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iPodをめぐるあれこれ

2004/08/30 09:52
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 村山尚武 Naotake Murayama
8月26日(木)〜9月3日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに村山尚武さんがゲストブロガーとして登板します。村山さんはシリコンバレーのあるベンチャー企業でBusiness DevelopmentのDirectorを務められており、ご自身でも「Sotto Voce」というBlogを運営されています。村山さんの経歴についてはこちらをご覧下さい。

先週木曜日に私も運営メンバーを勤めるJTPA(Japanese Technology Professionals Association)による第1回の日本でのセミナーが開催され、米国から講師として参加した梅田さん、Global Catalyst Partnersの大澤さん、そして日本代表の中村孝一郎さんを囲み、JTPAによる第1回シリコンバレーツアーの参加者によるサポートを得て、実に充実したディスカッションがなされたとのことである。いずれ梅田さんもこのセミナーについてはお書きになられると思うが、まずは第一回ツアー参加者でもある島田敏宏さんによるこちらの報告記事をご参照いただきたい。

「論文調」が続いたところで今日は、普段のブログのノリで先週金曜日に(ようやく)正式発表があったHewlett-PackardによるAppleのiPod発売をうけて、iPod関連の話をいくつか。

HPがiPodを発売する意味は?

「HPによるAppleのiPod」とはいささかややこしい呼び方だが、HPの直販サイトHPShopping.comにおいても、”Apple iPod from HP”と紹介されているので、これが正式名称であろう。しかも、裏面にHPのロゴが入った以外は、自分の持っているApple製のものと全く同じである。最初は「hPod」という名前になるのでは(冒頭の2文字も”HP”になるし)、青色になるのでは、Appleの音楽フォーマット以外にも対応するのでは、などという憶測もあったが、蓋を開けてみればHPがAppleにとっての流通チャネルの役割を果たしているに過ぎない。しかもiPod miniは売らないようである。

唯一の違いは、iPodの前面を飾るステッカーである”Printable Tatoos”というものが用意されていて、好きな絵柄を印刷して貼れる、という点である(将来的にはCDのアルバムアートの印刷もできるようにしたいそうである)。これはこちらの「iPodから直接印刷できるプリンター」と合わせて、HPとしてはプリンタービジネスとの相乗効果を狙った、と言う事もできるが、何だか苦しい話である。また、こんな付属品も開発しているそうだが、これこそニッチ製品ではないだろうか。

会社の同僚と話をしていて「機能もデザインも同じじゃ、『余計な』ロゴのついたHP製を買う人なんていないんじゃないか?」という結論に至ったが、「HPと組む事によりより広い流通経路へのアクセスができるので、販売量が増える」という意見も出ているようである。そうなると、Appleにとって一方的に都合の良い話であるがHPにとっての意義はなんであろう?

HPの意図はPCがコモディティー化し、差別化の余地が極めて限られている中「今最もホットなiPodに最も対応したPC」を売りにしよう、AppleからすればウィンドウズユーザーへのiPod普及を加速し、iPodとiTunes Music Storeの売上を伸ばそう、という意図がマッチした、というのが最も常識的な考えである。実際、iPodLoungeにあったこの記事によれば:

「But the differences, including new packaging, manuals, and a poster, are intended to make the iPod even easier for first-time digital music users to enjoy. "The user guide is very Windows-centric," said Mr. Ralph, "so we can talk to the Windows-based consumer.”」

Windowsユーザー、それもデジタルミュージック初心者を狙い、HP版iPodはWindowsユーザーを前面に出したスタートアップガイドやマニュアルを特別に用意したことに加え、

「HP has also introduced HPTunes, software compatible with Microsoft's Windows XP Media Center operating system "which lets iTunes music be played on the Media Center's extended interface," which Mr. Ralph explains was previously not possible.」

iTunes上の曲をWindows XPのメディアプレーヤーで再生できるようなHPTunes(「なんだかなあ」という名前であるが)なるソフトウェアを開発し、「Windows上での使いやすさ」を追求している。

しかし、どうもこの状況、HPがAppleに寄りかかっているように見えてしまう。直接関連はないが、こちらに紹介されている話では、HPが主催したグラフィックデザイナー向けの新プリンターのデザインコンンテストの商品としてMacを用意しているそうである。グラフィックデザイン界でのMacの支配的なシェアを考えれば当然だが、これまた「なんだかなあ」という話である。

