最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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企業マーケティングにおけるブログの可能性

公開日時:
2004/08/26 09:21
著者:
umeda

[ゲスト] 村山尚武 Naotake Murayama
8月26日(木)〜9月3日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに村山尚武さんがゲストブロガーとして登板します。村山さんはシリコンバレーのあるベンチャー企業でBusiness DevelopmentのDirectorを務められており、ご自身でも「Sotto Voce」というBlogを運営されています。村山さんの経歴についてはこちらをご覧下さい。

前回のゲストブログから約7カ月が経過したが、その間IT業界、そしてブログ界で地味ながらも話題性を着実に高めたトピックとして、「企業によるブログの活用」というものがある。

このトピック、自分のブログでも頻出しており、また前回のゲストブログ時も企業ブログの元祖とも言えるMicrosoftのRobert Scobleの活躍を取り上げたが、それ以降、顧客やデベロッパーコミュニティといった自社の「市場」との双方向コミュニケーションツールとしてブログを使おう、といった企業がかなり増えているように見受けられる(ここでは便宜上「企業」という言葉を使うが、その中には政治団体や何がしかのメッセージを世の中に発信しようとする個人も含まれる)。

急速に拡大する個人の影響力を記録する

これはまだ自分の中でも発展中の考えなので、上手に、しかも水も漏らさぬロジックで語ることはまだできないが、こうした動きの背景には、「個人」が世の中に与えることのできる影響力がここ数年で飛躍的に拡大し、またそういった個人間の影響関係を把握し、マーケティングやプロパガンダに活用することが、「ブログ」というenablerの出現と急浸透により、日々容易になりつつあることがあると思う。

(ここでの「ブログ」というのは個々のブログや、ブログ書きツールや有料無料のホスティングサービス、そしてRSSフィードやリーダー、Technoratiのようなブログ間で話されている「話題」の把握を可能とするツール、といったものの総体だとお考えいただきたい)

個人が自分にとって関心のある情報について記録し、「どう思うか」を記す。それを読んで誰かがコメントをしたり、自分もブログを持っていればトラックバックをする。こうした行為が繰り返されることにより情報が伝播するのみならず、伝播の過程で「会話」が生じ、その中には一個人を越えて多くの人に共有される「意見」や「知恵」に進化していくものもある。これは何も今に始まったことではなく、またネットの世界に限ったことでもなく、リアル社会においては人間が言葉を持ち始めてからずっと行われてきたことだが、インターネット、そしてその上で「誰もが書ける」ブログは、このメカニズムをこれまでにない範囲(言語の壁さえなければ全世界)に広げ、しかもその過程を記録に残すことを可能にしているのである。

記録が残ると言うことは、情報の伝え手にとってはこのメカニズムの経路を把握し、誰が情報伝播・知見形成上のキーパーソンであるか、またそのメカニズムにどう積極的に関わり、自らにとって望ましい方向に導いていくのか、について考え、アクションを策定することの効率を飛躍的に高めるのである。

しかも、アフィリエイト制度やAdsenseの登場により、ブログという媒体による情報の書き手・伝え手に「早く書くこと」「面白いもの、役立つものを書くこと」に対する経済的なインセンティブが生じているため、このメカニズムの作用速度が早まるばかりでなく、規模の増大にも加速がついているように思える(その中には、掲示板などの閉鎖空間で行われていた情報伝播・知見形成がブログに移行する、というものも含まれるはずである)。

ただ、自分としては、ブログの拡大はこうした経済的動機のみならず、自分の日常の人間関係をはるかに凌駕する、それこそ面識もないような人々を含むネットワークにつながり、そこに何かを貢献するという喜び、という無形の動機もあるのではないか、と思ってはいるが…(自称「電池系」の人間ゆえの思いかもしれないが)。

こういったことを考えると、ブロガー人口の増大と並行して、企業がブログに注目し、あの手この手で活用しよう、という動きは実に自然に思える。

さて、今回のゲストブログではいつも自分のところで書いている感覚で行こう、と思っているので、「また肩に力入ってるね」というコメントを頂戴する前に、上記のような「大所高所」的議論は(今後の課題として)このへんでいったん置く事としたい。特に、企業によるブログ活用の「あの手この手」の中身については渡辺聡さんが先日お隣で紹介されていたので、そちらで今後どう展開するかに注目したい。

ブログマーケティングで失敗したワーナー

企業によるブログ活用の意義については現時点では上記に述べた通りであるが、今日の残りでは、その具体例、しかも失敗した話を取り上げたいと思う。

少し前の話であるが、New York Timesに「Warner's Tryst With Bloggers Hit Sour Note」という、大手レコードレーベルであるWarner Recordsがブログを新人アーチストのプロモーションに活用しようとして、逆効果に終わった、という記事(残念ながら既にアーカイブ入りしているので、無料閲覧できないが、nytimes.comから有料ダウンロードが可能)が掲載された。

「Earlier this month, Warner became the first major record label to ask MP3 blogs to play its music. The blogs -- which are relatively new but increasingly popular -- are personal Web sites that offer music criticism right next to the actual music, in the form of downloadable MP3 files.

