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「Google PC世代」という考え方

2004/06/21 09:10
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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John Udellのコラム「The Google PC generation」の冒頭は、

「The Google supercomputer is changing how we think about Internet-scale software.」(Googleのスーパーコンピュータは、インターネットスケールのソフトウェアについての我々の考え方を変えようとしている)

という書き出しで始まっている。

この「The Google PC generation」は短いコラムだし、4月6日「Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ」以来、本欄で何度も議論してきた内容との重複もあるが、コラムの中に、簡潔で明瞭な参考とすべき英語表現がいくつかあったので、取り上げることにした。冒頭のこの一文もその1つである。

Googleのバックエンド技術から広がる次世代コンピューティング

Googleの競争力が、そのバックエンドの圧倒的なコストパフォーマンスに起因しているということは、ようやく一般的にも広く語られるようになった。この「The Google PC generation」は、さらにその先のコンピューティング環境のイメージを提示しようと試みている。

John Udellが使っている「Google PC」という言葉は、「我々1人1人が持つPCが、Googleのバックエンドのスーパーコンピュータに直接接続されている状態」を指している。

「Think about the possibilities for controlling spam, or streamlining file transfer, or mapping social networks, when e-mail travels within Gmail rather than across the Internet. If you join massive horsepower to vast data, amazing things will happen.」

という文章の中の「when e-mail travels within Gmail rather than across the Internet」というところが、Gmailと普通のeメールとの違いを簡潔に表現したもの。インターネット全体がワークしているおかげでe-mailというアプリケーションが成立している現状に対して、GmailならばGoogleのスーパーコンピュータの中だけでGmailというアプリケーションは完結する。

「そんなことはASPでは当たり前」と思われる方も多いかもしれないが、通常のASPが担当するのは、冒頭の文章の中に出てきた「Internet-scale software」ではなく、もっとスケールの小さい問題の解決だ。だからこそ、そこそこのコンピューティングパワーをバックエンドに用意すれば何とかなる世界がイメージされてきた。Googleの斬新さは、巨大かつコストパフォーマンスが圧倒的に優れたパックエンドシステムを自作することによって、「Internet-scale software」をそこで動かしてしまい、産業全体の「Internet-scale software」のあり方を変えてしまおうとしているところにある。そんなことを、John Udellは、簡潔で明瞭な言葉で上手に表現しているのである。

「On the Google PC, you wouldn’t need third-party add-ons to index and search your local files, e-mail, and instant messages. It would just happen. The voracious spider wouldn’t stop there, though. The next piece of low-hanging fruit would be the Web pages you visit. These too would be stored, indexed, and made searchable. More ambitiously, the spider would record all your screen activity along with the underlying event streams. Even more ambitiously, it would record phone conversations, convert speech to text, and index that text. Although speech-to-text is a notoriously imperfect art, even imperfect results can support useful search.」

「Google PC」では、サードパーティのアドオンをインストールなどしなくても、あなたのローカルファイル、eメール、IMはすべてインデックス化されてサーチできる。ここまではもう織り込み済みだ。そして次は、見に行ったウェブサイトだろうとJohnは予測する。「見に行ったウェブサイト」がGoogleによって捕捉されてサーチ対象に組み込まれるという意味。「ああ、どこかのウェブサイトで見たなぁ、どこだったっけなぁ」なんて心配はもう要らないというわけ。さらには、我々がPCに向かって行なった行為のすべて、さらには、電話での会話までをも、自動的にスピーチからテキストに変換して、そのテキストをインデックス化してくれるかもしれない。

「Google PC」を許容できるか

むろん、こうした行為に、薄気味悪さや嫌悪感を抱く人々も多かろう。しかし、「そりゃ抜群に便利だ」ということでシンプルにこの「Google PC」世界を受容していく人たちもいるだろう。そこに世代的な違いがあるのではないかという予感が、このコラムのタイトルが「The Google PC generation」(Google PC世代)となっている所以であろう。

さて、4月15日「Googleの独自技術はどこまで汎用的で競争力があるのか」の最後で、僕はこんなことを書いた。

「「Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ」を書いて以来、僕が今も引き続き悩んでいるのは、(1) 「さぁこれからカネに糸目をつけずにGoogleを追いかけるぞ」と競争者が決めたときに、このGoogleのブラックボックスは、どのくらい先行しているものなのか? という問題。(2) Googleの新しいコンピュータは確かに凄い代物だが、Rich Skrentaが「a massive, general purpose computing platform for web-scale programming」と言うように本当に「general purpose computing platform」なのであろうか? という問題。つまり、特殊な目的に合致した凄い性能を出すコンピュータというのは、歴史的にみていくつも存在したが、Googleのコンピュータにおける汎用性の度合いがどの程度なのか? という問題。この2つについては、残念ながらまだ、自分なりの答が見出せていない。」

(1)の競争力という問題については、YahooのVish Makhijani(VP and GM international search)に話を聞いて考えたことで、若干ながら考察が進んだかな、というところだが、(2)の汎用性の度合いについてはまだよくわからない。また今日は、悩みの(3)として、「Googleブラックボックスのスケーラビリティは、どこまでシステムを大きくしても保証されるのだろうか」という疑問も付け加えておきたい。

Googleのポテンシャルはどこまでか

もしGoogleのスーパーコンピュータが、検索という特殊目的に限って凄い性能を出すものなのであれば((2)の悩み)、そしてそれがそれほどのスケーラビリティを示さないのであれば((3)の悩み)、John Udellがこのコラムで書く「Google PC」というイメージは「Googleを買い被り過ぎ」という結論になってしまうのだろうけれど、そこについての判断が今のところつかない。

たとえば、質の高い日本語Blog「Radium Software Development」では、「040511 - Google Cluster Architecture (1)」、「040512 - Google Cluster Architecture (2)」、「040514 - Google Cluster Architecture (3)」、「040515 – Parallelization」の4回にわたって、Googleのクラスターアーキテクチャについて精緻な分析を行なった上で、

「Google の検索エンジンは,前述のような処理の並列化を行うことによって,高速な検索処理を実現している。ウェブ空間のように膨大な規模を持つデータベースも,適切な領域の分割と処理の並列化さえ行われれば,スループットを極限にまで引き上げることができる。ウェブ検索という特殊なアプリケーションだからこそ実現することのできた技術なのだろうと思う。」

「これが,例えば Gmail のような一般的なアプリケーションになってしまうと,話はだいぶ異なってくるのだろうと思う。ストレージの冗長性に関して GFS が役に立つぐらいのものであり,並列性云々は関係無くなってきてしまう。」

と「汎用性への疑問」を提示されている。こうした意見を持つ専門家が僕の周囲にも多いのであるが、Googleもそういう意見は百も承知の上で「Internet-scale software」の実現に邁進して、「結果で勝負だ」と考えているのだろう。

John Udellのこのコラムに刺激されて、Googleのシステムについての悩みは1つ増えたわけであるが、この問題については、これからも引き続き考えていきたいと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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