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ジョブズの基調講演を生で見て来た

2004/06/30 09:13
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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SVJEN(Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)代表の外村仁さんから、「ジョブズの基調講演に一緒に行かない? 」と有難い誘いがあったのが先週の木曜日(ちなみにSVJENとJTPAは、双子の兄弟みたいな関係にあるシリコンバレーのNPOである。JTPAよりもSVJENのほうがより「起業」ということに焦点を絞って活動している)。月曜日の昼飯ミーティングの場所をパロアルトからサンフランシスコに変更すれば、午前中にジョブズの話を聞くための時間は作れるな、ジョブズの催眠術のような天才的プレゼンテーションを久しぶりに生で体感するのもいいな。ということで、月曜日は朝から、アップルの「Worldwide Developer Conference」に出かけた。

このジョブズの基調講演の内容は、CNET Japan「アップル、次期Mac OS X「Tiger」や30インチ液晶ディスプレイなどを公開」(基調講演のビデオも見ることができる)をはじめ、たくさんの報道記事やブログが取り上げており、その大半は次期OS「Tiger」の新機能についてなどが中心だ。最近は、たくさんのことが記事やブログなどで瞬時に書かれて広まっていくから、何かのイベントがあったとき、その場に居合わせなくても、大抵のことはわかるようになった。じゃあ、その場に居合わせて感じることの意味は何だろう。そんな実験のつもりで、今日はジョブズ基調講演の感想を書いていく。

ユニークなスピーチの始め方

開会の午前10時きっかりに、黒のカジュアル・シャツにジーンズとスニーカーという気楽な服装の男が、すたすたと足早に大ステージの中央に向かって歩いてきた。スタッフが機材の調整にでも現れたかのような、そんな自然さでジョブズは登壇し、いきなり聴衆に向かって話し始めた。司会者もいない。スピーチ内容の紹介を誰かがするわけでもない。ざわざわしていた聴衆は、いきなりジョブズの少し甲高い声を聞き、「あっ、もう始まったんだ」と気づき、少し遅れて拍手をした。ジョブズはその大拍手にもかまわず、淡々と話を続ける。そんな始まり方だった。「スピーチで聴衆の心をつかめるかどうかは、壇上に上って話を始めるまでの振る舞いで、ほぼすべてが決まる」と、その道のプロに聞いたことがあるが、ジョブズは「このスタイルで始める」と決めているのかもしれない。

この「Worldwide Developer Conference」は、その名の通り、アップルの開発者が世界中から集まる。ジョブズは冒頭で「いかにアップル開発者が世界各国にたくさん存在するか」という数字を見せて聴衆に感謝の意を示したあと、最初に何の話をしたか。リテールのApple Storeの話だった。直営店などというコストのかかる流通は、とうにすべてのPCメーカーがやめてしまったことだが、ジョブズはApple Storeがいかに重要な存在であるかという話を、スピーチの「枕」に持ってきた。アップルをブランドと捉えるジョブズの「直営店へのこだわり」が感じられて面白かった。彼は大ステージを右に左にせわしなく歩きながら、後ろの巨大スクリーンに映る各地のApple Storeの写真を見せていった。そしてこの「枕」のあとは、「さぁ次は、音楽の話だ」というようなことを言って、iPodとiTMSの話に移る。iTMS欧州展開の話に軽く触れたあと、音楽を聴く場所としての重要な「家の中」と「車の中」に対するアップルの音楽ソリューション・コンセプトを語った。

「家の中」については、129ドルのAirPort Express with AirTunesを使うと、家の中の音楽環境がどんなに素晴らしくなるか。「車の中」については、BMWとiPodのインテグレーションがいかに素晴らしいかについて熱弁をふるった。そしてアップルのiPodプロモーションビデオを大音量で流しつつ、ジョブズは一休みする。そのプロモーションビデオが終るか終らないうちにジョブズはステージに戻り、また次の話に入る。ここまでスピーチ開始から10分。聴衆は完全に彼のプレゼンテーションに引き込まれている。まぁ、この日の聴衆は、「ジョブズに酔わせてもらいたい」と思ってきている人が多いのですけれどね。

