最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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中国での製造アウトソーシング -「Search Fund」その後

公開日時:
2004/08/27 09:34
著者:
umeda

[ゲスト] 村山尚武 Naotake Murayama
8月26日(木)〜9月3日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに村山尚武さんがゲストブロガーとして登板します。村山さんはシリコンバレーのあるベンチャー企業でBusiness DevelopmentのDirectorを務められており、ご自身でも「Sotto Voce」というBlogを運営されています。村山さんの経歴についてはこちらをご覧下さい。

昨日のエントリで「ブログ界で起きている情報伝播・知見形成を把握するためのツール」の提供者として名前を挙げたTechnoratiであるが、Om Malikによれば、今週始めに650万ドルの資金調達を大手VCのDraper Fisher Jurvetson等から調達した、とのこと。このエントリでは、次はRSS関連の企業(FeedsterBloglines)への投資だろう、という予言をしているが、この分野、ソーシャルネットワークに続く分野として多くのVCの注目を浴びているようである。

「Search Fund」その後

さて、今日は毛色を変えて、2月のゲストブログで取り上げたところ数多くの方から「新鮮で、面白かったかった」という感想を頂いた、「Search Fund」という起業手法をとった友人の話の後日談(元のエントリは本年2月6日、「事業アイディアを探すための『Search Fund』という手法」)。この友人、2月の時点では上のエントリの最後に書いた通り、事業アイディアを模索するための手段として行った「Inc. 500リストにある企業のうち100件の経営者と面談する」という活動の過程で出会った起業家と意気投合し、その起業家の持っていた新事業のアイディアを実現するパートナーとなり、起業準備を進めている段階であった。

それからどうしているのかな、と思いつつこちらも忙しさにかまけていたところ、7月の頭になって、彼から「社名も決まり、いよいよ9月から事業開始となりました」という旨のメールが送られて来た。

「Our company, China Global, LLC, will officially launch in September of 2004. Our purpose is to do manufacturing outsourcing for small and medium sized companies in China. If you get a chance, please check out our website, http://www.gochinaglobal.com/.」

それは早速話を聞かねば、ということで、すぐ返事を書き、パロアルトの中華料理屋で昼食を一緒に摂ることとなった。

中小企業向け中国製造アウトソーシング

そこで聞いた話によれば、友人の会社の事業内容は上のメールの引用文にあるように「(米国の)中小企業による中国での製造アウトソーシングを一括受託する」というものである。中国に工場を作る事はおろか、現地企業と直接取引し、製造プロセスのマネジメントや米国までの輸送ロジスティクスを行うノウハウもリソースも無い中規模以下で、しかも中国の安い労賃の恩恵を受けられるような労働集約度の比較的高い製品を作っているような企業が、友人の会社に作って欲しい製品のスペックを渡し、そこから先は最終製品を受け取るところまで全てお任せ、という流れである。

このアイディア、上述した友人の共同経営者が、自分の経営する美容院・ネイルサロン向け製品の会社で、製造をかなり早い時期から全て中国に移す事により価格競争力をつけて時事業を大成功させたという自らの成功体験を元に考えていたものである。ただ、自分は本業の会社経営もあるのでフルタイムで起業はできないな、と考えていたところに私の友人が訪れ、互いにアイディア交換をする中で「一緒にやろう」ということになったのである。創業チームは私の友人と、発案者・出資者の起業家氏(顧客獲得も、彼の持つ製造業系の中小企業の起業家の間の広いネットワークを活用する)、そして実際の製造を受け持つ中国の工場ネットワークのオーナーの3人である。

と、ここまで昼食を摂りながら、事業内容や創業体制の話をしていたのだが、そこでふと湧いたのが「アイディアとお金と顧客へのアクセスの持ち主と、中国に工場を持っている人がいるとすれば、友人の役割=このベンチャーに持ち寄る価値はなんだろう?」という疑念であった。

さすがにそうは思ってもその通りには聞けないので、「彼(起業家氏)は君のどこを見込んだんだと思う?」という訊き方をしたのだが、彼も勘の良い人なので「中国を基盤にしたビジネスをするのに、スタンフォードMBAでしかも中国系アメリカ人という会社の対外的な『看板』が欲しかったんじゃないかな、彼はアジア系でもなんでもないし、しかも叩き上げの経営者タイプだから」とまず冗談を言ってから、「彼は本質的にはセールスマンで交渉屋なので、China Globalを大きな企業に育てたい、と思ったときに起業家精神を持ちながらも、きちんと組織を作り、運営できる人が欲しかったんだと思う」という発言をした。(なお、上記は元の会話のエッセンスをサマライズしているので、一言一句違わぬ引用ではないことをここでお断りしたい)

きちんと組織を作り、運営できる人

この「きちんと組織を作り、運営できる人」、こう書いてしまうと簡単にすぎるので、自分の個人的経験と照らし合わせつつちょっと補足しよう。これは官僚的あるいは教科書的な組織・経営プロセスを策定し、運営するという意味ではなく、「目的を設定し、実現のために必要なタスクは何で、それぞれいつまでに達成しなければいけないか、そしてその過程でどのような資源がどのくらい必要なのか」を考えることのできる人材、しかも各タスクの実行に追われながらも目的を達成した後に継続が必要なタスクは経営プロセスとしてどう定着させるか、そのために人をどう雇い、育てるかまでを並行的に考えられる人なのだと思う。こうした能力を「マネジメント」と呼ぶ(そして日本語では「管理」でなく「経営」と呼ぶ)のだと思うが、会社を個人の寄せ集めでなく、組織として長期的に運営しようと思うのであれば会社としては有していなければならない能力である。

