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CNET Japan ブログ

バブル期の予測通りに成長していた米EC市場

2004/05/17 09:22
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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CNET Japan山岸編集長から、5月29日(土)の東京でのオフラインミーティングの参加者からの質問表(CNETの個人情報保護の原則から、それぞれの質問が誰からのものかは僕に開示されない)が届いた。英語でOverwhelming(圧倒的な、半端じゃない、みたいな意味)という言葉をよく使うが、質問のシリアスさ、切実さ、質問内容の充実、まさにそういう感じであった。当日の短い時間ではとてもすべての質問に答えられないが、質問の共通部分に対しての短いスピーチもいま準備しており、当日は精一杯やりたいと思います。

普段見えないサイレントマジョリティの声

ところでこの連載は、毎日欠かさず読んでいただいているかどうかは別として、少なくとも数万オーダーの読者がいるらしい。発行部数100万オーダーの新聞社の人によれば、1つの投書が来るとその向こうに同じ意見を持つ人が数千人はいる、というのが経験則とか。1つ1つの質問の後ろに、同じように疑問を抱いたり、発展的な仮説を立てたりする方がたくさんいらっしゃることを肝に銘じたいと思う。

双方向のメディアだとはいいながら、やはりインターネットも他のメディアと同じく、サイレントマジョリティという層が圧倒的に分厚く(そしてその層と、ネット上で活発に発言する人たちの層とは、意見がかなり異なる)、その層とのコミュニケーションというのは容易なことでは実現できないものなのだな、とこの質問リストを見てつくづく思った。僕だって、インターネット上で相当たくさんのサイトを読んで、有難く考える材料にさせてもらっているが、コメントを書いたりすることなんて、ほとんどないものな。

さて、いただいた質問リストの中に、

「Blogを拝読していて、切れ味に好不調の波を感じます。ご自身として感じる波の周期はどのくらいでしょうか。スランプ克服法をお教えください。」

というのがあって面白かったが、これはひとえに、「僕自身がこの連載に割く時間をどれだけ取れるか」ということのみに依存していて、僕としてはあんまりスランプとか、そういうふうに考えたことはありません。僕の場合、ある時期に本業が忙しくなると(申し訳ないが実は最近そういう状況が続いている)、ネットに向かって勉強する物理的な時間が取れなくなるというだけでなく、頭の中が「守秘義務に抵触する情報(顧客企業の話や投資先企業の話や何やかんや)」で一杯になってしまうため、そこを取り除いた頭の中の内容がぐっと薄くなるゆえ、どうしても本欄に書く内容が薄くなってしまうのです。だから、逆にいえば、毎日素晴らしいものを書こうなどと思わず、自然体で肩に力を入れないようにしている、ということでしょうか。そうでないとなかなか続けられません。つまらないと思われるものはお読みにならず、面白いなと思うものだけをつまみ食いしていただければと思います。

エコノミストがECを取り上げる意味

さて今日は軽めに、英Economist誌最新号のサーベイ特集「A perfect market: A Survey of e-commerce」をご紹介したい。巻頭の「E-commerce takes off」(要購読)では、このサーベイに再びE-Commerceを取り上げたことについて、背景をこう書いている。

「BACK in 1999, at the height of the internet frenzy, Forrester, a research company, forecast that online retail sales in America could reach $100 billion by 2002. When the bubble burst a year later, lots of crazy predictions went the same way as many dotcom firms. But if online sales of cars, food and travel are added to the official figures, then Forrester's forecast, which once looked so wild, has turned out to be only about a year late. The growth continues. The 200m Americans who now have web access are likely to spend more than $120 billion online this year. And that is only part of the story. E-commerce has not only grown into a huge thing in its own right, it has done so in a way that will change every kind of business, offline as well as online, as our survey explains.」

