最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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インターネット企業はどれだけの富を創造するか

公開日時:
2004/11/11 08:24
著者:
umeda

さて昨日の続きです。Mary Meekerの1996年3月の「PC Forum」でのプレゼンテーションを紐解いてみたいと思います。

昨日ご紹介したWall Street Journalの記事で、Mary Meekerは、

「"As we have said for a long time, from a wealth-creation standpoint, we believe we lived through a boomlet, followed by a bust, followed by a boom."」

と言っていた。「from a wealth-creation standpoint」。「富の創造」という観点から。

そう、彼女の原点とも言うべき1996年のプレゼンテーションも、「富の創造」という言葉がキーワードだ。

キーワードは富の創造

プレゼンテーション冒頭の彼女の言葉は、議事録によれば、

「I get to talk about money and wealth creation. [Laugher]」

となっている。会場から笑いがこぼれた。

彼女の論理は、1980年代のPC時代の到来がどれだけの「富の創造」につながったかということを実証的に解説し、そのファクトをベースに、これから始まるインターネット時代の到来を論じる、というものである。

日本の場合、PC産業と半導体産業の到来は、新しい企業を生み出しもしたけれど、「富の創造」の大半は、大手総合電機、大手エレクトロニクス企業の成長という形で吸収された。ほぼすべての大手電機・エレクトロニクスは、売上高を80年代の10年間で4倍くらいは伸ばしている。1000億の会社は4000億に。1兆の会社は4兆に。そんな感じだった。

しかしアメリカの場合は、新興企業がたくさん生まれたから、PC時代の到来がもたらした新しい「富の創造」を、数字ではっきりと表現しやすい。

8年以上たった今見ても圧巻なのは、彼女が用意した「Biggest Investment Success」という表である。

PC関連企業の株による「富の創造」

PC関連企業群が公開したときの株を、1996年3月26日時点まで持ち続けていたら、どれだけの「富の創造」につながったかということを実証的に示すものである。

この表を今見ても面白いのは、1999年とか2000年のバブル期頂点の数字ではないからだ。1996年3月時点の株価というのは、会社にもよるが、バブル崩壊を経て落ち着いている現在の株価よりも低いケースが多いのだ。

まずはMicrosoft。1986年公開時の時価総額は5億1900万ドルである。そして、96年3月時が655億5500万ドル。倍率は126倍。それから8年が経過した今は、3184億5000万ドルであるから、公開時から計算して614倍である。

次にOracle。同じく1986年公開時の時価総額は1億8800万ドルである。そして、96年3月時が214億1900万ドル。倍率は114倍。今は675億4000万ドルであるから、公開時の359倍。余談だが、OracleのLarry Ellisonは、本格的な日本家屋の巨大な住居(何軒目の家だろう?)を、またまた何年かがかりで建設するらしい。最近そんな噂を聞いた。

あとは、会社名-公開時時価総額(公開年)-96年までの倍率-現在の時価総額- 2004年までの倍率、という順に、いくつかの興味深い会社(ベスト10の順ではありません)について、数字だけ並べていきます。

Computer Associates: $40mil(1981) - 419倍 - $16,810mil - 420倍。
Novell: $24mil(1985) - 195倍 - $2,580mil - 107倍。
Cisco Systems: $226mil(1990) - 111倍 - $132,810mil - 587倍。
Solectron: $33mil(1989) - 66倍 - $5,420mil - 164倍。
Electronic Arts: $74mil(1989) - 17倍 - $14,620mil - 198倍。
Dell Computer: $123mil(1989) - 26倍 - $93.600mil - 761倍。
Sun Microsystems: $420mil(1986) - 20倍 - $16,110mil - 38倍。
Micron Technology: $169mil(1984) - 39倍 - $7,280mil - 43倍。

さて、こういう数字を見て、皆さんは何を感じられるでしょうか。
まずは、企業の創造というのは、本当に「無から有」の創造なのだな、ということである。そしてそのことに早い段階で関与することが、個人としても「富の創造」に間違いなく結びつくということである。むろんそこにリスクはつきものであるけれど。

Google株の上昇余力

また、96年から2004年現在までの間の関係で見れば、Dellの爆発的な伸びが圧倒的だ。Electronic Artsの伸びも素晴らしい。Microsoft、Oracle、Ciscoは堅実に伸ばしている。

そして最近のGoogle公開との関係で言えば、公開時時価総額約3兆円というGoogleの数字は、PC時代の各社の数字とは2桁違うという事実だ。ここはどれだけ強調しておいても足りない。Googleは素晴らしい会社だが、非公開段階で怪物になってしまったから、公開後の楽しみがどれだけ投資家に残っているかはよくわからないということだ。Google株を買う人は、そのことをよく考えたほうがいい。

Microsoft、Oracle、Sun、Cisco、Dell、Micron。ここで例に出した10社のうち6社の公開時時価総額は数百億円レンジである。Computer Associates(CA)、Novell、Solectron、Electronic Arts(EA)に至っては、数十億円レンジである。

その中で現在二桁の兆になっているのは、Microsoft、Ciscoだけで、Dellが追っている。

Googleはもう既に5兆円レンジであるから、現在のMicrosoftの時価総額の高みまで行ったって、せいぜい5-6倍である。

今年の1月に、LOOP誌でのインタビュー「投資銀行に翻弄されないオープンなIPOの勧め」で、William Hambrecht(WR Hambrecht会長兼CEO)に話を聞いたとき、そんな問題意識から、

「Q 私は、公開企業を、その企業価値によって4つに分けて考えます。第1は数億ドルのレベル、第2が数十億ドルのレベル、第3は数百億ドルのレベル、第4が数千億ドルのレベルです。これまでのスタートアップは、第1のカテゴリーのレベルでIPOして、うまくいけば第3の規模に成長した。ごく稀に第4の規模になる企業もあります。インテルやマイクロソフトがそうです。しかし、これからIPOしようというグーグルは、第1、第2の段階を飛ばして、第3レベルでIPOしようとしている。こうした状況で、市場の投資家には株価上昇による旨みは残されているのでしょうか。」

こう訊ねたけれど、Hambrechtは、

「すべては、その企業の現在の財政モデルがどうなっているか、そして今後成長を続けていけるのかにかかっている。市場は、どんな企業であれ競合他社と比較したうえで適切な価格を付けるものです。投資家としては、その会社が成長し続けるかどうかを見極めなくてはならないということです。」

こんなふうにはぐらかした。でもそのあとに、

「過去20年間のような急速な成長はもう起こらないでしょう。また、ここ数年の低迷によって、企業のIT投資にはサイクルがあることがわかりました。そして、今やテクノロジーは、少なくとも一般向け製品においては、これ以上発展しても大きな変化をもたらさない地点にまで到達しています。」

と言っている。インタビューのあとで話したオフレコの議論で、彼は僕の上記の質問はGood Questionだったので答えるのに窮したと笑いながら言ってくれたけれど。

Mary Meekerは、インターネットの可能性に比べれば大したことのないPC産業ですらこれだけの「富の創造」をしたのだから、インターネットでは・・・、という論理で、1996年から2000年まで、突き進んでいったのだ。さて、再登場したMary Meekerはこれからどんな論理を展開していくのだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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