![]() [ゲスト] 伊藤 直也 Naoya Ito 11月26日(金)〜11月30日(火)までの間、梅田望夫さんの代わりに伊藤直也さんがゲストブロガーとして登板します。
伊藤さんのプロフィール:
青山学院大学大学院にて超並列計算機の研究を行い修士課程を修了。2002年にニフティ株式会社入社。blog サービスの企画/開発などに携わる。2004年9月、株式会社はてなに転職。はてなでは開発リーダーとして人力検索はてなやblogサービスはてなダイアリーをはじめとする一連のサービスの企画/開発を行う。また、講演やメディアへの執筆活動を通じてはてなやblog技術のエバンジェリスト活動も行っている。著書にBlog Hacks (オライリー・ジャパン)。個人ブログはこちら NDO::Weblog
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さて、ゲストブロガーの交代ということで、宮川さんからバトンを受け、本日より3日間、梅田さんに代わりブログを執筆いたします、株式会社はてなの伊藤です。よろしくお願いします。
確実に変わりつつある消費者行動
「ブロードバンド、ブロードバンド」という宣伝文句もすっかり板に定着し、特にめずらしくもなく常時・高速接続が可能になってきた昨今です。都心においてはオフィスはもちろん、自宅も高速回線、街にでればカフェで高速無線で接続が可能、インターネットカフェなども全室ブロードバンド回線完備といった状況です。一部の携帯電話はパケット代が定額制になり、通信速度も一昔前のADSL回線を上回る帯域を実現しています。
このインフラの進化がもたらしたものが、最近周囲に目にみえる形で表れるようになってきました。
ここ最近、毎日のようにオフィスに Amazon.co.jp からの小包が届きます。はてな社員が書籍やCD、DVDなどをAmazon.co.jpで買ってはオフィスで受け取っています。
先日話をした20代前半の女性はケータイ電話で洋服を買うのだと言います。サイズが合っていなくても平気なのかと訪ねると、ある程度サイズに誤差があっても大丈夫な洋服を選んでいるとのこと。また、別の友人も結婚式に着て行くドレスをネットで購入したと話していました(この女性は後日サイズが合わずに返品したそうですが)。
飲み会のときにふと、「こないだ福岡土産でもらった焼酎が美味しかった、またいつか飲みたい」という話になり、福岡にいく機会があったら買っておこうと思ったのも束の間、「楽天で売ってるんちゃう?」と横から一言というシーンもありました。
ECサイトで物を買うという行為が、ごくごく一般にまで広まりつつあります。一昔前はネットで買い物をすることに抵抗があるかどうかという議論もよく為されていましたが、ここ一年かそこらの間にあっというまにお茶の間にまで浸透してしまったのです。この消費者行動の変化のきっかけを考えてみると、やはり常時接続という四文字が連想されます。
参入障壁がなくなったインターネットサービス
ブロードバンドによる技術革新とその普及がもたらしたものは、消費者の側からみるとECサイトの利用率増加やインターネットサービスへの定着率の増加、アクティブユーザーの増加といった点が挙げられますが、では私のようなサービス開発者の側からみた場合には、何かが変わったのでしょうか?
サービス開発者の立場から見ると、ブロードバンドによる回線の常時接続性や帯域増加という要素よりも劇的に変化した点があります。回線コストの低下です。その下がり具合は、単に安くなったという程度のものではなく、それまである程度の企業にしか手が届かなかったような品質の製品が、わずか数ヶ月の間に突然個人の手元に届くようになったという、極端に破壊的な変動です。
数年前は、100Mbpsの光ファイバーの回線を引くなど、大規模なトラフィックを裁いている大手企業サイトぐらいでしか考えられませんでした。ところがいまや街頭で光ファイバーキャンペーンが展開されるほどの叩き売り状態。これを破壊的といわずに何を破壊的と言うでしょうか。
そして、ある技術に関するコスト構造が変化すると、その技術を用いることで成立しているサービス分野への参入障壁がぐっと下がります。そしてブロードバンドに至っては、その参入障壁がほぼ皆無になるところまでコスト構造の変化が進んだという極端な事例なのだと思います。
開発者たちは回線コストをほとんど気にすることなしに、インターネットサービスの世界へ足を踏み入れることができるようになったのです。
参入障壁がなくなりそこから生み出されたもの
とは言え、インターネット上で展開されているサービスを構成している要素というのは単に回線だけではありません。しかし、回線以外の要素でもコスト構造の変化が起こり、そのすべてにおいてコスト面での参入障壁がほとんどない状況になったというのが、ここ最近の状況ではないかと思っています。そして、この状況をもたらすきっかけとなったのは、ブロードバンド以外に、ハードウェアの低価格化、オープンソース・ソフトウェアの台頭、XML技術の普及でしょう。これは具体例を見れば明らかです。
私が今年はじめに開始したRSS検索エンジンのFeedBack、「任意のキーワードに関する話題を追いかける」という一風変わったコンセプトがうけたのか、おかげさまで各種メディアにも取り上げていただくなど、自分でも驚くような反響がありました。このFeedBack、どのようなシステム構成で運用されていると思いますか?
