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YahooのM&A戦略への転換と交渉の舞台裏

2004/10/07 09:10
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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火曜日の「Amazon、Yahoo!、eBayと楽天は何が違うのか」にKAI-REPORTよりトラックバック「Googleの本質」をいただいた。

「Googleの技術の本質は、「ブラウザ+HTML+アプリケーションサーバー+データベースサーバー+ファイルシステム」の後に既存のOS(オペレーティングシステム)を位置づけたことにあります。この中の「+」で表現している部分がネットワーク(通信)になりますが、ネットワークスピードは技術の市場原理で黙っていても速くなります。従って、これらのエレメント技術を自社で握ってさえいれば放っておいても自社技術のトータルのパフォーマンスが向上していくのです。更に、ハードウェアにおいてさえ著しくファームウェアと言うソフトウェアに依存するRAIDを捨て、コモディティ化したハードディスクしか採用していません。

(中略)

つまり、Googleの技術をサーチの技術と見なすと本質を見誤ると言うことです。

この技術があるからこそレイヤーを「縦に切る」ことができるのです。

(中略)

最終的にYahooがこの認識でいるのかどうかはまだ疑わしいところがありますが、この観点から見ると自ずと生き残るネット企業がどこか分かるような気がします。」

ぜひ全文をお読みいただきたいと思う。

YahooのCEO交代と戦略転換

さて、今日のテーマは、Yahooの買収戦略への転換とそれを率いるCEOについてである。火曜日に、

「だからこそGoogleに破壊される可能性が最も高いYahooが、最も強い危機感を抱いて、数千億円規模の投資をしてサーチエンジンの会社を買い集め、Googleと同じようなコスト構想を実現できるバックエンドのシステムの構築に乗り出したわけだ。」

と書いたわけだが、この件については、「Yahooが検索エンジンを自社開発した理由」もあわせてご参照ください。

今日の英語原文は、HBS Working Knowledge「Yahoo CEO Describes Art of the Deal」である。Yahooに現在のCEO、Terry Semelがやってきたのは2001年5月。

買収攻勢がYahooを活気づけた

バブルが崩壊した直後であった。このHBSの記事は、Semelがハーバードで9月に講演した内容がベースになっている。ちなみに、Semelは今、ディズニーのCEO候補の1人とも噂されている。Yahooのオフィシャルな経歴書にはSemelの達成について

「He has led a successful transition of the Company by identifying and pursuing new opportunities within Yahoo!'s two core businesses, marketing services and consumer services. He has also assembled a talented executive team that has overseen the continued growth of Yahoo!'s global user base, a turnaround in Yahoo!'s marketing services offerings, and introduced new revenue opportunities, including sponsored search, listings and services bundled with high-speed Internet access.」

こう総花的に書かれているのに対して、ハーバードでの講演で彼は、

「The fuel for Yahoo since he arrived, he said, has been acquisitions.」

買収が、Yahooの燃料であったと語り、OvertureとInktomi買収の裏話をしている。

YahooがInktomiを買収したのが2002年12月、Overtureを買収したのは2003年7月であるが、「Yahooが検索エンジンを自社開発した理由」で、YSTのVish Makhijaniが

「2001年の秋にYahooがOvertureを試験的に導入しました。私の考えでは、Yahooはこの時サーチエンジンに大きなビジネスチャンスがあることを実感し、これが一連の戦略転換につながったのだと思います。」

と語っているように、Semelがやってきてまもなく、Yahooが、Googleへのサーチエンジンアウトソース戦略を見直し、買収戦略に転換した。ちなみにVishは当時、Inktomi側でこの買収交渉に関わっていた人である。

さて、「Yahoo CEO Describes Art of the Deal」では、Overture買収の経緯と、Inktomi買収の経緯の違い、それに基づく交渉スタイルの違い、Semelの買収交渉のやり方などが語られていて面白い。興味のある方は原文をどうぞ。

Yahoo - Inktomi買収の価格交渉

中でも面白かったのは、次の部分。Inktomi買収時、つまり2002年の段階で、しかも買収金額が小ぶりだったこのディールについては、時間をかけると買収金額が競争によってつりあがっていく可能性が高かったので、一気に交渉をまとめた。それに対して、Overture買収時、つまり2003年の段階での大型買収は、お互いに組み合わせが他にありえないという状況だったので、買収側がじっくりと時間をかけて意志を通したという話である。

「Slow and steady is not the only way to go, however. Another Semel deal, this one for search technology provider Inktomi, demonstrated the importance of speed and timing.」

という文章にそれが集約されている。Overture買収交渉は「Slow and steady」に行われ、Inktomi買収は「speed and timing」勝負の交渉が行われたわけだ。

中でもInktomiのディール交渉についての裏話は臨場感があって面白い。Yahoo側は$140mil、inktomi側は$170milという買収金額を主張していた。

「"[Then] I did something I had never done before," he said. "I said to their chairman, 'Could we get everyone out of the room and meet alone—with no lawyers, no investment bankers, no other executives?'"

"I said, 'You want 170. We want to pay 140. We could spend the next month [on this] and you're going to probably go from your 170 to 160, and I'm probably going to go from my 140 to 150. And then we'll spend another month figuring out that the price should be 155, 154, or 156. Now if you don't mind—it's starting to leak to the press and there's a lot of pressure on us both—do you want to just make a deal as we sit here? Let's agree on 156.'"

The two chairmen settled on $155 million and signed.」

結局は、「足して2で割った」$155milに落ち着くわけだが、そういう日本的な「真ん中に落とす」というときに、どういう話し合いが実際に行われたか、という意味で面白い。Semelは、InktomiのChairmanと1対1で、ロイヤーも投資銀行も他の経営幹部も入れずに会う。何カ月かかけても結局は、2つの数字がゆっくりと歩み寄って、大騒ぎの挙句に、中央値である$155milよりも$1mil多いか少ないかくらいのところにたどりつくのだから、今サインしようぜ、という当たり前の話なのだが、こういう英語は覚えておくと便利だ。

セメルはベテランディールメーカー

「Terry S. Semel loves to negotiate. "It's a science or a game," says the veteran dealmaker who is Yahoo's chairman and CEO. "If you play it right, you should win more often than not."」

こう自分でも語っているように、Semelは交渉を愛する人だ。

「Negotiation has been a constant in his own career. Born in Brooklyn and trained as an accountant, Semel came to Warner Bros. as a lowly sales trainee in 1965 and, after a stint at Buena Vista, worked his way up to Co-CEO (with Bob Daly). Together they led Warner Bros. from $1 billion in revenue to $11 billion and produced such hits as The Matrix.」

これがSemelのバックグラウンドである。ベンチャーも、成長過程でぶつかる経営課題の種類によって、違ったスキルと違ったリーダーシップが必要になる。若いベンチャー創業者と創業時からの経営チームだけでは万能ではないので、こうした全く違う経験・スキルを持ったCEOがある一時期大きな役割を果たすのが、シリコンバレーのルールである。うまくいくこともあれば、うまくいかないこともある。それは言うまでもないことではあるけれど。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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