オープンソースという開発方式はどういうタイプのソフトウェアに有効なのだろうか。
1990年代後半以来、この問いはオープンソースの発展を考える上でのKey Questionsの1つであり続け、今も答えは出ていない。
オープンソースは基本ソフト以外にも有効か
オープンソース開発方式の広がりに懐疑的な派は、Linuxなど大きな成功を収めるオープンソースプロジェクトの大半が基本ソフトに限定されることに注目し、オープンソースは基本ソフトないしはそれに限りなく近い基盤技術にのみ有効なものだと考える。一方、オープンソース開発方式を万能と考える派は、基本ソフトのみならず、順次ありとあらゆるタイプのソフトウェアでオープンソース開発方式が取り入れられると考える。それを考える上での具体的な手始めとして、「じゃあデータベースだったら、どうなんだよ?」という問いが、以前からよく発せられてきた。
Linuxが世界的に脚光を浴び始めた1998年頃から、こんな議論は活発に行われてきたのだが、1991年から始まっていたLinuxプロジェクトが既に7年経過していたのに対して、比較して考えるべきデータベースのオープンソースプロジェクトはLinuxに比べて熟成されていなかった。「これから5-6年経ってみないとわからないよ」なんて当時話していた人が多かったわけだが、早いものでその「5-6年」が経過しつつある。
年商20億円規模に来たMySQL
というわけで、今日はMySQLをめぐる2つの記事を、そんな観点から読んでみることにしよう。
1つはForbes誌「Cheapware」、もう1つはAlwaysOnの「Open Source: Is It Time to Sell Out?」である。
「Executives at Microsoft and Oracle dismiss MySQL as too puny to handle serious corporate projects. The Swedish company will likely gross $20 million in 2004; Oracle generates that much every 17 hours. "You don't want to use products from companies that perceive themselves as commodity suppliers to handle your data," says Robert Shimp, vice president of technology marketing at Oracle in Redwood Shores, Calif.」
MySQLの売上は、2004年現在で2000万ドル。そんな売上はオラクルならば17時間で上げてしまうよ、ということで、オラクル幹部の公式発言は、こんなふうにMySQLの存在など歯牙にもかけないという態度だ。
ちなみにMySQLのホームページから、同社のサマリーを引用するが、
「The company was founded in Sweden by two Swedes and a Finn: David Axmark, Allan Larsson and Michael "Monty" Widenius who have worked together since the 80's. MySQL AB is the sole owner of the MySQL server source code, the MySQL trademark and the mysql.com domain worldwide. The company is privately held and without debt, and it is financed by venture capital since July 2001.」
スウェーデンで起業されたベンチャーである。2001年7月にVCから資金調達をして既に3年が経過している。大オラクルからはゴミみたいな売上かもしれないが、ベンチャーから見れば「売上高$20mil」というのは立派なもので、まもなく公開が射程距離に入ってくるサイズだ。
ハイテク企業に支持されるMySQL
では、MySQLのアーリーアダプターは誰か。
「Some of the most enthusiastic users of MySQL's code are other high-tech companies. Cisco Systems installs MySQL in the routers it sells. Google and Yahoo use MySQL in their systems. Adobe Systems uses MySQL to manage software downloads from its Web site. PriceGrabber.com, an online comparison shopping site that handles 12 million visitors a month, runs entirely on MySQL and pays less than $10,000 a year for support. The same from Oracle would be $100,000 to $200,000, reckons Corey Ostman, PriceGrabber's chief technology officer. Lycos Europe last year moved its online dating system from Oracle to MySQL and slashed costs from $120,000 a year to $7,000. Now all of Lycos Europe is moving to MySQL, says Per Larsson, team manager in Lycos' technology division.」
Cisco、Google、Yahoo、Adobe、PriceGrabber.comといったハイテク企業の名前が出てくる。1998年のオープンソース勃興期からようやく「5-6年」が経過したところで、データベース分野でのオープンソースプロジェクトのインパクトが、こんな形で見えはじめているという状況である。
さて、Forbes誌記事の3ページ目に飛んでみてください。ここには雑誌に掲載された図が転載されているのだが、12のソフトウェア分野での商用ソフトのオープンソースとの競合状況が一覧されている。12分野とは、OS、Web Server、Database、Desktop Applications、Email、Application Server、File Sharing Protocol、Customer Management、IP Telephony、Photos・Graphics、Scripting Language、Spend Management。それぞれオープンソースプロジェクトの具体名も書かれているので、興味のある方は1つ1つ当たってみてください(この記事のタイトルは「Cheapware」で、ASPもオープンソースと並んで既存ソフトウェア産業に対してコスト競争を仕掛ける同種の存在としてとらえているので、表の中には一部ASPも含まれているのでご注意を)。
