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Googleの今後と広告産業の今

2004/07/05 09:19
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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日本の大手エレクトロニクス企業の幹部とGoogleについて話をするとき、よくあるリアクションは「Googleって、ビジネスモデルは広告でしょ。あんまり興味ないなぁ」というものである。たとえば、「Googleのバックエンドがどれほど新しいコンピュータアーキテクチャになっていて、そのコスト構造が競争優位の源泉になっている」とか、「サーチということの現代IT産業における意味は何か」とか、そういう話をしても、「ビジネスモデルは広告」というところで、俺たちには関係ないんだと、思考停止してしまう人が多い。

未曾有の混乱期にある広告産業

確かに現時点で、Googleのビジネスモデルは広告に依存している。だとすれば、Googleの今後を考える上で、「広告産業の今」を少し包括的に理解してみなくちゃいけない。英エコノミスト誌の「The future of advertising : The harder hard sell」を今日は読んでみよう。ふつうエコノミスト誌の記事は1ページ程度だが、この記事は3ページ。かなり力の入ったサーベイ記事である。サプライズはないかもしれないが包括的なので、俯瞰して広告産業の現在やこれからを考える材料にはなると思う。広告産業は未曾有の混乱期にあるというのがこの記事の背景にある問題意識だ。

広告について昔から言われ続けていることは、「莫大な広告コストに対する効果がよくわからない」ということだ。効果があるということはわかるけれど、コストに対してどのくらい効果があるのかがわからない。

「all are said to have complained that they knew half of their advertising budget was wasted, but didn't know which half.」

冒頭のこの文章は、そういう感じをうまく表現している。「広告費の半分が無駄ガネだということはわかっているんだが、どっちの半分が無駄ガネなのかわからない」

狭義の広告と広義の広告

広告産業にとっての脅威や変化の話に行く前に、広告産業を広義にとらえたときの市場規模について、ざっと眺めておこう。

「It forecasts that worldwide expenditure in 2004 on major media (newspapers, magazines, television, radio, cinema, outdoor and the internet) will grow by 4.7% to $343 billion. It will be helped by a collection of big events, including the European football championship, the Olympic Games and an election in America.」

世界中のメジャーメディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、映画、アウトドア、インターネット)の2004年の広告総額は、3430億ドル。約37兆円である。今年はサッカーの欧州選手権、オリンピック、アメリカの大統領選挙があるので、4.7%の伸びが期待できるという。これが狭義の市場規模だ。

しかし広告の本質は、製品やサービスの送り手が、自らの存在を潜在的受け手に何とか認知させたい、と考える経済行為すべてに及ぶ。

「There are plenty of alternatives to straightforward advertising, including a myriad of marketing and communications services, some of which are called “below-the-line” advertising. They range from public relations to direct mail, consumer promotions (such as coupons), in-store displays, business-to-business promotions (like paying a retailer for shelf-space), telemarketing, exhibitions, sponsoring events, product placements and more.」

ここまでを「広義の広告」ととらえると、市場規模の算出はほとんど「エイヤ」っとやるしかないけれど、「エイヤ」で計算した人によれば、

「Add in the cost of market research, and this part of the industry was worth some $750 billion worldwide last year, estimates WPP, one of the world's biggest advertising and marketing groups.」

狭義の広告の倍くらいの7500億ドル。約82兆円。まぁ桁で考えれば、狭義と広義を合わせて、少なくとも50兆円から100兆円くらいのカネが動いている世界だと考えればいい。

