最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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ネットで信頼に足る百科事典は作れるか

公開日時:
2004/09/13 10:02
著者:
umeda

Wikipediaは果たして信頼に足る情報ソースか。そんなテーマをめぐって、ここ1-2カ月、ネット上で真剣な論争が続いているようだ。

その論争の全体像を把握するには、Mark Glaserの「Collaborative Conundrum: Do Wikis Have a Place in the Newsroom?」を読むといい。

ちなみに、Wikipediaとは、

「Welcome to Wikipedia, an open-content encyclopedia in many languages. In this English edition, started in January 2001, we are working on 345253 articles.」

とそのホームページにあるように、2001年1月にスタートして3年半が経過した「open-content encyclopedia」を作るプロジェクト。ネット上の誰もが自由に編集に参加できるようになっている。どの項目に対してであれ、本当に自由に、誰でも加筆修正ができる。日本語版には、

「ウィキペディアへようこそ。ウィキペディアは自由にご利用頂ける百科事典です。現在、ウィキペディア日本語版には約71212本の記事があります。基本方針に賛同して頂けるなら、どなたでも記事を投稿したり編集したりすることが出来ます。」

とある。どういうことかを体感したければ、何の項目でもいい、自分が一家言ある項目に行って、書かれている内容を読み、その項目の内容をさらに充実させるべく、加筆修正を加えてみたらいい。

誰でも編集に参加できる百科事典

百科事典といえば、権威ある学者や専門家を集め、博識の編集者が指揮をとって作るのが常識。この常識を覆すいい加減さの「誰でも参加型の百科事典」Wikipediaは、実にインターネット的なプロジェクトだと言える。

Mark Glaser がその記事の中で紹介しているIBMワトソン研究所の「History Flow」は、

「Most documents are the product of continual evolution. An essay may undergo dozens of revisions; source code for a computer program may undergo thousands. And as online collaboration becomes increasingly common, we see more and more ever-evolving group-authored texts. This site is a preliminary report on a simple visual technique, history flow, that provides a clear view of complex records of contributions and collaboration.」

という動機から作られたシステムだが、このHistory Flowを使ってWikipediaの各項目がどんなふうに進化しているかを直感することができる。イスラム、イラク、愛、中絶、資本主義といった項目の説明内容が、時を経てどんなふうに進化してきたかをビジュアルに見ることができる。

さて、30数万項目からなるこんな百科事典が、日々ネット上で進化を続けているわけだ。ちなみに「エンサイクロペディア・ブリタニカ」の項目数は6万5000程度なのだというから、項目数では圧倒的に旧来の百科事典を凌駕している。

ではその内容は果たして「信頼」に足るものなのだろうか。何せ誰がいつ何を書いてもいいわけだから、間違いだって紛れ込むだろうし、意図的な情報操作だってしようと思えば自由にできる。

Wikipediaは信頼性

2カ前にボストン・グローブに書かれた「One great source -- if you can trust it」という記事が、Wikipediaの信頼性について疑義を呈したのだが、その記事の中でWikipediaのチェックシステムが、こう解説されている。

「Wales says the text is highly reliable. "If you compare our articles head to head against our competition -- Britannica, Encarta, and other encyclopedias -- I think they stand up very well." It would be good if some scholars randomly picked articles from Wikipedia and fact-checked them, but Wales admits that nobody's done this.

