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「PSM」は数学・サイエンス専攻者のためのMBA

2004/07/27 09:06
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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PSMという新しい学位を知っていますか?

PSMとは、Professional Science Mastersの略。

「Somewhere Between A PhD And An MBA: The PSM」

PhDとMBAの間くらいのものかな、とTechdirtは書いているが、新しい学位として注目され始めている段階にあるという。

「Knowledge about science and math is becoming increasingly important in the business world, and while many companies are hiring PhDs for these purposes, in many cases that's overkill. Meanwhile, MBAs who have no math or science background are having trouble managing in companies where it would help to have some more advanced knowledge. This gap is leading to the rise of a new degree for management professionals with a scientific or mathematical skills called the Professional Science Masters (PSM) degree.」

サイエンスや数学のビジネス世界での重要性は増しているが、企業がPhDを雇うのは多くの場合overkill(過剰、やり過ぎ)になってしまう。でも数学やサイエンスの素養のないMBAではダメなケースも多い。そのギャップを埋める新しい経営プロフェッショナルのための学位がPSM。

理系からビジネス世界に転じた学生にぴったり

このTechdirtの解説からは、PSMとは、「理学部には進んでみたものの、学者・研究者・教師としてのキャリアを目指さず、ビジネス世界に転じたいと考えた学生」にぴったりの新しい学位のような気がする。ちょっとコロンブスの卵みたいな話ではあるが、面白そうだ。Techdirtが参照しているUSA Todayの記事「Add science, business, mathematics and stir」を読んでみよう。

どんな人がPSMにぴったりかという具体的な話がまず出てくる。

「Elizabeth Renken was a smart kid in high school. She had a passion for science but was less excited about her career options.

It wasn't until she was majoring in biology at Catholic University of America in Washington, D.C., and doing an internship at the National Institutes of Health that she decided a life of research would be suffocating. "It's boring. There is not much interaction with people," Renken says.」

エリザベスは、頭のいい高校生で、サイエンスへの情熱を持っていたが、当時はキャリアオプションなんてことに興味がなかった。それでバイオロジーを専攻。でも研究所でインターンをやってみて初めて、自分が研究者に向いていないことに気づいた。人との交流があまりにもなさ過ぎる仕事だと知ったからだ。このエリザベスに共感する理学部の学生は結構多いのではないだろうか。

卒業生が出たばかりの新しい学位

こんなエリザベスのような学生を対象にPSMという学位ができたわけだが、2002年に初めて卒業生を出したばかりで、本当に新しい。

「Fewer than 400 students have earned a PSM. But the programs are expanding rapidly and are now offered at 45 universities in 20 states.」

「The PSM is being called the MBA for scientists and mathematicians.」

「Experts predict it will become the 21st century's fastest ticket to the major leagues in business and government.」

とあるように、21世紀において、政府やビジネスのメジャーリーグに入るための早道になるだろうと予測するエキスパートもおり、数学者、サイエンティストのためのMBAと呼ばれ、20州45大学に広がっているという。

スローン財団が仕掛け人

仕掛け人はAlfred P. Sloan Foundationである。この財団がシードマネーとして1100万ドルを投じてプロモートしている。詳しくは「Professional Science Masters」というオフィシャルサイトをご参照ください。

この記事の後半では、さらにPSM学位の対象者についてのイメージが湧く記述がある。

「The reduced time commitment was attractive to Bill McCarthy, who received an undergraduate degree in zoology from the University of New Hampshire in 1991 and worked for 10 years managing the 700-tank Zebrafish Facility at Harvard University, which studies genetic mutations.

He considered a Ph.D., but that would have required another four to eight years followed by one or two postdoctoral projects, requiring an additional three to eight years. He got a PSM in bioinformatics in 2002 from Northeastern University and at 36 works for Affymetrix, where he manages the process of winning patents for cancer diagnostic products invented by Affymetrix scientists.」

たとえばこのビルの場合。大学で動物学を専攻して就職して10年働いた。そこでPhDを考えないではなかったが、学位を取るのに4-8年。さらにポストドクターとして3-8年かけてやっと一人前だ。30過ぎてからのキャリア再構築にPhD取得は時間がかかり過ぎる。そこでビルはバイオインフォマティクスのPSMをとって、バイオチップの公開企業Affymetrixに入り、癌診断製品の特許プロセスを管理する仕事についたという。