第2世代に入ったオープンソース
さて、もう1つの記事、「Open Source: Is It Time to Sell Out?」は、MySQL社CEO、Marten Mickosが書いた文章(または語った言葉)である。
「In the 1960s and 70s, all software was open source, so customers could customize for their exact needs. With the rise of packaged software, that trend waned in the 80s and 90s, but it has now re-emerged with the rise of Linux and the internet. These days, a broad range of open-source infrastructure software, tools, and applications is available.」
冒頭のこの表現は、オープンソースでない時代のほう、つまりソフトウェアがパッケージ化された時代(1980年代と90年代)のほうこそが、これからも続いていくソフトウェア産業の長い歴史の中での「特異な時期」だったのだ、という強気な表現だ。
「Corporate customers—having saved millions of dollars using Linux—are now embracing a broader open-source LAMP stack (Linux + Apache + MySQL + PHP, Perl, or Python), and they're foreseeing the next wave of commoditization.」
LAMP(Linux + Apache + MySQL + PHP, Perl, or Python)という言葉は、本欄でも、たしかTim O'Reillyの言葉の一部としてご紹介したことがあったと思う。Martenは、自らのMySQL社を、第2世代のオープンソース企業と称し、その特徴をこう解説する。
「Second generation open-source companies (such as Zend and MySQL) are experiencing healthy growth. They stand behind their open-source products with complete support offerings, product roadmaps, certified binaries, indemnification, training, and consulting.」
第2世代の企業群
そのあとにリストアップされている「第2世代のオープンソース企業」のカテゴリーに入る企業名は、
「Companies like Digium, OSAF (Mitch Kapor's latest company), MandrakeSoft, Sleepycat Software, Technical Pursuit, Trolltech, and others belong to this group.」
とある。Digiumは、同社ホームページに、
「Digium is the primary developer and sponsor of Asterisk™, The Open Source PBX. Digium offers a variety of specially designed low and high density telephony hardware and professional services related to Asterisk.」
とあるように、Forbes誌の表で「IP telephony」分野で取り上げられていたAsteriskプロジェクト。OSAFは、以前本欄でもご紹介したミッチ・ケイパーのチャンドラー。その他の企業についても、興味があれば、Googleで探して、内容を読んでみてください。
もちろん、「オープンソースという開発方式はどういうタイプのソフトウェアに有効なのだろうか。」という冒頭の問いにはまだ答が出ていないわけだが、オープンソース勃興の1998年から「5-6年」という歳月を経て、一部のアプリケーションも含め、オープンソース・プロジェクトの「点ではなく面としての拡がり」は顕著で、それを支えるビジネスモデルも進化を続けていることがよくわかる。
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『オープンソース・ビジネスとは、インターネットはじめ、TCP/IP、Linuxが社会にパーベイシブする上で、
より一層に、人類がイノベーション興すために必要な技術を、GPLに基づいて利益に供することなく、エンジニアが共働で開発する』、ことであると多くのひとが理解している。
ここで新たな疑問を提起したい。
『確かに、インターネットは企業社会のルールだけでなく、企業の文化そのものを変革するチカラがあるだろう。けれども、企業のIT投資におけるソフトウェア投資の比率が過剰な数値になり過ぎた背景がある。
仮に、“ここで一回、ソフトウェア業界の再編を考えて見よう”という暗黙の了解が、「オープンソース」という、目に見える姿になって、市場に登場しはじめたのではないだろうか』と。
これはあくまでも仮説であり、異論を唱えるひとも多いに違いない。だが、米国でソフトウェア・ビジネスに成功した企業には、マイクロソフト、オラクルをはじめ、その企業規模には圧倒される。
これが企業にとって、本当に利活用されたものであれば、
投資は納得行くものであっただろう。
確かに、ハードウェアの価格競争には目を見張るものがある。先日、秋葉原を歩いていると、98円のUSB対応キーボードや10枚 DVDで1000円、マイクロソフト製光学対応マウスが500円、自製PC(Celelon)が4万円、などなど。
これに対して、ソフトウェアを眺めて見ると、
マイクロソフト Windows2000は約15,000円、オフィス 15,000円。アドビー、Flash、翻訳ソフト、・・・など。
これらを眺めれば、ITインフラストラクチャーのポートフォリオに大きな偏りがあることが理解される。
ITはビジネスを推進するうえで、強力な武器になると考えている。それだけに、「オープンソースとは何か」を正確に理解することが大切ではないかと思われる。