ジョブズはこの調子で、100分、午前10時から11時40分まで、大ステージ上での一人舞台を続けた。

ジョブズが1人で支えるアップルのビジョン

むろん、サードパーティ開発者やアップルの担当者も登壇して簡単なデモや説明も行なうのだが、自分以外の人間が話をしている時間が2分、3分と続くと、ステージ袖に降りたジョブズはだんだんと苛立ってくる様子。今のアップルの強さが、ジョブズという一人の天才の個性によって支えられているということが、彼の基調講演を聴いていると、びんびんと伝わってくる。彼が聴衆に向けて語っているアップルのビジョンは、彼の頭の中で創造された「彼の世界」なのだということが。

では、ここから先の90分、ジョブズは何の話に、どれだけ時間をかけて、どういう順番で話をしたのか。それを列挙していくことにしよう。当然のことながら、ジョブズはこの一人舞台をミュージカルの本番みたいにとらえているから、リハーサルも繰り返しただろうし、プログラムも彼の頭の中で次々に変わっていったろうが、最終的に落ち着いたのは、

10時10分から10時25分 PowerMacとApple Cinema Display

10時25分から10時40分 Pantherとサードパーティ・アプリ4本の紹介

10時40分から11時40分 Tiger (10:40・概要、10:45・Spotlight、10:55・H.264、11:00 Safari RSS、11:07・Core ImageとCore Video、11:20・.mac、11:22・Dashboard、11:25・Automator、11:34・iChat、11:40・まとめ)

という段取りだった。

ディスプレイこそホーム用アプリケーションの命

「PowerMacとApple Cinema Display」に割り当てた15分間の大半は、「Apple Cinema Display」の話だった。普通のPCメーカーは、皆が同じように調達する液晶ディスプレイなどでは大きな差別化などできないと考えるわけだが、ジョブズは「ディスプレイこそホーム用アプリケーションの命」だと思っているようで、「アップルのディスプレイは「業界一」だ、アップルが液晶メーカーにNGを出したパネルで他社は皆PCを作っているんだぞ、ほらこのアルミを使ったデザインは素晴らしいだろ、とうとうデスクトップで30インチの液晶ディスプレイが実現されたんだよ、20インチと23インチはウィンドウズでも使えるけれど、30インチ・ディスプレイの性能を活かしきるのは普通のPCでは無理だからアップル専用だ」というようなことを、AmazingとかUnbelievableとか、そういう大仰な表現を混ぜながら語った。新しい液晶ディスプレイたちは、ステージの下からせりあがってきて、360度自動的に回転して、その背中までを聴衆に見せた。

10時25分、ようやくOSの話に移る。

「Apple II --> MacOS」

「DOS --> Windows」

「MacOS --> OS X」

という3つの大きな世代交代が既に起きた。もう「MacOS à OS X」という21世紀最初のトランジションは終っているんだよ。しかし・・・。

「Win95 --> Longhorn」

はどうなったんだ? とジョブズは挑発する。聴衆は大歓声を上げる。

Tigerで最も革新的な機能とは

そしてそんなふうに盛り上がった直後に、「いや、つい最近ビル・ゲイツと飯を食ったんだけれど、マイクロソフトとアップルの関係は、歴史上、最高の状態にある。Mac 用Officeは素晴らしい出来だ」なんてことを言って笑わせる。そして10時30分からの10分間は、サードパーティのアプリケーションが4つ、それぞれの会社の担当者からの説明。ここまでは、聴衆の大半が断片的にはすべて知っている情報が、ジョブズ流にパッケージングされたもの。いよいよ、10時40分からTigerの話になった。

「Tigerで最もRevolutionaryな機能から話そう。それはサーチだ。」

ジョブズは言った。

では、続きはまた明日。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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