「Mahendra Panagoda, 31, earned a bachelor's degree in applied mathematics in Sri Lanka and was halfway toward a Ph.D. at Texas A&M before deciding the time commitment was prohibitive. He earned his PSM at Michigan State and works as an actuarial analyst at benefits consultant Watson Wyatt, running models that tell companies how much money should be set aside for medical expenses of future retirees. "I'm applying the ABCs and XYZs" of mathematics to something with real meaning, Panagoda says.」

応用数学専攻でスリランカの大学を出たPanagoda(31歳)は、テキサスA&MのPhD課程にいるときに、PhD取得はあまりにも時間がかかり過ぎるので断念し、ミシガン州立大学のPSMを出て、Watson Wyattのコンサルタントになった。

Sloan財団のゴールは、年間1万人がPSMの学位を取ることだ。

「The Sloan foundation's goal is to produce 10,000 PSM graduates a year, which may not be unreasonable given that 100,000 Americans a year get bachelor's degrees in science and mathematics.」

米国全体で10万人の学生が、サイエンスまたは数学専攻で大学を卒業するが、その10分の1がゴールというわけである。

学際的なプログラム

PSMのもう一つの特徴は学際的であることだ。

「As with MBAs, PSM students can focus on a variety of specialties. Several universities, including Stanford, are introducing PSM degrees in bioinformatics, a field applying computer technology and biology for gene-based drug discovery. Case Western University in Cleveland offers a PSM for entrepreneurship in a choice of chemistry, physics or mathematics. Rice University in Houston offers nanoscale physics, and California State-Fresno and Temple offer PSM degrees in forensic chemistry.」

さまざまな大学で、独自の学際的プログラムを組んで、バイオインフォマティクス、化学・物理・数学と起業家精神、ナノスケール物理、法廷化学といった領域をカバーしようとしているとのこと。

今、既にスタートしているプログラムの一覧表はここにある

なかなか面白そうなので、興味のある方は、このリストからさらに先のサイトをたぐって見たらいいと思う。

こんなに違うアメリカの大学と日本の大学

そして最後に。JTPA運営メンバーの戸谷茂山さんが書いたエッセイ「こんなに違うアメリカの大学と日本の大学」を読むと、アメリカの大学が、学生が卒業後に企業にとっての即戦力となることを、いかに重視して教育しているかがよくわかる。PSMを具体的にイメージするには、彼のこの経験談(大学3-4年次)をあわせて読んでみるといいと思う。ちょっと長いが大切な部分を引用する。

「アメリカで大学3年生になって、専攻を絞りだし、専門性の高いクラスを受講しだすと、「社会で使える実力を身につけさせる」というアメリカの大学のもつスタンスがよりはっきりと見えてきました。専攻の授業は、あくまでも実社会に根付いたものです。建設を専攻した私は、不動産、建築、インテリア・デザインの学生達と共同で実際のプロジェクトの進め方を学びました。施主や建築家との争議の進め方や、法的な措置のとりかたを教えるクラスさえありました。スケジュール管理のクラスでは、どうやってCash Flowをポジティブに保つかというトリックを教えられ、マーケティングのクラスでは、会社のパンフレットを作成することから、入札業者に残るための手法さえ教わりました。予算のクラスでは、実際に建設された建物を使った現実の予算との比較。予算を計算した後は、実際の工事をシュミレーションするエクササイズで利益を最大化する工夫を教えられます。就職活動が始まりだし私の理解が正しかったこと再々確認されました。面接に顔を出すたびに、「Resource LoadingでCPMスケジュール管理が出来るか」とか「Life Cycle CostをCash Flowのチャートを利用して最小限にするスキルがあるか」「何億ドルの建物までなら正確に予算を建てる自信があるか」などとかなり実際的な質問をされます。図面を一式渡され、言われた情報をその中から見つけるスピードをストップウォッチで測られたことさえあります。さて、就職をしてみて、今度は私の理解が証明されました。初日から会社の期待は大きく、予算建てから契約書の作成まで、ありとあらゆる責任のある仕事を独自でこなしてきました。上司は一週間に一度だけ私の仕事の進行状態を確認するだけです。私の上司の口癖はこれでした。「We are paying for your knowledge and skill set.」

PSMでは、さらに高度なテクノロジーや複数のテクノロジーが融合した新しいビジネス領域の即戦力を育成するために、こんな思想の教育が、理学部卒業生に対して行われているとイメージすればいいのではないだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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