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頑固で柔軟な判断がアマゾン成功の秘密

2004/07/28 09:26
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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今日は、Amazon.comとJeff Bezosの話をしよう。本当はFast Company誌最新号の「Inside The Mind Of Jeff Bezos」という長文記事を題材にしたかったのだが、もうしばらく経たないと無償で読めるようにならない。そこで今日はBusinessWeekサイトに掲載されたBezosのインタビューの一部を読みつつ、Fast Companyの記事で面白かった部分も言及するということにしようと思う。

Bezosに内在する矛盾

Fast Companyの記事(以下、FC記事と称す)が面白かった理由は、この記事のリード文が

「Amazon.com's founder is a study in contradictions -- analytical and intuitive, careful and audacious, playful and determined. What really makes this remarkable entrepreneur tick?」

となっているように、Bezosという人物に内在する矛盾に焦点があてられているからだ。あることには分析的だが、あることには直観的。あるときは用心深いが、とても大胆で無謀な手を打つこともある。陽気で大はしゃぎするかと思えば、基本は断固とした人。Bezosという稀代の創業CEOを、彼が持つそういう複雑さという観点から描いているところが、この記事の面白さだ。この記事では、Google、Amazon、Yahoo、eBayのネット列強で、結局、創業者がそのままCEOをやり続けているのはBezosだけだと指摘しているが、言われてみればなるほどそうだ。

Amazonの株価はいまだいたい40ドルから50ドルあたりを推移している。時価総額が160億ドルから200億ドル前後。バブルのピーク時には100ドルを越え、バブル崩壊後のどん底では一桁ドルのあたりを低迷し、時価総額もピーク時の20分の1くらいまで下がった。株が2割、3割下がるというのと、10分の1以下になるというのは全く違う現象。たいへんな重圧を市場から受けつづけながら、ベゾスは創業以来そろそろ10年という長きにわたって、アマゾンを経営し続けているわけだ。

Amazonのブランド構築手法

さて、BusinessWeekのBezosインタビュー「Jeff Bezos on Word-of-Mouth Power」は、グローバルブランドをテーマとした特集のOnline Extraである。

「Says Amazon's CEO: "If you build a great experience, customers tell each other." That, he believes, is better than any TV advertising」

とあるように、この記事には、7月5日「Googleの今後と広告産業の今」で触れた「広告のテレビ離れ」という問題とも少し関係する話題も含まれている。

「Chief Executive Jeffrey P. Bezos, however, never stopped pushing his obsession to please customers. Now, that persistence has paid off -- not only in recent profitable quarters and recharged growth but also in the value of Amazon's (AMZN ) brand.

According to the latest BusinessWeek/Interbrand survey, Amazon's brand ranking rose 22% last year.」

バブル崩壊で株価が前述したように乱高下する中、Bezosは彼の「obsession to please customers」(顧客を喜ばせることへの異常なまでの執着)を貫き続け、その持続性・粘り強さがいま報われて、ブランド価値も高まったのだと、BusinessWeekは評価する。

顧客を喜ばせることへの異常な執着

FC記事では、Bezosの内部に、「頑固に信念を絶対に変えない」部分と、「人の意見やデータ分析から学んで柔軟に戦略を変更するのをいとわない」部分とが不思議な形で混在することを描いているが、この「obsession to please customers」は前者の代表例として挙げられる。

Bezosは、FC記事の中で、

「The thing about inventing is you have to be both stubborn and flexible, more or less simultaneously. Of course, the hard part is figuring out when to be which.」

と語っているが、まさにこの「when to be which」の中身こそが、BezosをBezosたらしめているところだと思う。

Amazonのブランド構築について、Bezosはインタビューで、

「We firmly believe that for us, the right way to build a brand is by delivering a great service. Customers learn about who we are as a result of interacting with us. A brand for a company is like a reputation for a person. You earn reputation by trying to do hard things well. People notice that over time. I don't think there are any shortcuts.」

素晴らしいサービスを提供し続け、時間はかかったけれどそれが顧客に浸透した結果、ブランド構築ができたのだと公式発言をしたあと、

「We don't do any television advertising, and we take all of the money that we would put into television advertising, and instead put it into things like free SuperSaver shipping [free shipping on most orders over $25], lower product prices, category expansion, and invention of new features.」

と話す。テレビに広告を出す代わりに、その予算のすべてを、25ドル以上の注文に対する無料配達、本の値下げ、カテゴリー充実、新機能の考案に振り向けたと言う。

データを駆使してテレビ広告を検証

そして、同じインタビューの後半で、Bezosは、なぜテレビ広告をAmazonが行わないかについて、こう語っているが、

「Let's say your customer base is a very narrow market. Then you use a sales team and you go market individually to those customers. Likewise, if to make your business successful, you need 100 million customers, then you buy a lot of national TV coverage, and that could work.

