最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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Desktop Linuxの可能性とGoogle

公開日時:
2004/06/24 07:23
著者:
umeda

ACM Queueに「Desktop Linux: Where Art Thou?」という論文(ウェブで6ページ)が掲載された。この世界について詳しい人にとってのサプライズはないだろうが、包括的にDesktop Linuxの今を解説したものである。今、Desktop Linuxについてどんなプロジェクトが動いているのかがよくわかる。また、オープンソースプロジェクトによって、プロ用のソフトウェアではなく、我々1人1人が日常的に使うソフトウェアを作る場合の難しさはどんなところにあるのか、というようなことを理解する上でも参考になる論文だと思う。

着実に進むDesktop Linuxの開発

構成は、第1章「The Long March」、第2章「Major Obstacles」、第3章「The Last Mile」、第4章「Longhorm」、第5章「Dashboard and Mozilla」からなっている。今日はそのほんの一部を拾い読みするようにしてご紹介しよう。

「Then a funny thing happened: the GNOME and KDE desktop environments kept getting better, Mozilla and OpenOffice.org reached their 1.0 milestones, and a new batch of Linux desktop companies sprang up (Lindows, Xandros, Lycoris). Rumors of the death of Linux on the desktop had been greatly exaggerated. Over the past year, a steady stream of new developments and announcements has added to the desktop Linux drumbeat. Perhaps most important, big IT companies, including Novell and Sun Microsystems, have placed bets on desktop Linux.」

GNOME、KDE、Mozilla、OpenOfficeの開発が順調に進み、Lindows、Xandros、LycorisといったLinux Desktopの会社も登場。NovellやSunのような大企業もDesktop Linuxに賭け金を投じるようになった。これがバブル崩壊時にもうLinux Desktopは終わりだと皆が考えるようになって以降の着実な歩みだ、とこの論文の筆者は書く。

「So will 2004 be "the year for Linux on the desktop"? This article takes stock of where the Linux desktop stands and looks at remaining obstacles to broader adoption of Linux on the desktop, how Linux can meet the new challenges created by Microsoft's plans for Longhorn, and opportunities to get ahead of the curve around collaboration-centric computing.」

ではその着実な歩みゆえに「2004年はDesktop Linuxの年だ」なんて言えるんだろうか。それを考えていくために、この論文では、Linux Desktopの現状(第1章)、残っている障害物(第2章、第3章)、マイクロソフトのLonghorn対策(第4章)、「collaboration-centric computing」に焦点を絞ることで先行できる可能性(第5章)を考えていく。

Desktop Linuxの現状

Desktop Linuxの現状としては、

「Linux on the desktop is now good enough for certain classes of users, but much work remains to be done. Two large, dynamic open source projects, KDE and GNOME, offer complete desktop environments that include file managers, desktop administration tools, and a broad range of applications—from simple games to complete office productivity suites. Both of these projects are reasonably mature, offering fairly polished and stable desktops. They may not be as glitzy as Apple's Panther operating system, but they compare reasonably well with Microsoft Windows. The main problem with the Linux desktop is that there are multiple projects, making it hard for users and developers to pick one to focus on and diluting the energies of the open source developers.」

KDEとGNOMEはかなり大きなオープンソースプロジェクトで、file managers、desktop administration toolsとかなり広いデスクトップアプリケーションが揃い、プロジェクト自身も成熟し、洗練されて安定したデスクトップOSを提供するに至り、機能的には十分にWindowsと比較できるだけのものとなっている。Linux Desktopの大問題は、複数のオープンソースプロジェクトが存在するゆえに、ユーザやデベロッパーが1つを選んでフォーカスすることが難しく、オープンソース開発者のエネルギーが発散してしまっていることにある。

「Through their tools and development libraries, Microsoft and especially Apple provide a more or less unified look and feel and a dominant development environment. Not so for Linux, where KDE, GNOME, Mozilla, OpenOffice, and the Wine project all offer their own development environments, resulting in an often-inconsistent end-user environment.」

