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    ベンチャービジネスとスモールビジネスの大きな違い

    2004-09-24 10:00:00

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    umeda

    シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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    9月10日の「ネットスケープから10年 - 頑固一徹のCraigslist」でご紹介したCraig Newmark。彼の生き方、彼のスタイルを題材に、今日はスモールビジネスについて考えてみたいと思う。

    [N]ネタフルからトラックバックをいただいた。その中で、

    「恐らく最初は一人で始めたであろうサービスが、徐々にスタッフが増え、ついにはきちんと売上、利益を出すまでに成長していきつつも、その小ささを守り通しているというのは凄いことだと思います。きっと、いろいろな誘惑があったんだと思いますが。小さいのが良いのか、大きいのが良いのか分かりませんが、自分のスタンスを崩さずに、コツコツと続けているところが凄いことなんだと思います。」

    成長を求めずコツコツと同じことを続ける

    と書かれているが、このコツコツとした10年の推移は、Craig Newmarkにとってとても自然なことだったのかもしれないと思う。インターネットがブームを引き起こした年に起業し、事業がネット事業だということもあるので、どうしても「AmazonやeBayのようになったかもしれない可能性」と比較して考えてしまいがちだが、Craigをベンチャー経営者ではなくてスモールビジネス・オーナーだと考えれば、彼がやってきたことはごくごく自然なことといえる。

    9月13日にBoston Blobe紙のBoston.comに、Craigslistのボストンのサイトについて「For Craigslist, city was just the ticket」という記事が出たが、その中には、

    「Craigslist has never accepted outside investment, and Buckmaster says, ''The company has never had an exit strategy.」

    と書かれている。外部からの投資も受けず、exit strategyなど考えたことがない会社。

    僕自身、MUSE Associatesというスモールビジネスのオーナーだから、その感覚はものすごくよくわかる。投資も受けていないしexitも全く考えたことがない。「こうすれば成長できるかもしれない機会」という程度の可能性は、スモールビジネス・オーナーにとってそれほど重要な要素ではないのだ。

    MUSEは創業してから早くも7年半が経過しようとしているが、その間、売上高の成長ということはほとんど眼中になかった。それは創業して2年ほどたってふと落ち着いたとき、本当に自分はこの会社を成長させたいのかどうか、ということを真剣に考え、ノーという結論に達し、以来、成長を希求していないからである。

    事業の成長機会をどうとらえるか

    僕が創業以来やっている仕事というのは、シリコンバレーに拠点を置いて「企業の成長構造に関わる」経験や考え方を磨いて(A)、日本のIT企業を顧客に(B)、コンサルティング・フィーを収入源とする(C)というモデル。成長を考えるために、この(A)(B)(C)の三軸をどう変化させるとどういう成長機会が生まれ、自分が追求可能な領域、追及したい領域はどこにあるのか、ということを当時かなり真剣に考えた。

    (A)の軸での新機会としては、たとえばイスラエルと中国への拠点展開があり得たし、違うタイプの経営スキルを磨く道もあった。(B)の軸としては、顧客を韓国、台湾の企業へとはすぐに展開できそうだったし、さらに地域的に南米と欧州に広げていく可能性と、大企業を顧客にするのではなくて、シリコンバレーのベンチャーサイドから仕事を取る、という可能性があった。(C)の軸はビジネスモデルの軸だが、コンサルティング・フィーではなくて、M&Aなどに関わって成功報酬型のフィーを取る仕事の仕方、さらにはベンチャー企業の株式で報酬を受け取るモデルへと展開することが可能だった。

    「あり得た」「可能性があった」「可能だった」という書き方をしたのは、そのいずれの軸においても、自分の経験に鑑みて、「やろうと思えばできた」展開だったからである。むろん成功したかどうかはわからないけれど、成長したいと心から思えば、追求可能な軸はいろいろとあった。また、(A)(B)(C)の三次元マトリックスで可能性空間を描けば、自分がその時点でフォーカスしていた領域が、可能性空間全体の中でいかに小さいものなのかも実感できた。一緒に何か大きな仕事をやってみてもいいかなと思えるような信頼すべき仲間もいないわけではなかった。ただ、そういう組み合わせをいろいろと考えていくのは面白かったけど、そのexecutionが、自分にはどうもぴんと来なかったのだ。

