロセスとの違いに圧倒されたのは言うまでもありません。それが良いとか悪いとかいうことではなく、違う世界はすぐそこにあるのだなと実感させられた瞬間でした。

こういった一種のカルチャーショックを受けるような機会というのは、自分と同じような境遇にある人々とのコミュニケーションの中ではなかなか得られないものです。異なる環境で価値観を形成してきた人との出会いだからこそ、不連続な衝撃が生まれるのではないでしょうか。海外旅行にいって、人生観が変わったと言う人が多く居ます。それと同じですね。

変化が人を格段に成長させると、よく言います。成長のためには、連続的な成長のための努力はもちろん必要ですが、時には大きな変化が必要なのでしょう。

人との出会いが成長を促すということ

どうすればそのような変化に富んだ毎日を過ごせるかは「人と出会うこと」に直結しているというのが私の持論です。弱い絆を得るためには重たい腰をあげてでも積極的に出会いを求めることが必要だと思います。出会いは異なる価値を感じるチャンスであり、不連続な変化はそこから生まれます。変化の中で人は成長し、新たな一歩を踏みだすことができます。新たな一歩を踏み出すということもまた変化であり、成長を促します。

エンジニアという職業は、敢えて外に出会いを求めることをしなくても、それなりに仕事が完結する職業です。技術に必要な知識は書籍やインターネットが教えてくれます。しかし、前回も述べたようなユニーク性の高い、価値のあるエンジニアとしてパフォーマンスを発揮し続けるためには、エンジニアリング以外の柱を持つことが必要であり、書籍やネットのドキュメントとにらめっこしていても、自分にとっての二本目、三本目の柱がいったいなんなのかを知ることはなかなか難しいことではないかと思っています。二本目、三本目というぐらいですから、それは自分がもともと持っていない価値観がある場所にこそ、存在しているのではないかと思います。

自分にとってめずらしい人、エッジの立っている人との出会いによるカルチャーショックは、かならずや価値観形成に役立ちます。自分がそれまで知りえなかった世界の価値を体感することが、今後の自分のキャリアを考えるきっかけになるでしょう。それら出会いを通じて描かれたキャリアパスはおそらく、豊かで、過去に想像していたよりもより高いところへ位置しているのではないかと思います。

荘子のこんな言葉があります。

君子の交はりは淡きこと水の若(ごと)く、小人の交はりは甘きこと醴(れい) の若し -- 「荘子」

遥か昔から優れた人との交流ほど、あっさりとしたものなのですね。

さて、私のゲストブログも今日で終わりです。ご愛読ありがとうございました。明日からはアルファギーク特集最後のゲスト、ミラクルリナックス取締役技術本部長兼CTOの吉岡弘隆さんです。どうぞお楽しみに。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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