たとえば、ツールや開発ライブラリも、KDE、GNOME、Mozilla、OpenOffice、Wineでは、それぞれ固有の開発環境が提供されて、エンドユーザ環境における一貫性を欠く結果となっている。

Linuxの障害物

第2章では、Linuxが広く一般に普及するための3つの障害物がまず整理される。

「1. The lack of a critical mass of consumer applications.」

「2. The lack of major OEM support and consumer distribution channel access.」

「3. Resistance to change.」

産業全体で考えれば、(1)アプリケーションと(2)流通。顧客の観点から言えば、(3)変化への抵抗。よって当然、米国のような先進国の市場よりも、米国外のprice-sensitive markets(「安さ」がより重要な市場)がターゲットとなる。

「While the consumer and knowledge-worker markets, especially in the United States, remain elusive, many other markets offer significant opportunities for Linux on the desktop, including "transactional workers," price-sensitive markets outside of the United States, and cheap, limited-functionality PCs. These markets have the potential to provide desktop Linux with double-digit market share, making a serious dent in the current desktop monoculture. What's needed to seize the opportunities?」

そして、その機会を掴むために必要な技術的な8項目が列挙されているので、興味のある方は、第2章後半の原文をご参照ください。

Desktop Linuxの将来

さて、第4章後半の「MOVING AHEAD」へ飛ぼう。ここからはDesktop Linuxの将来についての議論だ。

「The open source community has a plan for catching up on the desktop and may be able to best Microsoft in its plans for bringing rich Internet content to the desktop. But how can the open source community deliver on the original promise of the PC as "bicycles for the mind," as Steve Jobs of Apple famously said, or the promise of the Internet as a creative enabler? Can the open source community articulate its own vision for tapping into the creative power enabled by combining a rich client environment with the network effects of the Internet? Are there areas of opportunity that the dominant provider isn't pursuing because they don't fit into its strategy for maximizing shareholder return on investment?」

インターネットとデスクトップ環境の融合という課題にオープンソースコミュニティはどんな答を出し得るのかと著者は問い、3つのオープンソースプロジェクトを紹介している。本欄でも以前にご紹介したミッチ・ケイパーのCHANDLERと、DashboardプロジェクトとMozillaである。それぞれのプロジェクトが簡単に紹介されたあと、

「What do Chandler, the Dashboard, and Mozilla have in common? They share a focus on integrating the Internet into a rich client environment in innovative ways. They are breaking information out of its traditional silos. They are working to build applications that adapt to the user's needs, rather than the other way around. They bring information closer to the user and peer-to-peer communication and collaboration. In sum, these projects tap into the power of the desktop while also understanding that a network application framework, which opens up new possibilities for users and offers important cost advantages for developing, deploying, and maintaining software, is a key to success.」

と総括されている。

Desktop LinuxとGoogleの組み合わせ

僕がこの論文を読んだ感想は、「Desktop Linuxの問題は、Googleの今後の機能増強とセットにして議論していかなければならないと思うのだが、そういう言及がないなぁ。」ということであった。Googleが今やろうとしていることは、Gmailに顕著であるが、現在デスクトップ上で我々が当たり前に行っていることをインターネットの「あちら側」に移し、現在我々がデスクトップストレージに当たり前に格納している情報を、インターネットの「あちら側」に移し、結果として産業全体の機能と情報の重心を、Googleが司る「あちら側」へ移行させることである。このあたりは、月曜日の本欄「「Google PC世代」という考え方」もあわせてお読みいただければと思う。僕の仮説は、Googleがデスクトップ機能をインターネットの「あちら側」にどんどん持っていき、デスクトップ側の負荷が軽くなった時点で、Desktop Linuxが著しく意味を持ってくるのではないか、ということなのである。GoogleとDesktop Linuxの組み合わせこそが、Microsoftに対する大きな脅威になるのではないだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