    その3つの軸について、どの2つを固定して残る1軸を1つ新しくしても、成功のための条件と、自分自身の日々の生活における時間の流れ方が大きく変化する。人もたくさん雇って、昔勤めていた会社のように組織で仕事をしなければならなくなる。必要ならばカネもどこかから引っ張ってこなければならないかもしれない。

    結局、この3軸を使ってあれこれと考えた結果、「小さくても、自分が最も得意とすること、自分が楽しんで仕事ができて、長続きできそうなところ」にフォーカスしていこうと決め、そこをただ深く深く掘っていくことにした。それは、僕の内部に、「成長を希求しない真のスモールビジネス・オーナー」が誕生したときだったと言えるのだが、当時の僕にはとても自然な判断だった。振り返れば、「真剣に悩んだ」というよりも、自分のスモールビジネス性向を確認するプロセスだったような気もする。また、その判断があまりにも自然すぎたために、なるほど自分は「ベンチャー経営者の器ではないのだな」と痛感したのをよく覚えている。

    成長しない会社が若者を雇用する危険

    ただ、この「成長を希求しない」という決心をしたときに一つ肝に銘じたのは、「若い優秀な人をフルタイムで長期雇用するのはやめよう」ということだった。スモールビジネスというのは、オーナーにとってはいいが、社員にとってはそれほど面白みがない。急成長させての株式公開や企業売却がないなら、株を少しもらったって仕方ない。「成長を希求しない」とは言っても、オーナーには自由とそこそこの利益とクオリティ・オブ・ライフが残るが、社員はいつまでたってもただの社員だ。ちょっとのボーナスと「仕事がまぁまぁ面白い」というだけで、アンビシャスで優秀な若者の大切な時間を空費させるのは忍びない。オーナーが成長を希求しない会社が、ひょんなことで成長するなんてことは起こり得ない。よって、「いずれ会社を大きくしたいから・・・」というような「夢」という名の嘘をつくのも嫌だった。だからそれ以来、若い人をフルタイムで長期雇用せずとも会社を回していけるプロセスを作りこんでいった。

    というわけで、CraigslistのCraig Newmarkの「スモールビジネス・オーナー」としての生き方に、僕は深く共感する。しかしそれと同時に、この10年、Craigのまわりに居た人たちはどうだったかな、Craigが「ベンチャー経営者」ではなくて「スモールビジネス・オーナー」だと本当に理解して一緒に時を過してきたのかなと「余計なお世話」的心配が頭をよぎりもするのだ(Craigも、これからは気が変わって、成長を希求し、exitを目指していくのではないかなぁ、という予感もしないではないのだが、その予感については本稿のテーマではないので省略する)。

    スモールビジネスとベンチャービジネスは違う

    日本の人と話をすると、AmazonやeBay的な急成長メガベンチャーの世界よりも、職人的でコツコツしたCraigslist的なスモールビジネスの世界に共感する人が多い。たしかにスモールビジネスは素晴らしいと思う。僕も自分でやっているくらいだから、スモールビジネスが大好きである。事業がスモールビジネスであり続け、exitもせず、成長も希求しないこと自身に、何ら問題はない。

    唯一の問題は、スモールビジネス・オーナーが、自らをスモールビジネス・オーナーと自覚せずに、ベンチャー経営者だと勘違いして、ベンチャーの流儀で「夢」などを語って、人やカネを集めることだ。そして、当然の約束としてexitを期待した人から見て「リビング・デッド(生ける屍)」になっても、知らん顔をすることである。それじゃあ、間違ってカネを出した人と、間違って就職してしまった人が気の毒だ。そこを自戒しさえすれば、スモールビジネス万歳、なのである。

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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