Two weeks ago, at least eight MP3 bloggers received an e-mail message from Ian Cripps, a Warner employee. In the messages, which were identical and came with an MP3 file attached, Mr. Cripps told the bloggers that he loved their sites.」

事の起こりは、Warnerが大手レベールとしては始めて、個人運営のMP3ファイル紹介・批評ブログを利用してThe Secret Machinesという自社所属のインディーズバンドのプロモーションを行おうと考え、担当者がそれらのブログにメールとMP3ファイルを送りつけたことに始まる。

「The pitch to MP3 blogs was part of an ambitious online campaign that was the work of Robin Bechtel, vice president for new media at Warner Brothers and Reprise Records.(中略)

Ms. Bechtel said the sites chosen by Warner ''were promoting music responsibly'' by offering authorized downloads or linking to online stores. She said that despite their small audiences, MP3 blogs were a good way to build positive word-of-mouth.」

このアピール作戦、担当者の一存ではなく、Warnerの上層部の発案による「実験」であり、しかもブログというもの持つ「口コミ」効果を十分理解した上で、合法な音楽ダウンロードを行っているブログに向けてなされたものである。

ブロガー勧誘の失敗となりすましコメント

ところがこの作戦、対象のブロガー達からは好意的には受け止められなかった。

「Many of the blogs were ambivalent about Warner's request: they were flattered by the attention but concerned about compromising their principles, or appearing to do so. In the end, Music for Robots was the only blog to post the track after receiving it from Warner (two others had already posted Secret Machines tracks independently).」

結局、Music for Robotsというブログを除き、これらブログは、Warnerが自分達に注目した事は喜びこそすれ、読み手に「レコード会社の手先」と見られるのを恐れ、Warnerの要請を無視したのである。ここでWarnerも自分達がターゲットのブロガーコミュニティ内の「情報伝播・知見形成メカニズム」を見誤っていた事に気づけば良かったのだろうが、その後、とんでもない手段に訴えたのである。

「In the week after the song was posted on Music for Robots, a message board on the site attracted some thoughtful commentary on Warner's move. But a few comments, posted under several different names, stood out because they looked like something one might read on a teen-pop fan site.(中略)Another post, sprinkled with casual profanity, asserted that big corporations could still release good music, and cited the Beatles as an example.」

なんと、「このバンド、すげえ良い!」「大手レコード会社だって良い音楽売るんだぜ!」(注:この2つ、原文のニュアンスを伝えるために口語調の意訳)といった「若者なりすまし」による「自作自演」のコメントをいくつも書き込んだのである。お粗末にも、全て元のWarnerからのメールと同じIPアドレスからである。

こんなことをすれば、せっかくのアイディアも逆効果に終わるのは明らかである。

「''You can't just dive headfirst into a subculture and expect it to bend over backwards to cater to your lame attempt at free advertising,'' said Andrew Nosnitsky, a senior at George Washington University who writes about hip-hop on his blog at www.cocaineblunts.com.」

「タダで宣伝しようというセコいやり口に乗せられてたまるか!」というのがブロガー間でのほぼ一致した意見であったようである。

Warnerとしてはコメントを書いたのは元々の計画にはなく、自社内のバンドのファンが勢い余って書いたものだ、という苦しい言い訳をしているが、もはや何をか言わんや、という世界である。

本件、まだ帰結はしていないようだが、どうにもお粗末な話である。Warnerも、Scobleが(かなり以前に)著わした「The Corporate Weblogger’s Manifesto」を読んでいればこんなことはしなかったのではないだろうか?

「もって他山の石とすべし」という言葉が頭に浮かんだところで、今日はこのへんで。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

激しくショックです。

シークレットマシーンズ、好きで自分のブログで訳してみたりまでしたのに。

ワーナーはそんなアホなことまでしていたのですか。

結果的に僕は本家のブロガーと称される人々を自身で賞賛しつつ、泥を塗る行為をしてしまったということですね。

ほんとがっかりしました。自分にもそうだけど、ワーナーという企業に対しても。

  masayama8 on 2004/08/30

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