6

Desktop Linuxはかつて同じマーケットで仕事をしていたJonathan SchwartzがSUNのCOOになったからには彼が出してくる戦略としては納得できるものです。Webの技術とリッチなクライアントの組み合わせをユーザーに提供するのも大賛成です。AppleのMac OS Xに全面コミットしているものとしては高い可能性を感じ、自分でも同じことを違う方法でできないかどうか現在模索中です。

Googleがユーザがローカルディスクにあるものをどんどんサーバ側に移動させ、クライアントOSは外部リソースを安全かつシームレスにアクセスできることを第一目的にすることを彼らのビジネスモデルの目標の一つにするならば大賛成です。しかし、大量のユーザが自分宛てのメール等、プライベートなデータをビジネスの取引材料にすることを選択するとは思えません。GMail発表の際にあったプライバシー保護への警戒は自然な反応です。

Java Desktopがユーザのプライバシーを守り、ユーザの選択を最優先で考えていくのであれば面白いことがどんどん起きていくでしょう。Mac OS Xも同じ道を歩んでいってくれると思っています。

  佐藤 徹 on 2004/06/24

5

iPodのような、持ち歩きたくなるようなデバイスと、Googleのサービスとを勝手に結び付けて、プチDesktop環境を構築してしまうというのはどうですかね。

  on 2004/06/24

4

既存の大企業の意志決定者が世代交代するより先に、新しい世代が意思決定している若い企業が一気に踊り出る可能性が高いと思います。つまり、第2、第3のGoogleの出現は必然でしょう。でも、ここでDesktop Linuxが大きな意味を持つという視点は新鮮でした。

  meta-o on 2004/06/24

3

梅田さんがご指摘のことは、企業内情報インフラの中で、
クライアントPCとサーバーの関係で既に現実化
していることように思います。


ITの専門家ではないので、

  インターネットの「あちら側」と「こちら側」が、
  そのままPCの「あちら側(=サーバ−)」と
  「こちら側(=クライアントPC)」に置き換えられ、
  仮想の思考シミュレーションができるのではないか、
  少なくとも暗喩としてくらいの意味があるのでは、

と、ここまでしか言えませんが。


情報の保護、流出防止と言う観点で、今や、PC上のCドライブは
伽藍堂です。「Cドライブ使用禁止」で、数ヶ月にいっぺん、
ファイルが存在しないかチェックされ、あれば直ちに抹消するか、
サーバーへの移動を命じられます。

また、誰がどういう作業をしたのか、メールしたのか、
すべてサーバー側で記録が残る仕組み。PCは要は入力端末に
なっています。

そこで、システムを構築する際、ITベンダー(大体PCメーカーと一緒)
に、クライアントPCのHDは今の数分の一にしたらと、投資規模が
縮小していいんだけど、と言いますが、そこは受容れられません。
「そういう特別仕様のPCはございません」が回答です。

企業内情報インフラのサーバーとクライアントPCの関係が
社会全体で、ネットの「あちら側」と「こちら側」で発生すると
社会全体のIT投資金額は大幅に減少するように思います。
勿論そのためには、設計思想が変化する必要があるのでしょうが。

実は既にそういう動きがあるから、IBMも転身しようとしている、
・IBM、ウェブベースのデスクトップソフトを発表へ
〜1ユーザー月額2ドルで提供
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20065890,00.htm

そう理解してますが、間違ってますか?

  sansara on 2004/06/24

2

私はオープンソース支持者ですが、いかなる形であれ、経済的独占・寡占には反対です。

  McDMaster on 2004/06/24

1

Googleの「あちら側」への戦略はそのとおりだと思いますが、企業や人がどれだけ受け入れるかという問題が残っています。それを平気の受け入れる人が新しい世代というのもわかりますが、その世代が時代の意志決定者になるものまだかなり先でしょう。
正直今回の結論は時期尚早なような気がします。

  CB on 2004/06/24

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