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バブル戦犯と言われたMary Meekerの再登場

2004/11/10 07:17
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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CNET Japan「渡辺聡・情報化社会の航海図」11月1日「Yahoo、Google、Blog、RSS後の世の中」、11月2日「GoogleとYahooの覇権競争」を、まだの人は是非読んでみてください。これは、Morgan Stanleyのアナリスト、Mary Meekerのレポート「Update on the Digital World」(PDF)の解説である。また、同じMorgan Stanleyのレポートを題材にした「デジモノに埋もれる日々」Blogの「報道メディアから「対話メディア」への重心移動」も合わせてお読みになられると面白いかと思う。

僕にとっては、このレポートの内容もさることながら、Mary Meekerがとうとう戻ってきたのか、ということのほうが感慨深かった。

新しいフェーズに入ることを象徴するMary Meekerの再登場

Mary Meekerは、ネットバブルを煽りまくった証券アナリスト、つまりバブル戦犯として、バブル崩壊後に大変なバッシングを受けて表舞台からしばらく姿を消していた女性である。

その彼女が戻ってきてまず取り上げたテーマが、BlogでありRSSであるというのは、なかなか興味深かった。Mary Meekerの再登場は、色々な意味で、米国IT産業、ネット産業が、バブル崩壊からの苦しい時代(2000年後半から2004年初めくらいまで)を乗り越えて新しいフェーズに入ることを象徴しているように思える。

11月5日のWall Street Journal「Internet Boom Is Under Way, Says Morgan Stanley's Meeker」によれば、Maryはまたまた威勢のいいことを言っている。

「"As we have said for a long time, from a wealth-creation standpoint, we believe we lived through a boomlet, followed by a bust, followed by a boom."」

私たちがずっと言い続けているように、富の創造という観点から言えば、小さなブームが来て、それがはじけ、そのあとに本当のブームが来るのだ。90年代末のバブルは「小さなブーム」に過ぎず、これから来るブームのほうがうんと大きい、ということを彼女は言おうとしている。

「As evidence, Ms. Meeker pointed to the combined market value of eBay Inc., Google Inc., Yahoo Inc., Yahoo Japan Corp. and Amazon.com Inc., which was $231 billion as of Wednesday.」

そして、11月3日現在の時価総額で、eBayとGoogleとYahooとYahoo JapanとAmazonを足すと、2310億ドル。つまり25兆円近くになってしまう。

本当のブームが来る

ものすごい「富の創造」ではありませんか。たったの十年で。私たちはバッシングされたけれど、ずっとそういうことを言い続けてきたのですよ、と言いたい彼女の気持ちが行間から伝わってくる。相変わらず強気なことを言っているけれど、強気になれる材料が出てきたので、また語り始めたとも言える。

「"We've never had such a long list of [near-term] drivers" behind Internet user and usage -- and Internet company -- growth, she said. Ms. Meeker predicted 10% to 15% annual global user growth during the next two to four years.」

ここで、Mary Meekerが言うインターネットに関する「a long list of [near-term] drivers」とは、

「Internet company innovation is focused on improving user experiences with simple, quick-to-download Web pages; providing more effective search engines and search-advertising tools; introducing more personalized and targeted content and ads; offering more sophisticated music, video and local content; and improving accessibility to content, whether on mobile devices or PCs, Ms. Meeker said.」

である。特に新規性のあるリストではないが、それだけに彼女の「90年代後半から言い続けてきたことが、やっと正しかったことがこれから証明されるはずだ」という宣言に聞こえないでもない。

こんな文脈で、冒頭にご紹介した、渡辺さんとデジモノのエントリーをお読みになると面白いかと思う。

Mary Meekerの登場が僕に与えた影響

さて実は、Mary Meekerという人は、僕にとってはとても印象深い人なのである。

彼女を初めて見たのは、1996年3月に開催された「PC Forum」というコンファレンスにおいてであった。「PC Forum」については、本欄3月22日「僕も参考にしたEDVentureをCNETが買収」で少し書いたけれど、Esther Dysonが主催するIT産業・会員制高級倶楽部の集会みたいなものである。

1996年3月という時期は微妙な時期で、確かに既にNetscapeは公開していたし、Amazon、Yahoo、eBayは創業されていたけれど、インターネットブームにはまだ至らず、まさに前夜の熱狂という感じの時期だった。

このときの「PC Forum」で、Mary Meekerは、Esther Dysonの導きもあって華々しくデビューし、一躍スターアナリストへの道を歩み始めたのだ。

年齢的にも同世代の彼女のプレゼンテーションを会場で見ていた僕は、「あー、やられたな」と思った。Morgan Stanleyの組織力を使って、ものすごくよくまとまった膨大な資料を提示しながら、彼女は、インターネット到来による「富の創造」を高らかに歌い上げていた。

僕はまだ当時、大手コンサルティング会社に勤めていたのだが、彼女のプレゼンテーションを見て、インターネット産業に関して、これからは間違いなく投資銀行や証券会社が膨大な情報を顧客に無償提供する時代に入ることを予感した。競争の場とやり方をぐっと変えてサバイバルしなければならんな、日米の情報格差をてこにしたコンサルティング事業はもう終焉させなければだめだな。小さな方向転換ではあるが、そんなことを強く思った。その発見は、大手の高コスト構造下でコンサルティングの仕事をするのではなく、コスト構造をうんと安くして少し違ったサービスを志向するという新戦略につながり、1年後の独立に至った。

大組織とバブル

でもそのあと、Morgan Stanleyの組織の階段を登りつめるとともにネット企業の可能性を煽り続けていくMary Meekerを見ていて、ブームが頂点に向かって行くときに大組織から離れていてよかったなぁ、と僕は安堵の気持ちを持った。

組織で重要なポジションに居て展開する論理と、自分が心から信ずることができる意見というのは、彼女の場合だってどこかのタイミングで齟齬をきたしていたに違いないと思う。けれどフル回転して儲かっている組織を止めることはもうできなかったのだろう。自分の誤りに誰よりも先に気づいても、大組織に居てはそれを是正することは著しく困難だ。まぁ、それが彼女の莫大な年収の代償だったわけであるけれど。

さて私事になるが、実は10月末にオフィスの引越しをして、溜まっていた膨大な資料をだいぶ整理したのだが、そのおかげで、1996年3月の「PC Forum」の議事録がいま手元にある。若かりし頃のMary Meekerが、96年3月のデビュー時に何を話したのか。ネット上の情報ではないが、この議事録を明日は紐解いてみることにしよう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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