最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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コンピュータに仕事を奪われない、つぶしが効く能力

公開日時:
2004/07/14 09:19
著者:
umeda

HBS Working Knowledgeの「How Computers Are Changing Your Career(s)」を今日は読んでみよう。これは「The New Division of Labor」という本の著者、Frank Levy (MIT教授)とRichard J. Murnane(ハーバード教授)へのインタビューである。

コンピュータが人間の職をどう奪うのかというのは、昔からさんざん議論されている話だが、この本では、次の4つの問い

(1) What kinds of tasks do humans perform better than computers?

(2) What kinds of tasks do computers perform better than humans?

(3) In an increasingly computerized world, what well-paid work is left for people to do both now and in the future?

(4) How can people learn the skills to do this work?

を設定して議論を進めている。

二極化するキャリア

インタビューの冒頭で、

「Strange as it sounds, computerized work creates both high-skilled and low-skilled jobs. With a few exceptions, it is the "middling skilled jobs" that are most at risk.」

コンピュータ化が進んだ世界での仕事は、ハイスキルの仕事とロースキルの仕事に二極化し、中くらいのスキルの仕事が、いちばん消失リスクが高いと、著者たちは語る。そして、失われる「中くらいのスキル」の仕事を描写するために、著者たちは「"rules-based" repetitive work」という言葉を導入している。ルールに従って粛々と同じことを毎日繰り返すタイプの仕事である。このタイプの仕事は、コンピュータ化とオフショアリングの両方の攻撃を受ける。

ではルールで記述されにくい仕事とは何か。3つのタイプの仕事がある。

「1. Identifying and solving new problems (if the problem is new, there is no rules-based solution to program).

2. Engaging in complex communication—verbal and non-verbal—with other people in jobs like leading, negotiating, teaching, and selling.

3. Many "simple" physical tasks that are central to janitorial work, waiting on tables, and other service work. (For example, entering an unfamiliar room and making sense of what you see is trivial for a human but extremely difficult to program.)」

第1が問題設定と問題解決。第2が複雑なコミュニケーション(口頭、非口頭ともに)を要する仕事。第3がシンプルでフィジカルな仕事。

もっともつぶしが効く能力

そしてこれからの時代で最も「つぶしが効く」能力は、

「Most secure are the people who know how to learn new material rapidly and how to communicate effectively with other people.」

新しいことを迅速に学ぶ能力と、他の人たちの効果的にコミュニケーションをはかる能力だという。そして子供たちの教育については、こうした時代に備えて、次の4つを考慮したほうがいいと説く。

第1が、読み書き能力と数学。これが問題解決とコミュニケーションの基本だからだ。

第2が、事実よりも物事の関係についての教育が重要だ。

第3が、選択式の試験はいけない。

第4が、コンピュータスキルの教育に時間をかけすぎてはいけない。

である。

当たり前の話だ、と思われる読者も多いだろうが、当たり前のことを当たり前に議論して社会を変えていくということのほうが、当たり前でないサプライズによって物事を動かしていくよりもかえって難しいことかもしれない。これからの競争の時代を生き抜くには、教育に尽きるというのが、競争社会アメリカの常識である。

「Technology and trade are still engines of economic growth but the engines now favor educated and skilled workers. Less educated workers are paying a big price so the nation as a whole can advance.」

企業による教育の具体例

さて、HGSE (ハーバード大学大学院教育学部) ニュースによる同じ著者たちへのインタビュー記事では、この本「The New Division of Labor」で挙げている「教育の具体例」についてこう紹介する。

「Using examples from IBM's Basic Blue Management Training, Cisco Networking Academies, and a Boston public school, Murnane and Levy show how U.S. firms and schools are learning to teach what they call expert thinking and complex communication, the two modes of thinking required to thrive in a computerized workplace.」

IBMとCiscoにおける教育を例にとって、米国企業が「expert thinking」と「complex communication」という2つの必須スキルを教える方法を模索しているかが書かれているらしい。ちなみに「expert thinking」と「complex communication」の定義は次の通り。「ルールで記述されにくい3つのタイプの仕事」の1番目と2番目に、それぞれ対応している。

「One is expert thinking the ability to solve new problems that cannot be solved by rules. (If the problem could be solved by rules, a computer could do it.)」

「The second general skill is complex communication, the ability not only to transmit information, but to convey a particular interpretation of information to others in jobs like teaching, selling, and negotiation.」

ここで挙げられているIBMのBasic Blue Management Trainingや、シスコのNetworking Academiesについては、このリンク以外にも、ウェブ上を検索するとたくさんの情報が得られると思う。

大企業の教育力も日米で差が大きい

本連載の「連載1周年:日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった?」では、「日米の差が圧倒的な10領域」というのを選んで提示した。そしてその第8項目で

「(8) 大学、大学院、そして国家予算(軍事予算も含めて)での研究開発に関わること。ここもアメリカの生命線である。MITのオープンコースウェアについては、たびたび取り上げてきた(去年の9月8日、9月9日、今年に入って2月13日)し、大学経営における合理性の追求や競争のあり方(9月16日「大学の経営は進歩しているか」参照)、門戸を世界に広げた大学院の思想、国家研究予算をできるだけ有効に使うための仕組みや経験、その成果を産業界に移転していくことに関する法律の整備や仕組み。こういった部分のアメリカは、やはり優れている。2002年5月に産経新聞「正論」欄に、「若い頭脳活用する環境つくれ」という文章を書き、その冒頭を

「トップクラスの若い頭脳が徹底的に競争する環境がアメリカにはある。大学受験で競争が終わるのではなく、研究やビジネスの第一線から離脱するまで、永久競争とも称すべき競争が繰り広げられる。そのプロセスは厳しいが、トップクラスの若者たちを強くたくましく育てる。」

こう始めたが、まさにこういう領域のことである。」

と書いたが、この項目(8)の中に、大企業における「最新知識についての教育・トレーニングの体系化とその組織的実践」というのを追加しておきたいと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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