広告産業に変化をもたらす要素

さてこの巨大な広告産業に変化をもたらしている要素は何か。

このエコノミスト誌記事が並べる順に見ていけば、

(1) Google/Yahooの新しいビジネスモデル。そしてそれが技術的にもまだ成熟しきっていないだけに、これからどう化けるかわからないこと。

(2) 成長する中国市場だが、中国のクライアントは支払ったカネに対する効果に厳しそうであること。

(3) 広告産業界のコンソリデーションによって産業界の競争のルールが変化していること。

(4) 口コミの威力が広く認知されてきたこと。

(5) ニッチ事業を営む中小企業とインターネット広告の親和性がはっきりしてきたこと。

(6) 新しいIT技術を取り入れた新しい広告モデルの試み(TiVoなど)がこれからも次々に続くだろうこと。

となる。この6つについては、この記事の真ん中あたりで詳述されているので、詳しくは原文をどうぞ。

そしてこの広告産業全体を揺るがす根底に、「広告の洪水に人々が飽き飽きしている」という問題がある。

「People are tiring of ads in all their forms. A recent study by Yankelovich Partners, an American marketing-services consultancy, says that consumer resistance to the growing intrusiveness of marketing and advertising has been pushed to an all-time high. Its study found 65% of people now feel “constantly bombarded” by ad messages and that 59% feel that ads have very little relevance to them. Almost 70% said they would be interested in products or services that would help them avoid marketing pitches.

It has been calculated that the average American is subjected to some 3,000 advertising messages every day. If you add in everything from the badges on cars to slogans on sweatshirts, the ads in newspapers, on taxis, in subways and even playing on TVs in lifts, then some people could be exposed to more than that number just getting to the office. No wonder many consumers seem to be developing the knack of tuning-out adverts.」

「平均的アメリカ人は、1日に3000の広告メッセージを目にする」なるほどね。数えたことはないけれど、たいへんな数だ。当然、そういう消費者心理は、従来型の広告の効果を低める方向に作用する。特にテレビ広告の効果が薄れている話が詳述されている。特にアメリカの場合は、

「But some people in the industry believe the conventional wisdom is no longer true. When America's big TV networks reached prime-time audiences of 90% of households, they were a powerful way to build a brand. Now that those audiences might be as low as one-third of households, other ways of promoting a brand have become more competitive.」

ここでいう「the conventional wisdom」とは、「継続的にテレビで広告を流し続けるのは効果が高い」というこれまでの常識のこと。それが崩壊しつつある。こうした背景があるからこそ、

「Some companies have profited from re-allocating their spending across different media, adds Mr Shaw. But it is a tricky business to determine what works best. For many companies, and especially the media-buyers who purchase space and slots for ads, greater media diversity and the arrival of the internet has made a difficult job much tougher.」

広告産業全体に落ちていた莫大なカネという原資(特にテレビ)の割り当て先が大きく変化する可能性が高く、その機会を巡る新技術の台頭もあいまって、広告産業全体がより複雑化しているわけだ。

プロシューマーを狙うP&G

記事の最後には、40億ドル(4300億円)という莫大な広告予算を有するP&Gの話が出てくる。

P&Gは大戦略としての「テレビ離れ」を指向して、「Prosumer」層への働きかけを強める方向性を打ち出したとある。「Prosumer」とは「Proactive Consumer」(積極的な消費者)のこと。

「Some people in the industry believe this group is the most powerful of all.」

「Such people often reject traditional ads and invariably use the internet to research what they are going to buy and how much they are going to pay for it. Half of prosumers distrust companies and products they cannot find on the internet. If they want to influence prosumers, says Mr Lepere, companies have to be extremely open about providing information.」

P&Gという実際のエスタブリッシュメント企業の例を引きながら、このあたりが広告産業全体とインターネットの関係のキモだと、この記事は言いたいわけだ。マスに漠然と働きかけるテレビ広告よりも、積極的な消費者へのリーチをちゃんとするほうがコスト対効果は高い。そういうProsumer層はインターネットのヘビーユーザであることが多く、Prosumerの半分が「ネット上に情報がきちんと開示されていない製品や企業は信用しない」と感じていて、そういう層へ影響を与えるためには、情報開示のオープン性が極めて重要、つまりそれは広告主にとってのインターネットの重要性に他ならない、という話だ。

いつかどこかで読んだことがある話ではあるのだけれど、広告産業の今を包括的に頭に入れるにはいい記事である。何せ原資は50兆円から100兆円超規模の巨大な話なので、「たかが広告」と侮ってはいけないのだ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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