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「会社を作ってすぐ売るプロジェクト」

2004/09/30 09:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ベンチャーキャピタルのほうの仕事で、最近、面白い案件にぶつかった。

会社の規模は15名。でも創業者のインド人2人を除いた13人は、ニューデリーにいるエンジニアたち。13人の平均年収は7000ドルから8000ドル。シェアウェアではないけれどシェアウェアっぽいプライシングで、かなりたくさんのユーザがいて、年商が60万ドルくらいになっている。ソフトウェアのできは結構よかった。ちょっとした賞をもらったりもしている。

でも典型的なスモールビジネスオーナーの感覚だなと思ったのは、彼らが「会社の経費が15万ドルくらいだ」と言うのを聞いたときだ。創業者2人は、自分たちの給料を経費と考えていないのだ。年商から経費を引いた残がオーナーの収入となる、というのはスモールビジネスの発想だ。

スモールビジネスからベンチャーへの転換

むろん彼ら自身も、ここまではスモールビジネスでやってきたのをよく理解している。でもここからは、これまで作ってきたアセットをベースにベンチャービジネスに変身して、成長を希求したいと考えて、ベンチャーキャピタルを回り始めたというわけだ。

彼らのプランは、「このソフトウェア資産をもとにエンタープライズソフトベンダーになりたい」という構想から考えられたものであった。だから販売チャネル構築に云々かんぬんという話も含めて、これから成長していくための資金が1000万ドル以上は必要で、最初に集める300万ドルで何をしたい・・・、といった感じのストーリーになっていた。

僕はこの計画には乗れないなと思ったのだが、話を聞きながら、僕が彼らだったとしたら今何を目指すだろうか、と真剣に考えてみた。僕の結論は、「もっと少額の投資(たとえば100万ドル程度)を受けて、12カ月から18カ月で会社をどこかに売却する。売却金額は1000万ドル以下でもいい。うまくいけば2桁のミリオン、つまり数十億円の下のほう」という狙いだ。

Cheap Revolutionの流れに乗る

本連載でも繰り返し議論しているIT産業における大きなトレンドは、Forbesのカールガード氏が言うところの「Cheap Revolution」である。この会社も、その「Cheap Revolution」を地で行っている。インド人である利を活かして、ちょっとしたソフトウェアをおそろしく低コストで作る能力を持っている。ただ「これからVC資金を調達してエンタープライズ市場へ」となると、「Cheap Revolutionからは程遠い」販売・営業というリアルワールドの高コスト構造を抱え込んで、高い価格のソフトウェアに仕上げてエンタープライズに売る、という全く別種の挑戦が待っており、彼らにそれを執行しきれるとは僕には思えなかったのだ。

逆に「Cheap Revolution」を突き詰めていって、事業や売却額が小さくてもいいからexitを目指す。そのために必要な最小限のカネを調達するというふうに発想を変えてみたらどうだろう。そんな新しい発想でプランを考え直してみたらいい、と僕は意見を述べたのだった。

安く会社を作って売り抜ける

さてBusiness 2.0という雑誌は、残念ながら日本からはオンライン定期購読しにくいらしく、これからご紹介する長文記事もその1ページ目しか読めないようだが、「The New Road to Riches」という記事がある。

「How to get ahead in the postbubble world: Build a company cheap. Flip It fast. Repeat.」

ポストバブルワールドで成功するには、あんまりカネをかけずに会社を作り、それを迅速に売り抜けろ、そしてそれを繰り返せ。というのがこの記事のテーマだ。

この記事の1ページ目で紹介されているOddPostという会社は、冒頭でお話ししたスモールビジネスオーナーが手本にすべきビジネスモデルだと思った。

「So they set about trying to create something that did interest them: a new Web-based e-mail service that would look and feel like a mainstay desktop program such as Microsoft (MSFT) Outlook Express. They didn't really think it could lead to much; they just wanted to make their e-mail work better. "We didn't see it as a great business idea at all," Diamond recalls.」

自分たちが面白いと思ったもの、OddPostの場合は「a new Web-based e-mail service」であった。大きなビジネスになる気は全くしないけれど作った。

「But that began to change when, after months of hard-core coding, they came up with a Web-based app that not only mimicked Outlook but in some ways improved upon it. Friends, mostly coders, raved about it. Eventually, popular blogger Dave Winer put up a link to the program on his website. Within hours the app got so many hits that the battered PC that Diamond and Lamb were using as a server crashed. "We realized this could be a real business," says Diamond, who's now 33. They formed a company and called it Oddpost. 」

でもできてみたら案外評判がよく、有名なBloggerに取り上げられて、世の中にどんどん認知されていったので、きちんと会社組織にした。

「Eventually database giant Oracle licensed the software, and in July the big payday came: Yahoo bought Oddpost, by then grown to a whopping 11 employees, for $29 million. That's almost $2 million for each of the roughly 15 months Oddpost existed as a real company. Oddpost's total investment capital -- from Diamond, Lamb, Schneider, and others -- was just over $2 million.」

それで結局、少額の投資を誰かから受けたのだろう、そのカネで11人にまで従業員を増やしたところで、ヤフーが2900万ドルで買収。創業から15カ月だったので、1カ月あたり200万ドルという計算になる。

OddPostの詳細については、Loosely Coupled weblogの「Why Yahoo! bought Oddpost」が詳しいので、興味のある方は、そちらをご参照ください。

最初から売却を狙った製品開発

Business 2.0記事1ページ目の最後はこう締めくくられている。

「Oddpost is part of an emerging breed of here-today, bought-tomorrow startups that are sprouting with minimal funding, flowering briefly, and being gobbled up by far bigger companies. In many instances, these built-to-flip outfits forgo -- or sometimes can't get -- money from venture capitalists. They instead create shoestring operations focused on the rapid development of narrow technologies to plug gaps in existing product lines or add useful features to existing products. Then they look to a deep-pocketed patron to scoop them up.」

こういう会社を「here-today, bought-tomorrow startups」とか、「built-to-flip outfits」とこの記事では呼んでいるが、ベンチャーキャピタルからの投資をなしですませて、あまりカネをかけずに、狭い技術領域で迅速な開発を進める。既存製品ラインの隙間を埋めたり、既存製品にとっての便利な新機能を作ることに特化する。それで大企業に買ってもらう。それが狙いだ。

この「built-to-flip outfits」、つまりは「会社を作ってすぐ売るプロジェクト」は間違いなく「Cheap Revolution」時代のひとつの選択肢になるだろう。

日本でも、ソフトバンク、ヤフー、楽天、ライブドア、GMOといったネットプラットフォーム新勢力は、買収によって異質なものを取り込むのを厭う気持ちが、エスタブリッシュメント企業に比べて少なく、小さな買収には積極的だ。よって、その部分に限っては日米の違いはあまり際立たず、同じような可能性が日本でも開いているのだと言えよう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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