2月のエントリでは「Search Fund」という仕組みは「技術や事業アイディアでなくまず個人の起業意欲と経営能力に投資を請うもの」であると説明すると共に、この友人が採った自己管理と目的設定・実行能力を紹介したが、私としては友人が見込まれたのはそういった「自己を律しつつ目的を達成する」能力が会社経営にも応用できると見込まれたのだと思う。最終的な起業形式としてはSearch Fundとは異なる形ではあったが、その形式を追求する中で「個人の起業意欲と経営能力」に投資を受けたので、本質的には同じ結果を達成した、と言っても良いであろう。

こういう話を聞くと、つくづく起業というのは事業の各となるテクノロジーやアイディアと同じ位、あるいはそれ以上に「人との出会い」というものが重要な世界だと思う。そして同時に、こういった「経営能力」が求められる職場・ポジションであればテクノロジー業界においても、「文系」人間にとって十分活躍の余地はあるのだと思う。

実力を鍛えるのはビジネススクールよりも実践

(彼の能力と自分の能力を同列に語るのもなんだが)この友人も私もビジネススクール出ではあるので、「こうした能力はビジネススクールで学び、磨かれた」と言えば美しいのだろうが、実際のところ、彼も私も、ビジネススクールで学んだのはマーケティング、ファイナンス、戦略論、組織論といった様々な機能的知識に過ぎず、この能力はビジネススクール以前のキャリアの中で得た成功・失敗体験をそれら様々な機能的・専門的知識の枠組みから見つめ直す(ケーススタディをやりながら「ああ、これは自分のあの時の状況に対応しているな、あのときはこう考えたけど、今度はどう考えよう」と何度思った事か)中で自分なりの問題解決スタイルの基礎を形成し、それを卒業後実社会で試し、試行錯誤しながら作り上げて行ったものだと思う。

さて、この昼食の後、この友人からChina Global社のビジネスプランを見せてもらいもし、いろいろフィードバックしたり、自分の知っている信頼できる業者を紹介したりしているうちに、「非公式にいろいろ相談に乗って欲しい」ということになり、今後定期的に(あくまでも友人として)進捗状況のレビューなどもすることになった。

ということなので、いずれまたこの友人、そしてChina Globalについては取り上げる機会もあると思う。

それではまた来週お目にかかりましょう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

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村山さん、シリコンバレーでのなまなましい、生きた情報をご提供頂き有難うございます。
日本企業は、バブル以後の『失われた10年』が、
徐々に『失われた12年』となり、その年数増を止めることの難しさを、多くの企業経営者はじめ、金融関係者も、
その真意とは、つまり、放っておけば復活するといったものではなく、日本の国家レベルにおける経済構造自体に、大きな転換を求められているのではないかと思われるからです。

前回、村山さんに、米国企業の戦略的ビジネス・ディシジョンにおけるマネジメント&マーケティング・スタッフのポジショニングと重要性に関しまして、ご助言をご丁寧に頂戴し有難うございました。

今回の中国アウトソーシングのお話もご指摘のとおりに、大企業だけでなくベンチャーにおいてさえも、
マネジメントが果たす役割は大きく、しかも、
そのスキルやナレッジは、プロフェッショナリズムが実践されるであろう個人に求められている点が注目されます。

これまで、日本の経営の原点とは、『和』や『調和』といったチームワークに基づいた意思決定プロセスに重点を置いてきたのではないでしょうか。
その基本は、ネゴシエーションや仲間意識によるシナジー創出など。ところが、金融・情報通信産業だけでなく、政治までもが不協和音を奏ではじめています。

つまり、経済レベルのPDCAサイクルの再考が急務になっていると予想されます。

この施策のひとつとして、村山さんがご指摘頂いたシリコンバレーイズム、すなわち、意思決定プロセスにおける『個人のプロフェッショナリズムを重視する』ではないかと実感しています。

もちろん、組織(企業・政治)においても、ヒューマン・リレーションは大切であり、最終的な結果は業績という数値で評価されます。当然、シナジー効果などが反映されうるオーガニゼーションとしてのハイ・パフォーマンスが、様々なステークホルダーから求められていると思われます。

しかし、『質』『量』『時間軸』で考えた場合に、
日本にとって一番プライオリティおくべきなのは、
個人的な見解となりますが、『時間軸』ではないでしょうか。

激しい変化にあって、早期にビジネス決定を実施することで、その後のビジネスプロセスへ到達が可能となり、
継続してPDCAサイクルを見直し、他社よりも早くマーケットに参入するという。
これにより、先行者利益を享受することが可能となり、
将来的にはブランディング構築へのマイルストン可能性をも秘めていると思われます。

シリコンバレーでは、個人のスキルレベルで、
『質』と『量』が豊富であると考えております。
今後も、生きた現場の情報を可能な範囲でご提供よろしくお願い致します。

  maki on 2004/08/29

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