The problem is usually reaching that hard middle. If you have a service that needs 15,000 customers, it's too big to effectively use a sales force, and it's way too small to use television advertising.

I think those middle-sized audiences are what we serve. That's exactly the kind of product that a book publisher has. A typical mid-list book will sell 15,000 copies. What we're very good at doing is finding 15,000 readers for a mid-list book. All the discovery tools that we've built are dedicated to that kind of purpose. So for me, that's the big change.」

FC記事を読むと、テレビ広告の効果算定については、膨大な試行錯誤、詳細なデータ分析が行なわれ、結果として「Amazonの顧客層には効果なし」という、Bezosのこの発言に至る過程がよくわかる。ただ一方で、「25ドル以上の注文に対する無料配達」についての意思決定は、データ分析からはやはり「効果なし」という分析結果が出たのだけれど、ベゾス自身が「長期的には絶対にそれをやるべきだ」と、断固とした直観的信念に基づいて意思決定したものだそうである。このあたりが、Bezosを特徴づける「when to be which」の中身の一例だろう。

顧客やデータに学ぶ積み上げ型のイノベーション

また、イノベーションについても、同じようなことが言える。

「The only way to do this consistently over time is through invention. We work hard at being very customer-obsessed and expressing that through innovation. If you look at the kinds of things we do on our Web site and in our fulfillment -- things like free SuperSaver shipping -- basically throughout our entire organization, we're working on trying to make things better.

We see our customers as invited guests to a party, and we are the hosts. It's our job every day to make every important aspect of the customer experience a little bit better. We have a big team of people who from the very beginning have thrived on that. They're attracted to the idea of inventing on behalf of customers.」

ここが、Bezosがイノベーションについて語っている部分。確かに、ネット事業のイノベーションの大部分は、Bezosが言うように、「毎日毎日、顧客の経験を少しずつでもよりよくするべくサービスを向上させる」ということである。FC記事によると、Bezosはその実現のために、組織をできるだけ小さく分けて、そこで生まれる工夫をどんどんサービスに反映できるようにしている。Gold Boxなどは、そういう小さな組織から生まれたイノベーションとして紹介されている。そしてこうした小さなイノベーションの積み上げというところには、Bezosの直観的信念に基づく頑固さではなく、顧客やデータから学ぶ柔軟性のほうが、色濃く反映されている。

直感に基づく大型投資

ただ、Amazonのイノベーションは、こうした小さな工夫の積み重ねばかりではない。たとえば、昨年10月28日「アマゾンが仕掛ける「書籍のグーグル」は成功するか」でご紹介した「書籍のフルテキストサーチ・サービス「Search Inside the Book」」や、4月19日「GoogleとAmazonの新技術はプライバシー問題を克服できるか」でご紹介したA9については、Bezosが極めて戦略的に大規模な投資を決めて、長期的に推進しているプロジェクトである。むろん「Search Inside the Book」もA9も、いずれもまだ発展途上だ。顧客に大きなインパクトを与えるまでにはまだかなりの時間がかかると思われる。気の早い人は、早々に疑問符をつけてくるであろうし、こうした大型イノベーションの効果測定をデータから行うのはとても難しい。苦しくても継続していく中で、大きく化ける場合もある。Bezosが、トップダウンで展開しているに違いないこの2つの大型プロジェクトがどう推移していくのかは、ベゾスに内在する相矛盾する二つの側面が、これからの時間経過の中でどんなふうに露出してくるか、という観点で眺めると、とても興味深いのではなかろうか。

FC記事はいずれ「Fast Company Online Archives」にアップされるので、本稿で興味を持った方は、原文はしばらくしてそちらで読んでください。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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