バブル絶頂期にECについて出た強気強気の市場予測データがたくさんあったが、バブル崩壊から4年が経過した今、実は当時の予測通りに(せいぜい1年程度の遅れで)、ECは堅実に成長している、ということだ。インターネットに対してはConservativeな英エコノミスト誌の特集なので、いつもエッジのところを追いかけている読者の方にはサプライズはなく物足りないかもしれないが、シリコンバレーの論説や業界主導の記事に食傷気味で、「ネットが実現しているのは、どこまでがリアルな話なんだ?」なんていつも自問しながら考えていらっしゃる方は、ぜひお薦めしたい。

サーベイ特集「A perfect market: A Survey of e-commerce」のページに行くと、A Survey of e-commerceというタイトルの下に、「A perfect market」「Santa's helpers」「Click to fly」「At the drop of a hammer」「A market too far」「Virtual fun」「Spiders in the web」という7つの記事へ飛ぶことができ、無償で読めるみたいだ。

米国政府の統計に含まれないEC市場

A perfect market」は、最近の米国商務省の発表数字からこう始まっている。

「According to America's Department of Commerce, online retail sales in the world's biggest market last year rose by 26%, to $55 billion. That sounds a lot of money, but it amounts to only 1.6% of total retail sales. The vast majority of people still buy most things in the good old “bricks-and-mortar” world. But the commerce department's figures deal with only part of the retail industry.」

「米国のオンライン・リテイル市場は、26%の伸びで550億ドルに達したが、これはすべての商取引の1.6%に過ぎない」という商務省の数字よりもE-Commerceの実体や意味は大きい、という。

その理由として、5つを挙げている。

(1) まずこの数字にはトラベルサービスが含まれていない。(IACだけで100億ドル相当のトラベルサービスを売っている)

(2) そして金融サービス、チケット販売、ポルノグラフィ、出会い系、先祖探索、ギャンブル、薬のカナダからの輸入などの数字が含まれていない。

「Nor do the figures take in things like financial services, ticket-sales agencies, pornography (a $2 billion business in America last year, according to Adult Video News, a trade magazine), online dating and a host of other activities, from tracing ancestors to gambling (worth perhaps $6 billion worldwide). They also leave out purchases in grey markets, such as the online pharmacies that are thought to be responsible for a good proportion of the $700m that Americans spent last year on buying cut-price prescription drugs from across the border in Canada.」

(3) オークションサイトの手数料収入は含まれているが、たとえばeBayが取り扱った240億ドル相当の財そのものは含まれていない。

「The commerce department's figures include the fees earned by internet auction sites, but not the value of goods that are sold: an astonishing $24 billion-worth of trade was done last year on eBay, the biggest online auctioneer.」

(4) B2Bの数字が過小評価されている。ウォルマートだけだって2500億ドル相当の仕入れが、プロプラエタリーなB2Bサービスで取引されている。

「Some of these B2B services are proprietary; for example, Wal-Mart tells its suppliers that they must use its own system if they want to be part of its annual turnover of $250 billion.」

(5) 実際にモノを買うのはオフラインでも、その購買プロセスの中でオンラインが果たしている「影響」という役割が無視されている。

「But the actual value of transactions currently concluded online is dwarfed by the extraordinary influence the internet is exerting over purchases carried out in the offline world. That influence is becoming an integral part of e-commerce.」

この5つの政府の統計数字にそのままは入れ込めない「ネットの影響」も頭に入れると、E-Commerceもおそろしいものに育ってきてしまった、というのがエコノミスト誌の視点である。本文のこのあとは、(5)の延長線上で、サーチの果たす役割の意味などのネット産業全体に関わるホットな話題へと続いていくが、その部分は原文をどうぞ。続く6つの記事も、興味のある方は是非。

インターネットの登場から10年が経った。「10年というおそろしく長い年月を侮ってはいけない」というようなことを以前に書いた記憶があるが、やはりネットは確実に世界を変えている。しかし、日本企業の老経営者と議論すると、やはりまだ「ドットコムバブル、ネットバブル崩壊のトラウマ」を抱えて、実はネットが着実に世界を変えていることの意味について、思考を停止したままの状態にあり続けている人が多い。そういう経営者の近くに居る人は、「保守的なイギリスのエコノミスト誌も、久しぶりにこんな特集をしていますよ」と、やさしくこれらの記事を読んであげてみてはどうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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