それは非常にお粗末なものです。サーバーは友人が不要だからといって余らせていたPCのパーツをもらって組み立てたPentium III 600MHzのパソコン、OS は雑誌の付録CD-ROMについてきた Linux、回線は月々数千円のADSL 12Mbps、データベースはオープンソースのMySQLを用い、フリーのプログラミング言語のPerlで開発、検索エンジンに相当する部分には、ゲストブロガーも努めた高林さんが開発したオープンソースの検索エンジンNamazuを利用。そして、RSSやweblogUpdates pingをはじめとするブログ周辺のXML技術のおかげで、データの収集にかかるプログラムも簡潔で、マシンも一台で事足りています。
このシステムにかかっているコストは、月々の回線費用と電気代ぐらいなものです。FeedBackが僕に与えてくれたさまざまなチャンスを考えると、かなりの額のお釣りがくるでしょう。メディア掲載暦多数の検索エンジンが自宅でひっそりと動いているという図は、ある種笑えるものがあります。
前回のゲストブロガー宮川さんが運営している、似たようなの性格のサービスのBulkfeeds、こちらはどうでしょうか。やはり、低価格の1Uサーバー一台にオープンソースのソフトウェアで構築されており、そこにかかっているコストはほんのわずかなものです。
また、私はFeedBack以外にもAmazon Webサービスを利用したショッピングサイトのamazlet.comも運営しています。こちらは自宅とまではいきませんが、月々数千円のレンタルサーバーでホスティングしています。管理者権限付きですべてを自由に調整できるレンタルサーバーが数千円、ここでもコスト構造の変化が起こっています。
そして極めつけは、私が所属している株式会社はてなが提供する各種サービス、はてなダイアリーにはてなアンテナ、はてな検索、これらサービスの総ページビューは月間で2億も間近というところですが、そのトラフィックを裁くすべてのサーバーは、業者から取り寄せたパーツと自社設計のフレームを使って組み立てた格安PCサーバー、ソフトウェアは商用のものは一切使わずに、PerlとMySQLを中心としたオープンソースのそれで構築。同じ規模のトラフィックを裁くサーバーの中では、おそらく国内指折りの格安システムでしょう。
いまでこそ17万ユーザー、2億PVものトラフィックを抱える大きなサイトに育ったはてなですが、その始まりは一人の技術者がPCサーバーの中に、低コストで作り上げた小さなサービスがきっかけでした。
ブロードバンドの普及による高速回線のコモディティ化、ハードウェアの性能向上と低価格化、オープンソース・ソフトウェアの普及と品質向上、XML技術の到来、一つ一つの要素をみても大きな影響がありますが、これらすべてが揃ったいま、その可能性に気づくべきはサービス開発者です。社員数1,000人の大企業でも、プログラミング好きの一ギークでも、同じ土俵に立って勝負するのに障壁はもう、ほとんどありません。敢えてそこへ踏み出すために何かが必要だとすれば、それはおそらくほんのちょっとの勇気だけなのでしょう。
そして、最近ではポイントに気づき、実際に行動を起こして新しい風を起こす新しいタイプのギークが徐々に現れてきています。宮川さんや私もさることながら、先日株式会社化したソーシャル・ネットワーキングサービスのGREEを開発した田中良和さんもそうでしょう。GREEもやはり、田中さんが個人の時間を利用して、低価格のホスティングサービスにオープンソースやフリーのソフトウェアを利用して構築したサービスです。
これを単なるギークのおもちゃ遊びとみるか、技術革新がもたらした新しい風をみるかはその人次第ですが、1人が作り上げたサービスが数万人数百万人という人が使うことができるというインターネットの本質、それを実現する基盤がどんどんコモディティ化してきていることだけは確かなのではないかと思います。
次回は、そんなコモディティ化する各技術を目の前にして、エンジニアがその価値を発揮するためにはどうするべきかについて述べたいと思います。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
Etsudi on 2004/11/28
コモディティ化する様々な技術を目の前にして、
エンジニアがその価値を発揮するためには
どうするべきかは、次代をリードする若きエンジニアへの応援歌だと思います。
日本の製造業は、『ものづくり(ハード)』を中心としたビジネスモデルを展開してきました。
それだけに、多くの日本メーカーが課題としているであろう、ソフトウェア・エンジニアリングの視点からも大いに関心があります。
このような技術のコモディティ化が進むなかでの、
イノベーション・アプローチは、企業として大切であると思われますが、同時に新規技術の鮮度も短命にならざるをえなくなります。
大きな『Adapt for changes』こそが、これからのリーディング・カンパニーに求められていると思われます。企業は、自社のコアコンピタンスなビジネスプロセスに『選択と集中』を行い、ノンコアな業務は、
積極的に社外リソースも効率的に活用する。
さらに、企業内の情報共有・意思決定などの動脈部分の加速化を実施する必要があるものと考えております。
つまり、これまでベンチャー企業が進めてきたビジネスモデルが、技術のコモディティ化が進む時代におかれては、言いすぎではありますが、すべての企業に求められてきているのではないでしょうか。
自社が持っていない『技術』、『サービス』、『人的リソース』、『インフラ』、『コンテンツ』などを、
ネットワーク介した社外企業、つまりパートナー企業から補い、『サービスの最大価値』をお客様にもたらす必要があると思われます。
Network Speed≠ニCheap Hardware=Aさらに、
Open Software≠アそが、実現のハードルを低め、多くのひとに機会をもたらしたのではないでしょうか。
このような時代にあって、次回テーマである、
『エンジニアの価値を発揮する』を期待しております。
山崎牧雄 on 2004/11/27
megiya on 2004/11/26
Ken Suzuki on 2004/11/26
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