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「Exectuion」よりも「innovation」にかけるサン

2004/08/03 09:08
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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昨日はSunからMotorolaに移ったEd Zanderと「Execution」(執行)の話をした。確かにIT産業は成熟化し、経営における「Execution」の重要性が増してきた。とりわけ不振企業にCEOとして乗り込んだZanderが、即効性を求めて「Execution」を強調するのは当然のことである。

しかし、IT産業が他産業と際立って違うのは、破壊的な技術の登場や産業構造変化やパラダイムシフトが定期的に起こり、そのたびに、CEOが、企業の命運を賭けた重要な判断をしなければならない点であろう。そしてその「大変化の兆し」はいつも小さく始まる。その小さな変化へのCEOの感応性が、何年か先に大きな差となって現れる。これがIT企業経営の醍醐味である。

Scott McNealyはSunを立て直せるか

今日はそんな観点から、Sunの現在を詳細にレポートしたBusinessWeek誌「Sun: A CEO's Last Stand , Scott McNealy knows he made many mistakes. Is it too late to recover?」を取り上げよう。サブタイトルにあるように、SunのCEO、Scott McNealyはたくさんの判断ミスを犯したけれど、Sunはこれからどうなるのだろう、そういうテーマの特集である。

Scottは、IT産業の経営が、常識的な「Execution」なんぞでできるわけがないという考え方の持ち主である。IT産業全体の変化の予兆を眺め、独自の判断を行う。そういうCEOである。だからその判断が正しければ他社を出し抜いて大きく成功を収めるし、裏目に出れば苦境に陥る。

「Consider 1995: All of Sun's competitors -- Hewlett-Packard (HPQ ), IBM (IBM ), and Digital Equipment Corp. -- were busy developing new servers to run the next version of Microsoft Corp.'s Windows software. Wall Street pundits begged McNealy to show some common sense and do the same. But he refused, instead cranking up his investment in Sun's own software, called Solaris. What happened next made McNealy look brilliant. Rivals couldn't match the speed, reliability, and security of Sun's servers. As the tech boom took off, Sun's boxes became the must-have gear for thousands of Internet startups and financial firms. Sales soared; profits exploded.」

これが、「1995年に下したScottの判断ゆえに90年代後半のSunの興隆があった」という関係を説明した部分である。

裏目に出たScottの眼力

Scottは自分の眼力に自信を持っていた。1995年の自分の判断ゆえにSunの大成功したのだという自負もあったろう。でもバブル崩壊時から現在に至るIT産業どん底期には、その自信が裏目に出た。

「Six years later, as the boom of the late 1990s came to a crashing end, Wall Street had more advice for McNealy: Batten down the hatches for the storm ahead; slash research; lay off staffers; and get serious about low-cost products. Once again, McNealy held his ground. But this time, he was dreadfully wrong. Sun's sales have tumbled 48% in the past three years, it has lost a third of its market share -- and it continues to head south even as its rivals ride the economic recovery. Its stock, which reached $64 in 2000, trades at about $4.」

「研究開発費を削減し、人を減らし、ローコスト製品に真剣になれ」などという凡庸なアドバイスに、彼は耳を貸さなかった。その結果、Sunの売上高は半減。他社が経済回復とともに復活しつつあるのに相変わらず低落傾向。株価はピーク時の64ドルから4ドルにまで下がってしまった。

「It's a classic management tragedy, and to a striking degree the responsibility lies with the 49-year-old McNealy. His greatest strengths -- the uncompromising determination, sharp-tongued irreverence, and unblushing idealism -- turned out to be critical flaws.」

Scottの偉大な強さは、譲歩しない固い決意であり、舌鋒鋭く不遜なところであり、しゃあしゃあと理想主義を貫いていくところであるが、ここ数年のSunは、そのすべてが裏目に出た「a classic management tragedy」だと、この記事は評する。Scottは、2000年以降のIT不況期にも、インターネットの成長性を信じて、強気の施策を改めなかった。そんな中で、Ed Zander、Bill Joyらがサンを去っていったわけである。

この時期、Scott以外のマネジメントチームは皆Scottに抵抗したが、Scottには「自分だけが正しかった」1980年代の成功体験が鮮やか過ぎたのかもしれない。この記事では、1980年代のSunのチップ戦略をそんな文脈で、こう参照している。

「In the 1980s, he overruled execs who were skittish about dropping Motorola Inc.'s microprocessors for chips developed by Sun -- a move that paid off in a big way. This time, as his team urged him to cut back, he felt the stakes were even higher. He was determined to fight off what he thought were short-term thinkers, particularly on Wall Street, so that Sun could be preserved as an innovative force.」

さて、そんなScottをSunの取締役会はサポートし、これからもScottがSunの舵取りを続けていくことが決まっている。

「Execution」ではなく「innovation」

Scottは、今度の苦境も、凡庸な「Execution」によって乗り切るのではなく、「disruptive innovation」、破壊的イノベーションによって乗り切るのだと宣言している。ゲームのルールを変えるのだと。

「While most rivals make plain-vanilla computers and slug it out on price, Sun's plan is to change the rules of the game. At the high end of the server market, Sun is developing "throughput computing" chips that can handle dozens of tasks at the same time. At the low end, Sun servers built around Advanced Micro Devices Inc.'s (AMD ) inexpensive chips will handle not only processing tasks but also the basic networking that rivals' boxes can't. And its pricing approach is something no server company has dared try before: It's planning to give away low-end servers to customers that agree to buy its software for several years. "We have a maverick strategy," says McNealy. "I think there's a huge opportunity right now."」

ハイエンド・サーバーは技術の粋を集めて高くて素晴らしいものを作って価格競争に陥らず、ローエンド・サーバーはソフトウェア事業と位置づけてハードは無償提供する。それがSunのマーベリック(異端的な、型破りの、一匹狼的)戦略だ。

常識的戦略論からはすぐに反論が出る。わかりやすい言い方では、この記事が書くように、GucciとWalmartの両方を同時に追求しようとしたって無理だよ、という言い方になるが、Scottは意に介さない。

果たしてSunはこの斬新な戦略で復活できるだろうか。顧客の一人はこう言う。

「"They've always had lots of great things on paper. But when it comes to execution, they're lacking," says Gary Feierstein, vice-president for information technology at Premier Inc., a San Diego company that manages 1,500 hospitals. "They always seem to be behind where they need to be."」

Sunは紙の上では素晴らしいことを言うが、Executionとなるとねぇ、というわけ。ここでも「Execution」がキーワードとして出てくる。

この長文記事は、本稿では省いた、Sunのこれまでの経緯が詳しく書かれているので、興味のある方は原文をどうぞ。記事の後半で、ScottとGatesとの歴史的和解の話も出てくる。JobsがAppleに戻ってまずやったのが、Microsoftとの大型資本・技術提携を結んだことだったのを思い出す。1954年11月13日生まれのScott、1955年2月24日生まれのJobs、1955年10月28日生まれのGates。まもなくそろって50歳になるこの3人の創業経営者は、同世代の戦友という強い連帯意識があるのだろう。

明日から石黒さんのゲストブログ

さて、明日からの3日間は、IP Infusion創業者兼CTOの石黒邦宏氏に2回目のゲストブログをお願いしました。彼は最近、中国とシリコンバレーを行ったり来たりしているようで、今回はシリコンバレーから見た中国の話が中心になるとのこと。どうぞお楽しみに。また日本のお盆休みに合わせて、8月9日から8月16日までは本欄休載。8月17日から25日までは不定期更新といたしますので、ご了解ください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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