Realとの喧嘩の背後に携帯あり

次は話を変えて、iTunes、そしてAppleのDRMの「ハッキング」を巡るApple対RealNetworksの「喧嘩」の背景には、携帯電話市場におけるAppleの思惑がある、というAlwaysOnに少し前に掲載された「The real reason Apple's mad about 'Harmony'」という記事のご紹介。

この「喧嘩」、Realが「Appleよ、iPodを他の音楽ファイル規格にも解放せよ」という陳情ウェブサイトFreedom of Music Choiceを開設したところ、Appleファンの猛攻撃にあったという、先週木曜日の「企業ブログ」の回におけるWarnerの失敗例とも一脈通じる一幕が最近あったばかりだが、この記事では、AppleがRealに対して猛反撃しているのは、同社が次の大市場として狙っている「携帯電話に音楽を売るプラットフォームを独占しようというAppleにとって、RealによるDRMのハッキングは脅威だからである」という主張がなされている。

「It's not about the music and the player. It's about a scheme afoot to monopolize music delivered to cell phones. Although the online music business is expected to grow to $1.7 billion by 2009, few people realize that the dopey cell phone ringtone market is already past that with $2.3 billion worldwide sales in 2003 according to the Yankee Group. And this is for an idiotic product -- a funny phone ring for your cell phone.」

上で「着メロ」市場でなく「本物の曲」の携帯電話における再生市場である、と断った上、「着メロという馬鹿げた製品」と書いているのは携帯電話上のコンテンツサービスの極めて遅れたアメリカ発の記事ゆえであろうが、「着メロ市場ですらこんな規模なのだから、ちゃんとした曲を再生する市場はもっと大きくなるであろう、という考えがうかがえるが、iPod+iTunesと電話の合体した世界、非常に魅力的なものであるのは事実だ。

携帯への音楽ダウンロードプラットフォーム

そして、この記事では、先日自分のブログで紹介したこの分野におけるAppleとMotorolaの提携は、携帯電話会社と組んだ「携帯への音楽ダウンロードプラットフォームの独占的開発」に向けた第一歩である、としている。

「Apple and Motorola are working on a deal to put iPod technology on Motorola cell phones. According to published reports, the hope is to create a cell phone/iPod sub-platform that can be licensed to other makers such as Nokia and Samsung. The idea is to develop a proprietary music delivery system with the phone carriers.」

そしてAppleのこの計画を邪魔するのは、この規格に穴をあけてしまうReal等による「ハック」の登場である、としている。

「This grand scheme only works if the platform is secure. You can't sell an iPod phone and lock in all this easy money if people can buy from just anyone or just use bootleg music, can you? So along comes the RealNetworks hack, which screws up this scheme. Suddenly the iPod looks a lot like any other MP3 player except for its good looks, and those go away when it's in the phone.」

Apple+Motorolaの設定した規格以外のものが再生できない携帯電話上の音楽プレーヤーであれば、その電話を買ったユーザーの音楽ユースを独占できるが、それが他社の規格も再生OK、となればそれはかなわない。しかも、他社の規格がiPod上で再生できるようになる、あるいはiTunesの音楽を他機種でも再生できるようになった瞬間に、iPodは「見栄えがいいだけの、普通のMP3プレーヤー」になってしまい、携帯電話にMP3プレーヤーが標準搭載されるようになればやがて駆逐されてしまうであろう、ということである。

全体的に穿ち過ぎの記事で、上の文章の「Suddenly…」以下は少し論旨が飛躍しているような気もするが、Appleの携帯電話市場への関与、というのはとても興味深い話である。前述の同僚との会話でも「自分はAppleがiPodと合体した(しかもAppleデザインの)電話を出したら、電話会社(キャリア)がどこであっても買ってしまうかもしれない」という発言まで出ている。まあこれは極論だが。

iPodで広がるAppleウイルス

ただ、冒頭で紹介したHPの話にとも考え合わせると、HPに続いて、MotorolaまでもがiPodというトロイの木馬を足がかりに、Apple陣営に取り込まれてしまうのかもしれない、とまで考えさせられてしまう。

iPodの”Pod”が「さや」であると言う話を以前梅田さんとさせていただいたが、そういえば病気を伝播する(本来の意味での)「ウイルス」は、宿主の細胞を乗っ取るための遺伝物質(RNA)をタンパク質の「さや」がくるんだものである。してみると、iPodは他企業を宿主として「アップル病」を広めるための「ウイルス」という隠れた意味が込められているのだろうか?

…いやまさか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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