Instead, Wikipedia relies on the same approach used by open-source software developers, like the builders of the Linux operating system. Anybody can contribute, but a band of about 1,200 dedicated volunteers reviews the results. Every time someone adds a new article or changes an old one, the volunteers cull egregious errors, or delete false articles written by malicious vandals. The process usually happens within hours. "Everything is peer-reviewed in real time," Wales said.」

1200人のボランティア・レビューアーによる体制が現行のチェックシステムである。

さらに厳しく、Wikipediaは信頼に足らないものだから情報ソースとして使うべからず、と主張するのがAl Fasoldtの「Librarian: Don't use Wikipedia as source」という記事だ。冒頭でご紹介したMark Glaserの総括記事では、Al Fasoldtの主張をこう要約している。

「And the Syracuse (NY) Post-Standard's Al Fasoldt went further, reporting that a librarian said not to use Wikipedia as a trusted source. "I don't care whether a source of information is up to date if it's not accountable," Fasoldt told me via e-mail. "I don't think wikis can be used for any kind of source. If a source is not accountable, it must not be used. The responsibility of a journalist is to be accountable, and that means his or her sources must be reliable."」

その道の権威、大学教授、学者、大手新聞社の記者、大手出版社の編集者といったエスタブリッシュメント側からの「インターネット的」なるものへの典型的な批判と言えるだろう。

すぐになおる誤りとなおらない誤り

次に面白かったのは、こうした論争の最中に、「Wikipediaに誤りをわざと書き込んだら、ちゃんと修正されるだろうか」というテストの呼びかけがなされて、そのテストが各所で行われていたことだ。

「Techdirt's Mike Masnick called for a test case: Insert a few errors into Wikipedia and find out how long they would last without being edited. Alex Halavais, assistant professor at SUNY Buffalo's School of Informatics, inserted 13 provably incorrect entries into Wikipedia, and within a few hours, they were caught and fixed.」

1つの事例としては、13の誤りを書き込んだけれど、数時間のうちにすべてが見つけられて修正されたという事例だ。しかし一方で、

Another blogger, who writes Dispatches from the Frozen North, decided to add five erroneous changes to Wikipedia over the course of five days. Importantly, he only added details to less traveled entries, rather than major changes or new pages. None of his changes were caught by the sixth day, when he reverted all the changes back.

"I was disappointed that all my changes in Wikipedia went unchallenged," the pseudonymous blogger wrote. "Surely a week was plenty of time, especially since fresh changes tend to get more scrutiny than old ones. I have to conclude that it would be very easy for subtle mistakes to sneak into Wikipedia, and go a very long time without being corrected."」

あんまりトラフィックが多くない項目の細かいところに紛れ込ませた誤りは、5日間経過しても、全く気づかれず、修正もされなかったと言う。

信頼性の担保

さて、Wikipediaがこれからも進化を続けていく中、確かにもっとも重要なのが「信頼性の担保」なのであろうが、その方法にもやはり「インターネット的」なものが求められる。1つの試みとしては、eBayのようなコミュニティ参加者(書き込み者)の相互レーティングがある。

ただ、「そこそこ」を目指すのと「完璧」を目指すのは、方法論が違ってくる。果たして「インターネット的」なやり方で、「そこそこ」ではなく「完璧」が目指し得るのか。Wikipedia創設者のJimmy Walesは今、何を考えているのだろうか。

「Perhaps most importantly, Wales told me the Wikipedia Foundation was going to start fact-checking content on its own, in the hopes of creating a verified edition that will make all the disclaimers and responses to criticism obsolete. Wales' goal is to create a high-quality print encylopedia in every language that could be given away to everyone on the planet -- especially to poor people in developing contries.

"We are currently moving forward with the creation of a 'stable' version in which every article has been reviewed by a trusted reviewer," Wales said, "and so within a year, I will be able to remove the limited disclaimer, because Wikipedia will be the best encyclopedia in the world, without exception."」

彼は、Wikipediaを「a trusted reviewer」によってレビューさせてフリーズすることで、「a 'stable' version」(安定したバージョン)を用意することを考えているわけだ。「リアルタイムに進化させつつ、それ自身が完璧を期す」のは無理なので、ソフトウェアと同じように、一定周期で「安定したバージョン」を出しつつ、Wikipedia進化プロセスはそのままにしておき、再び機が熟したときに次のバージョンを出すということを繰り返していくのだろうと、Walesのこのコメントは示唆している。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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