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CNET Japan ブログ

ビジネス環境の分散化が社会を変える

2004/07/08 09:00
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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6月24日、25日の2日間、SuperNovaというコンファレンスがシリコンバレーで開かれた。SuperNovaは、高額の参加費(1895ドル)を取るコンファレンスとしては新興勢力である。スピーカーもそこそこのメンバーを集めた。

このコンファレンスの主旨、テーマは、SuperNovaのトップページによれば、「The Network is People」、「Telecom Transformation: Voice as a Data Application」、「Spam and the Future of Email」、「Exploding the Enterprise: Web Services, Outsourcing, and more」、「Syndication Nation: Is This What Comes After the Web?」、「Disruptive Wireless」、「Connected Work」、「Broadband Life: Bringing it All Together」であり、セッションの一覧表は次の通りだ。包括的にこのコンファレンス全体の雰囲気を知りたい人は、John Patrickの「SuperNova 2004」がお薦め(2日目の途中で帰ってしまっているけれど)。また、Fast Companyという雑誌が持っているBlogの6月のアーカイブを読むといい。

分散型組織の大家によるキーノート

今日は、このカンファレンスのキーノートスピーチを取り上げよう。スピーカーは、本欄3月25日「ITが可能にする個人の自由と組織の効率の両立」と、4月20日「分散型組織を検討するための考え方」でご紹介したMITスローンスクール・Tom Malone教授である。

Fast Company Blog「Thomas Malone: Perspective」によれば、教授は冒頭で聴衆に向かって、

「Let me start by asking you a question that I sometimes ask my classes. How many of you are happy this morning?」

と尋ねたらしい。「皆さん、この中で、どのくらいの数の人が、朝起きて幸せでしたか?」と。

ビジネスにおける人々の解放が始まる

「What I'm going to try to explain is why I think decentralization is not just a cool thing for technologists.」

「We are now in the early stages in an increase of human freedom in business that may in the long run be as important a change for business as the introduction of democracy was for governments. New technologies allow us to have the economic benefits of large organizations as well as the human benefits of small organizations. The reason that's possible is that technology is reducing the cost of communication to such a level that everyone in even huge organizations can have all the information they need about the big picture to make decisions without waiting for someone above them to tell them what to do. What will change things, though, is not the technology. It's what people want. We need to think more deeply about what we humans really want.」

ここに彼の考え方が凝縮している。Decentralization(分散化)というトレンドは単に技術者にとってクールだというだけのものではない。我々は、「ビジネスにおける人々の自由の増大」という大きなトレンドのアーリーステージにいる。新技術によって、我々は、大組織の経済的ベネフィットと、小組織の人間としてのベネフィットの両方を持つことができるようになった。組織内のすべての人々が、判断のために必要な情報を持てるようになった今、上司からの指示を待つことなく、自らの意志で判断を下すことができるようになった。そういう自由こそ人々が欲しているもの。我々はもっと深く、我々人間が本当に何を欲しているのかということに思いを巡らせるべきだ。教授はそういうことを言おうとしている。冒頭で幸せについて問いかけているのは、Decentralizationというトレンドによって、我々1人1人はより幸せを感ずることができるようになるはずだと、教授が考えていることを意味している。

そしてWikipediaの話をした後、eBayの例を出す。

「Let's look at another example: Ebay. What most people don't know is that 150,000 of its sellers make their full-time living on Ebay. If those people were employees of Ebay, it'd be one of the largest employers and retailers in the world. But they're not employees. They're independent store owners, and they have all the freedom independent store owners have. Coupled with that, they also have global scale.」

eBay上で生計を立てている売り手が15万も存在する。もしこの15万の売り手が皆eBayの従業員だとすれば、世界最大の小売業になるが、eBayが作っているのは生態系であり、15万の売り手はグローバルにリーチできる自由な独立事業主である。

狩猟社会、王制、民主主義、そして・・・

この次のトピックは、John Patrickの要約のほうを読んだほうが簡潔だ。

「Professor Malone then gave an interesting perspective. In the "beginning" there were hunters and gatherers who lived in groups called bands. About 12,000 years ago kingdoms emerged where much larger groups came under the control of Kings and emperors. Roughly 200 years ago Democracies emerged. What caused this evolution was is the increased flow of information. The emergence of kingdom was enabled by writing -- the King could write something and have it distributed throughout the kingdom. The printing press allowed for a much greater degree of information flow and lead to the formation of democracies.

Similarly, businesses have evolved from small proprietors to centralized corporations. The third wave of change in business is now underway due to the Net, inexpensive long distance, etc. and this wave will enable much more decentralization of decision making.」

狩猟民族が小さなバンド(群れ)を単位に生活していた時代から、1万2000年前に王国が生まれ、より大きなグループが王や皇帝によって支配されるようになった。200年前に民主主義が生まれたわけだが、こうした進化の原因は情報の流れが増大したことによる。王国の登場は「書く事」によって成立し、印刷の発明が民主主義につながった。同様にビジネスも小規模事業主から中央集権型組織へと変遷した。しかし、ネットによって、ビジネスにおける新しい波が今訪れており、その波こそが、意思決定における分散化を促進するのだと。

いやぁ、しかし大仰なスピーチだなぁ。「幸せですか?」から始まって、狩猟民族の単位、王国の誕生、そして民主主義と情報の関係を持ち出して、これからの分散化の流れを解くのだから。

余談だが、ネットの時代になって、スピーチがそのまま文章に起こされてネット上に載ったり、スピーチ内容が要約されてネットで報告されたり、というのが進んでいるが、これは何だか変なものである。生で何かを力をこめて伝えるのが目的のスピーチを、ネット上に載った起こされた文章で冷静に読むというのは、何となくルール違反という気もしないではないですね。

ビジネスにおける分散化がもたらす幸福

さて、Fast Company Blogに戻ろう。

「Just because it's possible doesn't mean it's desirable. But it turns out that there are a bunch of good things that happen when people make their own decisions. They're more motivated, creative, flexible, and often just plain like it better. Those benefits of decentralized decision making aren't always important. And in some places, where communication is more expensive, we can still see centralization. But the critical qualities of success are exactly those things that come from decentralization. That's why I think we'll see more decentralization in more parts of business.」

彼の論点は、「技術が進歩して分散化が可能になった」というだけでは、分散化トレンドが広がる保証はないが、分散化は人々のモティベーション、創造性、柔軟性を高め、全体に好影響を及ぼすものゆえ、ビジネスのあらゆる部分に広がっていくに違いない、というものだ。その後の詳しい議論については、2つのBlogの原文をどうぞ。

この話を読んで思い出したのが、いつも本欄で取り上げているForbesコラムニスト、Rich Karlgaardがもうすぐ出す「Life 2.0: How People Across America Are Transforming Their Lives by Finding the Where of Their Happiness (Crown Business, July 2004)」という本だ。タイトルの通り、「アメリカ中の人々が、自らにあった住む場所を積極的に探すことで幸福を見出し、いかにして生活を転換しようとしているのか」がテーマである。Forbes最新号に、「Balancing Act」という抄録が出ている。この抄録では、かなりの成功を収めた連続起業家が、過去に失敗した「仕事と家庭の両立」という難題を、住む場所を変えて生活パターンを変えることで克服しようとする最近の営みが詳述されている。本欄5月12日「ビジネスにとって最もよい場所とは」でも少し議論したが、組織の分散化、ネットをフル活用しての自立といった大きな流れが今後ますます進んでいけば、それぞれの家族が自らにぴったりとあった住みかを選び、それぞれが多様な生き方によって幸せを模索していく時代に入っていくのであろう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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