[ゲスト] 石黒邦宏 Kunihiro Ishiguro
8月4日(水)〜8月6日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに石黒邦宏さんがゲストブロガーとして登板します。梅田さんの更新は8月17日からになります。石黒さんの前回のゲストブログはこちら。
石黒さんのプロフィール:1993年銀行向け大規模開発プロジェクトのシステム管理者としてキャリアをスタート。1995年にISPへ転職、国内外のインターネットバックボーン構築に携わる。1996年ウェブシステム作成会社へ転職。同年フリーな経路制御ソフトウェアGNU Zebraの開発を開始。1997年、日本ネットワークオペレーターズグループJANOGの設立に関わり初代会長に就任。1999年シリコンバレーにIP Infusionを吉川欣也氏と共同設立、CTOとして技術面のマネージメントにあたっている。 |
去年末くらいに、インドのソフトウェア・アウトソース・サービスが、シリコンバレーのソフトウェアエンジニアの職を奪うのではないかという議論がされていたが、最近のシリコンバレーの風潮を見ると、既にインドのソフトウェア・アウトソース・サービスというファクターは完全に織り込み済みである。
ソフトウェア開発部門を持っているシリコンバレー企業で、インドにアウトソースしていないというと、「えっ、インド使ってないの?なんで?」と言われそうな雰囲気である。私たちも、インドのソフトウェア・アウトソース・サービスを使っていて、開発スケジュールを考える上でも、ここはインドにやってもらって、ここはコアのチームでと自然に考えるようになった。
コアではない部分の開発コストの削減
やはり、コスト削減ができるのは非常にありがたい。大体、人件費換算で、1人分のコストで3人分のリソースが手に入れられる計算になる。インドに飛ばすとなんと3倍になるわけだから、これはまぁ、こんなおいしい話はない。実際には管理のオーバーヘッドがあるので、3倍は無理で、2倍程度かなという印象を受けているインターフェースはもちろん英語だし、SEI-CMM のレベルも高く、毎週のレポートもきちんとしている。
おいしいことづくめだが、向き不向きというのはあって、当然、最先端のコア技術部分はシリコンバレーのシニアエンジニアがやらないと無理なので、その部分は出せない。コアじゃない部分の、それほど技術的には難しくないんだけれども、結構手間がかかるという部分。案外ソフトウェア開発にはそうした部分が多いので、そこはインドのアウトソースサービスにマッチする。管理は、インドにはインドというわけではないが、社内のインド人シニアエンジニアにやってもらい、きちんとマネージする。
でも確かにこうやっていくと、シリコンバレーにはシニアエンジニアだけが残ることになって、普通のエンジニアは育たなくなっちゃうかもなぁとは実感としてある。でも、そうなった時はそうなった時で、インドでシニアエンジニアが育っているだろうから、彼らにシリコンバレーに来てもらばいいだけかもしれない。なんにせよ、ソフトウェア開発の仕事がインドに流れるという、今の動きは止められないだろうから、もしかすると近い将来、ソフトウェアの技術を磨くには、まずインドに行けという時代がくるかもしれない。
仕事を出す側であるという強さ
さて、シリコンバレーの強さは、こうしたサービスの利用者側であり続けるところであると思う。もともと、ソフトウェア開発の効率性が重要なのではなく、これまでにないソフトウェアを開発することによる、巨大な付加価値がシリコンバレーの柱だからだ。とはいうもの、かつて製造業がアジアにシフトしたように、ソフトウェア開発の足廻りの部分がアジアにシフトするのは避けられないだろう。仕事を出す側であるという強さはあるものの、お金はシリコンバレー側が払うわけだ。巨大な付加価値を生み出すシステムが廻らなくなると、開発費用が払えなくなくなる。ソフトウェアエンジニアとしてはあまり面白くないけれども、ますますマーケティング能力が重要視されることになるだろう。
インドのアウトソースサービスを使い始める中国
インドと同じく中国もソフトウェア開発のアウトソース先として名前が上がっていたが、最近中国の企業と仕事をしていると、中国がインドのソフトウェア・アウトソース・サービスを使うケースが増えている。ついに中国がインドを使う時代が来たわけだ。コストはアメリカからインドに出すほどの違いはないけれど、それでもインドのほうが中国より安いので、大規模ソフトウェアプロジェクトの場合はスケールメリットもあって、コストが圧縮できるらしい。また物理的な距離も近いので、マネージャーなんかは中国から送りこんでしまう。現地で直接マネージメントするわけだ。
なかなか凄い時代になってきたなと思う。最近は週変わりで、いろんな国をまわっているわけだが、シリコンバレーのマーケティング、中国の製造業、インドのソフトウェア開発、そして日本の品質を、もしうまく組み合わせられれば、面白いものが作れるのじゃないかなぁと思う今日この頃である。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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4年ほど米国でソフトウェアの会社を経営してきましたが、インドにアウトソースする経営者の気持ちが分かります。米国のエンジニアの給料は90年代の終わりからインターネット・バブルにかけて急激に上がり、そのまま高止まりしています。少し経験のあるエンジニアなら7〜8万ドルの年収は当たり前、アーキテクチャーの作れるエンジニアは15万ドルは要求して来ます。
それに加えて、ストック・オプションなどで巨額の利益を得た優秀なエンジニアが若くして引退していくため、トップクラスにおいては、常に慢性の人手が続いています。
このままだと、プログラマーなどの知的職業もかなりの部分がインドや中国にどんどんとアウトソースされていくのは目に見えています。
そうは言っても、マーケティング、資金調達、ビジネスモデルなどはアメリカのエリートが引き続き握って行くので、ますます貧富の差が広がって行くという図式にはまっています。